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【7/29・30阪神戦●●】駅前の吉野家が、黄色くなる世界で。

ここにいると、なんだか世の中の人は全員、阪神ファンなんじゃないかと思えてきた。

梅田駅から阪神電車に乗る人はほぼ黄色いユニフォームに身を包んでいたし、座席の前後両隣はもちろん阪神ファンったし、おまけに甲子園駅前の吉野家は、オレンジではなく黄色だった。

でも普段、なんというか比較的、ビジターファンに寛容である世界で生きていると、この街全体でアイデンティティーを確立したような世界は、それはそれで非常におもしろかった。考えようによってはそれはテーマパークであり、ディズニーやもしくはサンリオピューロランドとだって大きく変わらないのかもしれない。そこには世界観の徹底した統一があり、そして吉野家は黄色になる。

でもそんなアデンティティーを持った街の中にももちろん(もちろんと言わせてほしい)、非常に稀な存在ではあるけれど、ヤクルトファンだって、存在する。

斜め前に座った男性は、グループで唯一、ヤクルトグッズに身を包んでいた。一緒に来た男性たちはみな、当然のように、阪神のユニフォームを着て、トラッキーがゆらゆらゆれるキャップも被っていた。それはこの地域における制服なのかもしれないけれどもそれにしても、見るからに、そこそこ、熱心な阪神ファンだと思う。

でもそのヤクルトファンの男性は、とてもごきげんに、阪神ファンの友人たちとビールを飲んでいた。

そのごきげんさは、試合前もそして、試合が始まってからも変わらなかった。ヤクルトが打たれて私が絶望するたびに(ああなんて絶望の多い試合だったことか)男性は「…まあまあまあまあ」と、隣の阪神ファンの友人と乾杯した。その度、キャップのトラッキーがゆらゆらと揺れた。

それでも最後の方はその男性もさすがに、「今日は厳しいなあ」と、スマホに目を落としていた。この「全員阪神ファンに思える世界」の中に生き、阪神ファンの友人たちとごきげんに観戦できる心の持ち主にだって、今日の試合はさすがに堪えるのかもしれない。と、思った瞬間男性はまた顔を上げて、「いやー完敗だね、仕方ない、おめでとう」なんて、また言っていた。 
さすが、数々の修行に励んできたファンは違う…と、思ったところで急に懐かしさを覚えた。いや、これ、前にもあったぞこの状況…

で、私は思い出したのである。いや、この前のグループ、開幕戦の京セラドームで息子と仲良くしてくれた人たちだ!!!と。息子にそのグループのメールを送ると、「たぶんそうだと思う!!」と返ってきた。私は普段、人の顔をほんとうに覚えられないタイプなのだけれど、なぜだか今回は(試合も終盤になって急に)思い出したのだ。

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