未熟だから守れない些細な日々を、持っているのに気付けない脈打つ優しさで補強して。

人間の思考が変化するのは当たり前だという考え方が当たり前になってくれたら良いのに。

変わっていくのは当たり前という前提で、変わった先が間違っていたという考察もいらない。だって絶対に間違っていなかったから。

自分の中で影響を受けたり大切に思ったりしている人を頭ごなしに批判されるとやっぱり許せない。

あの頃覚えた違和感は間違ったなかった、とでも言いたげな言葉は遠い人間の心を刺すことを知らない。私の輪郭は尖り、信じたいもの以外必要ないと訴える。嘘みたいな本当だけを抱えて、自分は死ぬ覚悟で守りたい。


昨夜は酒を飲んでまた縋って、過去の声を聞いて意識を失うように眠った。眠るように意識を失ったのかもしれないけれど、正しい記憶がない。

何か思うことがあったはずなのに、残ったのは言葉だけで感覚は消え去っていた。

昼ごろ起きて、昼過ぎに起き上がって、その先の文章を継ぎ足してまたすぐに止まった。原稿用紙は半分しか埋まらないから次に行けない。

彼なのか彼女なのか分からない私が肉体を鬱陶しく思っている。この体を手放したいのに、矛盾して服を着ている。私の端をなぞる布を纏っている。鼻をかんで、鼻の輪郭を意識する。

毎日触れているのに、意識しないから覚えてさえいない。毎日鏡で見ているのに、実物を見たことがないから本物は知らない。毎日聞いているのに、空気に触れる前の声は偽物でつまらない。

改めて考えると私は私のことを何も知らない。考えていることや思っていることはなんとなく分かるけれど、目に見える部分と目には見えないけれど物理的に存在している部分のことはほとんど知らない。

今日はやりたかったことを全て出来た。少しずつでも全部出来た。やってしまえば案外簡単で、もっと出来たかもなんて思う。

夕方、もうこんな機会ないと思えるくらい嬉しい知らせが来て、それに対する葛藤が渦巻いた。答えは出ていないし、正解なんてないはずだけど、どうせなら楽しい方を選びたい。

期待を手放して、また覚悟を買う。夢の中では理性なんて捨てるから、どれだけ汚くても狡くても、信じるし待っている。裏切られても良いとさえ思える。

どうせまた初めては泣いちゃうんだろうな。恥ずかしいけれど、格好良いから何でも許しちゃうな。

そんな気持ちを揺らしながら外出すると鍵がないことに気付く。その知らせを見る前までは確実にあったのに、一瞬で高揚した感情は冷静さを置いてくるから探しに戻らなきゃいけない。苛立つ気持ちを宥めて、部屋の中でさっきまでの動きを再現する。触れた場所を辿ってもなくて、トイレや冷蔵庫まで探した結果、靴箱の中で見つけた。

もうすぐ日暮れの時間で外に出るのはやめようか迷ったけれど、迷うことが多いから突き進んでみた。

夜は思うことを練り回しながら歩いていた。帰り際、尊敬してやまない人間が捨てきれない恥を表した時、自分の神経は正常でいられるだろうか、とふと考えた。結局自分のことばっかりで情けないな。

帰宅後、嘘みたいな知らせをまた読んでみるけれど、やっぱり本当で、目が日焼けしたみたいに乾いていった。

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