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村上くんの肩の力が、少しでも抜けますように【11/3阪神戦○】

たいしのホームランで、打った本人よりもうれしそうに見えたのは、村上くんだった。

なんと良い笑顔であることよ、と、私は思った。それを見てふと思ったのだ、この一年間、どれだけプレッシャーが、このハタチにのしかかっていたのだろう、と。

村上くんは、高卒3年目の今シーズン、開幕からずっと四番を任された。去年から何度も見続けた、あらゆる「球団史上初」「セ・リーグ初」「NPB初」に、心が躍った。

そしてその「ワクワク」は、シーズンが進むにつれてどんどん大きくなっていった。いや、「ワクワク」とは少し違う、それは、やっぱり「期待」という形になって、どんどん膨れ上がって行ったのだ。

最初はその「初」を見せてくれるだけでうれしかった。この先どんどん成長につながるものを見つけてくれればよかった。だけど、チームは負け続け、順位を落とし続け、最下位に定着し続ける中で、その「期待」は、「チャンスで打って欲しい」「逆転ホームランを打って欲しい」「とにかくチームを勝たせる打点をあげて欲しい」と、どんどん困難なものになっていった。

実際、気づけばチャンスで打ってくれるのも、ホームランを打ってくれるのも、村上くんだけ、という試合が多かった。当たり前のように、村上くんはそこで打点をあげ続けてくれた。だからますます、期待はまた膨らんでいった。

気づけばもう頼りの綱が村上くんだけ、みたいになっていたような気さえする。

でもここのところ、打てない日が続いた。大きすぎる「期待」は時につい、大きなため息になって表れる。言いようのないもどかしさが募る。

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だからなのか、この若松さんのコラムを読んだ時にちょっとハッとした。

ああ私はどれほどの期待を、この若干ハタチの青年にかけていたのだろう、と。それはしちゃいけない、と、19歳で新人王をとった去年、何度も何度も戒めのように思っていたのに、それでもどうしても、期待せずにはいられなかった。

それはあくまでも、しがない一ファンの思いだけれど、もちろんそれが直接村上くんに届くわけじゃないけれど、でもそれをもしもっとたくさんのファンが感じていて、そしてチームもベンチもなんとなく感じていたとしたら、そういう「空気」はいつのまにか重く重く、村上くんにのしかかっていただろう、と思う。

若松さんは言う。

ただリラックスと言っても簡単ではない。「肩の力を抜きなさい」と言われてもなかなかできない。両膝を少し折って、重心を下げれば、バットコントロールができるようになり、芯にも当てやすくなる。

まったくもっておっしゃる通りで、「肩の力を抜きなさい」と言われたところで、なかなかできるものじゃない。だからこうして具体的に、フィジカルに、「力を抜く」方法を伝えるのがベストなのだ。

そしてこの「肩の力を抜く」ことは、きっと、その大きすぎる期待を背負うその肩の力を、少し抜いて良いのだよ、というメッセージにも見えた。

若松さんは、こう付け加える。

私が20歳のときは、社会人の電電北海道(現NTT北海道)でプレーしていた。今、プロでレギュラーでやっている村上は、大したものだ。

そう、本当にその通りだ、と思う。プロで、レギュラーで、やっているだけで、たいしたものだ。

つい、あまりに大きな期待をかけてしまうけれど、そしてそれはシーズンが進むごとにどんどん膨れ上がって行ってしまったけれど、実際のところはまだハタチの青年なのだ。

本当は周りがもっと打って楽にしてあげなきゃいけないし、大きな目で、そして広い心で、見守ってあげたい。

今日はたいしとなおみちが、大事な大事な1本をそれぞれ放った。ピッチャー陣は今日もしっかり、踏ん張ってくれた。そしてそれを見て村上くんはにこにこ笑った。今はまだ、そういうチームでいてほしい、と思う。

それでもこの重圧に耐え続けた村上くんが、少しずつ心を柔軟にしながら、また成長していってくれたらいいな、と思う。その時ヤクルトがまた少し、少しだけ、強くなっているといいな、と思う。

たくさんの人たちのふんばりがよく見えた試合でした。勝つとこんなにうれしいね、もやがパッと晴れる気がする。村上くんが抱えるあらゆるものも、少し軽くなりますように、そんなことを願う試合でした。

***

ところで若松さんは、コラムの最後をこう結んでいる。

ぜひタイトルは取ってほしい。

・・・・・・・ごめん村上くん、やっぱり期待からは逃れられないみたいだ、ぜひタイトルはとってほしい!!!!!!



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