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【6/11ソフトバンク戦◯】カツオさんの冷静と情熱の間に

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カツオさんはいたって冷静に、一人ひとり強力なソフトバンク打線を打ち取っていった。

村上くんがホームランを打って1点を取ったあとも、バッターボックスにバレンティンが立った時も(ココちゃん!)、全く動揺を見せず、表情を変えず、それまでと同じテンポでリズムよく、冷静に投げ続けた。

特に6回表、打線が1死満塁のチャンスを生かせずゲッツーで終わった直後も、カツオさんはなんと三者連続三振であっさりと3アウトを奪った。

こういうところだよな、と、思う。カツオさんの冷静さの真骨頂はこういうところに見られるのだ。チャンスのあとにピンチあり、という大原則を、きっと知っているからこそその直後をぴしゃりとしめてくれる。それはほんとうに、なかなかできることじゃない。チャンスを生かせず直後に逆転される試合を、本当に山のように見てきた。

気づけば奪った三振は6、ヒットを6本打たれてもそれでも安心して見ていられる、安定のピッチングだった。

でもカツオさんが、いつだってどんなときだって本当の意味で「冷静に」自信を持ってボールを投げているわけでは、実際はないのだと思う。

二軍で調整している時カツオさんは「正直何が正解か答えがない」と、トレーニングや調整法を変えることもあったという。そして「いつだってこれが最後のマウンドになるかもしれない」と思いながら、そこに立つのだ、と言う。

本当は、カツオさんだって不安と戦っているのだ。いつだって自信たっぷりに、そこに立っているわけじゃない。自信だけで、20年間投げ続けてきたわけでは、きっとない。そこにはもっと多くの挫折や葛藤があったのだろう、と思う。ふがいない言葉を投げかけられる日も、悔しい思いをする日も、継投に納得できない日も、きっとキャッチャーのサインに納得できない日だってある。

でも、そのどんな時もカツオさんは内なる負の感情は決して見せず、周りから見れば「冷静」な姿で、ずっと投げ続けてきた。日本一を何度もとったソフトバンクの打者を、簡単に打ち取るように見えるその投球は、それはほんとうは、カツオさんがこれまで積み重ねてきた葛藤と挫折と、そしてひっそり秘めた闘争心、そんないろんなものの集大成なのだろう。

簡単に、勝利が手に入るわけじゃない。なんの努力もせずに、そこに立ち続けられるわけじゃない。不安と戦いながら、これが最後かもしれないといつも思いながら、周りからは決して見えない覚悟を持って、またマウンドに戻ってくるのだ。

そして一つの勝利を手にした時、いつも静かに「中村がいいリードをしてくれたので」と、そう言葉にするのだ。

それはもう、私が理想とする「大人」の姿そのものだ、と思う。

ロッカーがいつもめちゃくちゃきれいなことも、お正月の朝から一人で走っていることも、キャンプの時に自分が持ってきたペンで一人ひとりに最後までサインをしてくれることも、その全てが、今のカツオさんとカツオさんの投球を作り出しているのだ、と思う。

「勉強になりました」と、解説の斉藤和巳さんは言った。「見ていて、なんというかこちらも楽しいピッチングでした」と。

小さな身体で、いつも考え続けて、そしてあらゆる葛藤と戦い続けた集大成が今のカツオさんなのだ。そしてカツオさんはここからだって、悔しさも葛藤も抱えながらまた、もっと、前に進んでいくのだ、と思う。

「投げていくことで肩肘が張り、思うような投げ込みができないのならスタミナ作りや筋力を増やさなければいけない。投げ方が悪くて体に負担がかかるなら、フォームを修正するしかない。投げていくことで自分に足りないものも分かってくる」と、いつだったか奥川くんを見ながらみやさまが言っていた。

今自分が抱えている弱さは、結局一生つきあっていくしかない。それなら、それをなんとかやり過ごせる方法を、強みとまではいかなくても、弱みだけにとどまらない方法を、考え続けるしかない。

カツオさんはみやさまが言うことをずっと、続けてきたのだろうと思う。それをやり続けたカツオさんの姿を今ここで見ていられることを、ただただうれしく思う。

そして私もがんばろう、と、また思う。完璧なんかじゃない、苦手なことがあまりに多すぎる自分だけれど、でもそれと向き合いながら、まっすぐに戦っていこう、と。背筋を伸ばして、闘争心はそっと心に大切にしまって、穏やかに、でも心に大切なものをしっかり灯しながら、生きていこう、と。

「信頼できる中継ぎ陣なので」と、カツオさんは言う。だけどみんなきっと、わかっている。

カツオさんがそれだけ「勝たせてあげたい」と思わせるピッチャーでそして、今のヤクルトが、それを糧に少しずつ強くなってきたのだろうということを。

カツオさんはもう、みんなの原動力なのだ。


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