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【2019シーズン】ヤクルトスワローズ観戦記

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ヤクルト観戦記、2019年シーズンはこちらにまとめて入れていきます。(オープン戦含む) 勝った日も、負けた日も、試合のある日は毎日更新しています。
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#プロ野球

「誰かを応援できた日々」を、胸にそっと抱きながら【9/21中日戦●】

たてさんは、半袖でそこに立つ。 そこからは、手術を繰り返した傷痕がのぞく。 今日もたてさんは半袖で、試合前のブルペンに立ち、投球練習をしていた。若いキャッチャーの松本くんが、その一球一球を受けていた。 コーチと、お客さんと、みんなが、それを、静かに見守っていた。 この空気は今日だけのもので、そして二度と戻ってこないのだ。 「打者を欺くことなく真っ向勝負できたことは自分の誇りです」 と、たてさんは言った。 「打者を欺く」ことも、もちろん素晴らしい投手の仕事だけれど

みわちゃんが反芻した打球と、ライアンの完投と 【9/19阪神戦◯】

セカンドの横を打球が抜けて行った時、みわちゃんはとても悔しそうな顔をした。こうしてとるんだよな、と、何度も何度も確認する仕草をした。もうすぐ、ユニフォームを脱ぐのだ。それでもみわちゃんは最後まで、野球選手として、野球をするその人生をまっとうしようとする。 二軍球場とは思えない立派な鎌ヶ谷スタジアムで、私はこれから育とうとしている若手たちと、そしてもうすぐユニフォームを脱ごうとしている人たちを眺めていた。 「終わり」なんてもしかしたら、区切りに過ぎないのかもしれない、と思う

大事なのは誰かの評価じゃなくて、自分で納得できること【9/18阪神戦●】

いつかそれは、終わるのだ。華々しい記録も、勝利の余韻も、王者の立場も、何もかも。 いつかは、記録が途切れる時が来る。いつかは、負ける時が来る。誰しもにその瞬間が待っているのであれば、大切なのはそこから這い上がることだ。 てっぱちの盗塁の記録が途切れる。ヤクルトの最下位が決まる。でも戦いは、そこで終わるわけじゃない。てっぱちはこれからも打席に立ち続けなきゃいけないし、ヤクルトは試合を続けなきゃいけない。いつだって、勝つというシンプルな目標のために。 いつだって大切なのは、

成長してゆく若手たちと、去りゆくベテランと【9/16広島戦◯】

今年、ちょうど一年前の今日の試合を、何度も何度も思い出した。 村上くんが初めてお立ち台に立った日、初めてのサヨナラホームランを打った日、二打席連続ホームランを打った日。もちろん、打っても打っても勝てなかった日も。そのたびに、この日の試合を思い出した。目の前ですっと、ライトスタンドに飛び込んできたあの弾道を。 今日、外野から眺める視線の先には、外野を守るおじさん三人がいて、さらにその向こうに、21歳の奎二くんがいて、18歳の村上くんがいた。 後ろをおじさんたちがしっかり守

田川くんの7年が、決して無駄ではなかったように【9/15広島戦◯】

どれほど「8点差なんてセーフティリードではない」とわかっていても、人間というのは愚かな生き物なので、8点を取った時点でついテンションが上がってしまう。 そうだよねカツオさんだってそうだけれども苦労人の田川くんにだってしっかり勝ちをつけてあげたいよね今日は大事な日だよね!!と、思う。 が、そういう愚かな驕りを、ヤクルトというチームはしっかりと諭してくれる。8点差?そんなものはないと思えと小学生で習いましたよね?と言わんばかりに、じわじわと点差を詰めてくださる。 8-0だっ

記録が途切れるリスクを背負ってもなお、走り続けたこと 【9/14横浜戦●】

シーズンも終盤。順位はほぼ見えている。CSの可能性はもうなくなった。試合は0-7と差が開いている(ええ…)。そんな時、あなたならなにをしますか。私は、「ネフタリ・ソト 年俸」とぐぐっていた。9500万円だそうです。コスパが良すぎる。 まあ、それは冗談ですが(ぐぐったけど)、それくらいにはもう、遠い目にもなる試合であった。 「シーズンも終盤。順位はほぼ見えている。CSの可能性はもうなくなった」という試合において、それでもなお、打ち込まれると悲しくなるこの気持ちとは一体なんな

生きている限り必ず、終わりはくるけれど【9/12阪神戦◯】

神宮での試合がしばらくないので、ファームの試合を見に行こうと、ジャイアンツ球場まで足を伸ばした。 びっきーは、そこでぐっちとにこにこしながら話していた。(あとぐっちはなぜか、タイセイくんのことを「キャプテン」と呼んでいた、たぶん。なぜ。) ああ、いいなあ。と、私は思った。それぞれの胸に、あらゆる思いを抱えているのだとしても、そこが二軍の球場だとしても、いやだからこそ、同じユニフォームを着て、こうして並んで二人で一緒にいるところを見られると、なんだかほっとする。二人が同じチ

