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若いピッチャーを「ライバル」だというカツオさんが、チームを成長させていく【9/6巨人戦◯】

2月の浦添で、ブルペンで投げるカツオさんを見ていた。隣では、高梨くん、清水くん、じゅりが投げていた。一足先に投げ終わったカツオさんが、その三人の後ろを通って帰って行った。

「みんなライバルですから」とカツオさんは言う。自分の息子さんに近いくらいの選手たちを、ライバルだ、と。若い選手たちの隣で投げながら、自分の年齢を思うこともきっとあるだろう。でも、そんな若い選手たちを「ライバル」と呼んで同じ場所に立つカツオさんを、心からかっこいいなと思う。

若い選手の隣で投げながら、思うこともあるだろう、と、私はカツオさんを見ながら思っていた。だけど今年、カツオさんは、その若い「ライバル」たちの誰よりも一番そこに立ち続け、誰よりも一番投げ続け、そして勝ち星を重ね続けている。

ベテランは本当に、背中で見せ続けてくれた。だけど思うのだ。この状況に一番びっくりしているのはもしかしたら、カツオさんかもしれないな、と。だからカツオさんは言うのだ、「俺に負けてたら駄目じゃん」と。

カツオさんは多分、「若いライバルたちに負けていちゃだめだ」と思いながら、あの若い選手たちだらけのブルペンで、投げていた。きっと危機感だって感じながら。

ベテランは、その危機感だって自分の糧にした。そして結局、一人で勝ち続けた。なんならいやいやもうちょっと危機感感じさせてくれよ、と、思うかもしれない。(がんばれ若いピッチャーたち。)

さてそのカツオさんとバッテリーを組んだのは、まだ若い2年目の松本くんだ。今年のヤクルトの「なにがなんでもとにかくカツオさんを勝たせよう」というあの空気はもちろん松本くんひしひしだって感じていただろう。それはとんでもないプレッシャーだったにちがいない。

4回表、カツオさんが三連打を浴びて1失点をし、さらに四連打で無死満塁のピンチを迎えた時、「さすがにこれは松本くんにもきつかろう・・・」と私は思った。2ボールになった時は、まさかここでカツオさんまで押し出しを・・と、私は思った。数々の過去のトラウマが頭をよぎった。そうなのだ、2点のリードなんていうものは、ないようなものなのだ。

いつものビッグイニングを作られ、ここで大きく逆転され、そのままゲームが壊れていく・・と、覚悟をしていたら、39歳のカツオさんと、25歳の松本くんは、浅いフライとゲッツーでその場面を乗り切った。へなちょこの私は、信じられない。と、思った。ライトスタンドからは大きな拍手が上がった。

その場面を乗り切った松本くんは、ちょっとたくましくなった気がした。そしてそれは、カツオさんと二人でつかんだ自信だ。「バッテリー」というのは深いな、と、私は思った。カツオさんと組むことは、キャッチャー自身にとってもとても良い経験になるのかもしれない。

8回裏の一死1,3塁の場面で、松本くんは打席に立った。もしかしたら代打かな、と、思ったけれど、小川さんはちゃんと打席に松本くんを送り込んだ。そして松本くんは一球目で、スクイズを成功させた。ベンチの期待と、過去の失敗の残像に押しつぶされずに、松本くんはそこでしっかり仕事をした。もはやそれまでが、カツオさんと組んだことで生まれた気概に見えた。

若い投手に対しても「みんなライバルです」と言うカツオさんは、いろんな人を成長させてくれている。松本くんは初めて、最初から最後までマスクをかぶり続けた。

そしてそれをベンチから見続けたムーチョもきっと、たくさんのことを感じただろう。だからこそ、きっと今日の思いを胸に、また成長していけるだろうなと思う。若いピッチャーの隣で黙々と投球練習をしていたカツオさんのように。若いピッチャーも「みんなライバルです」と言うカツオさんのように。

そうしてみんな、最後は自分との戦いを続けていく。

若いピッチャーに負けないように、同じポジションの野手に負けないように、もちろん対峙するピッチャーやバッターに負けないように。闘志を燃やしながら、最後は自分と向き合っていく。前回登板の、昨日の、さっきの打席の、自分に負けないように。

そしてヤクルトは来年は、今年のヤクルトに負けないように、そう、5位を目指していくのである。いつだって勝ちたいのは、過去の自分なのだから。


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