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いまさら「正義」の話をしよう

マイケル・サンデル著
『これからの「正義」の話をしよう』

トロッコ問題、歩道橋問題でこの本を知っている方も多いだろう。
「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」

あなたは暴走する列車の運転手である。
このまま線路を進めば5人の作業員をはねることになる。
しかし、ハンドルを切って待機戦に入れば1人の作業員をはねるが、
5人の作業員は助かることにあなたは気づいてしまう。
あなたはどのような行動をとるか?

功利主義と義務論(社会全体を幸福にするためであっても、その手段として人を利用すべきではないという考え方)の対立を扱った問題である。

多分、功利主義的な根拠で多くの方が5人を助ける方法を選ぶだろう。
最大多数の最大幸福のために判断するように求められる、
資本主義社会の中で暮らしていれば妥当な判断であると思う。

しかしながら、実際にその状況に直面した場合、
自らの意思で、本来助かるはずであった誰かを殺してしまうという
判断を行うことは、至難の業であるだろう。

功利主義的問題より、個人の倫理感や道徳的ジレンマ、正義とはなにか?
といった葛藤の方が大きくなるのではないだろうか。

人間のあらゆる善なる心を一つの統一した価値基準に平均化することは、
困難であり、各主義における模範解答はあるかもしれないが、
この問題に対する明確な答えは存在しない。

マイケル・サンデルは、
「正義には美徳を涵養することと共通善について判断することが含まれる。」と本書で述べている。

公正な社会を作っていくためには、正義をもとにした美徳を備え、
トロッコ問題のような避けられない不一致の解答を受け入れる公共の文化を作らなければならない。

トロッコ問題を考えるとき、
あなたは漠然と赤の他人を想像していると思う。

5人の作業員が外国人で、1人の作業員が日本人だったら・・・
5人の作業員が大人で、1人の作業員が高校生だったら・・・
5人の作業員が他人で、1人の作業員があなたの子供だったら・・・

美徳の涵養と共通善の判断とは、
諸問題を多角的に捉えることで、
他人の正義を理解してていくこであると私は思う。

この本を手に取り、多くの人が少しでも正義について考えることで、
社会の正義はブラッシュアップされていく。

正義の反対は悪ではなく
また別の正義なのである。


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