ここまできたら総得点1位を目指していきたい【9/11阪神戦●】

677点。 今季、今日までにヤクルトが失った点数の総数である。 ちなみに他球団の失点は、9月11日現在、以下の通りである。 巨人 517点 横浜 552点 広島 553点 阪神 528点 中日 502点 これを見ると、ヤクルトの677点がいかに芸術的点数かということがわかる。 もっとも失点の少ない中日(なのか!)とは175点、ヤクルトの次に失点が多い広島(なのか!)とでも、124点の差である。すごくないですか?すごい。 一方、597点。 これは今日までの時点でヤク

塩見はしっかり前を見て、答えた。【9/10阪神戦◯】

仲睦まじいことで有名なカップルが破局する、離婚する、というニュースを見るたび、そりゃあ、外からは絶対にわからないことが二人の間にはあるよな、と、思う。 例えば、「あの二人が別れるなんてショック」とかはあんまり、思わない。他人にわからないことは、山のようにあるのだ。 小川さんとみやさまが二人で退任する、というにあたり、二人の気持ちは実際のところ、私たち他人にはさっぱりわからないのだ、と思う。もちろん、二人の関係だってわからない。(とても良いバランスだな、とは思うけれど。)

それでも小川さんとみやさまが率いてくれるヤクルトが好きだった【9/7巨人戦●】

CS出場の可能性が消滅したこの試合(残ってたのかよ!という話ではあるが)、一夜明けるといろんな人の去就が発表になっていた。 ある程度覚悟していたことかもしれない。もちろん、仕方がないことかもしれない。「情」で球団運営ができるわけでもない。そういう世界ではない。 それはわかりきった上でなお、人の感情というのは複雑だ。 寂しさややるせなさは、理性で抑えられるものではない。 監督とヘッドコーチが辞任を発表するきっかけとなった試合は、6-10で負けるという、今年のヤクルトの象

若いピッチャーを「ライバル」だというカツオさんが、チームを成長させていく【9/6巨人戦◯】

2月の浦添で、ブルペンで投げるカツオさんを見ていた。隣では、高梨くん、清水くん、じゅりが投げていた。一足先に投げ終わったカツオさんが、その三人の後ろを通って帰って行った。 「みんなライバルですから」とカツオさんは言う。自分の息子さんに近いくらいの選手たちを、ライバルだ、と。若い選手たちの隣で投げながら、自分の年齢を思うこともきっとあるだろう。でも、そんな若い選手たちを「ライバル」と呼んで同じ場所に立つカツオさんを、心からかっこいいなと思う。 若い選手の隣で投げながら、思う

同期たちはにこにこと、ヤクルトの試合を見ていた【9/5広島戦●】

二ヶ月前に取るそのチケットが、どういった試合になるのかは、もちろん全くわからない。勝つのか、負けるのか、暑いのか、寒いのか、雨なのか、晴れなのか。 それは劇的な勝利を見せてくれるチケットかもしれない。とんでもない逆転負けのチケットかもしれない。そもそも試合が中止になってしまうかもしれない。それは終わるまで、全くわからない。 それでも二ヶ月前から私たちは、その試合を楽しみに待つ。良い試合になればいいな、と思いながら。 今回は、大阪の同期が出張で東京へやってくるのに合わせて

てっぱちが年に一度見せてくれる、その笑顔を【9/4広島戦◯】

盗塁の時にはオーラを消しまくり「まるで幽霊」と言われる背番号1は、今日は9回裏、満塁のチャンスで抜群の存在感を見せつけた。それはもう、スターにしかできない仕事だった。 試合がないこのあいだの月曜日、私はなんとなく、去年てっぱちがサヨナラHRを打った時の動画を延々とリピートしていた。あの時、てっぱちははにかんだような笑顔で拳を突き上げ、ダイヤモンドをゆっくり回った。それはとてもとてもとてもいい笑顔だった。 今年、てっぱちが打っても打っても、勝てない試合が続いた。ダイヤモンド

7点差を逆転されるでもなく、ノーノーされるでもなく、淡々と負ける日に【9/3広島戦●】

「まいはいっつも、なんというかこう…あたりさわりのない、『いい人』を好きになるよねえ…」と、よく言われてきた。自分でもまあ、「いい人」と付き合ってきたよなあ、と思う。浮気に悩まされるとか、モラハラめいたことをされるとか、束縛されるとか、まあそういうことはこの人生で皆無であった。そもそもこんな自分勝手な人間が、束縛するような人と付き合うなんて無理なわけだけれど。 さてヤクルトは今日、淡々と負けていった。13点取られるとか、ノーノーされるとか、とったらすぐ取り返されるとか、7点