みゅぜぶらん八女の蔵書②

蔵書No.11
(著者)Henry C.Galant
(書名)Histoire Politique de la Sécurité Sociale Française 1945-1952
(総ページ数)208頁
(書籍の大きさ)23.5cm(縦)×16cm(横)
(発行所)Comité d’histoire de la Sécurité Sociale(Paris)
(発行年)2004年

(解説)
1945年から1952年という限定的な時期を対象とした価値の高い学術書である。ビスマルクの社会保険(1883年の医療保険・1884年の労災保険・1889年の障害-老齢年金)の適用下にあったアルザス・ロレーヌが、ベルサイユ条約の後にフランスに帰属(?)するようになり、以降、フランスは、ビスマルクの社会保険の適用下にあったアルザス・ロレーヌの人々を無視するわけにはいかなかった。ビスマルクの社会保険の適用下にあったアルザス・ロレーヌの人々の歴史的状況が、フランスの社会保険に関する1928年法の制定に大きく関わっていたのである。限られたページではあるものの、『この本』の31頁以下は、その点について興味深い記述がある。本著の「序文」を記しているのは<Pierre Laroque氏>であるが、彼は、第二次大戦後のフランスの社会保障の生成に欠かせない人物である。

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蔵書No.12
(著者)Ernest Wickersheimer
(書名)La Médecine et les Médecins en France-A L’époque de la Renaissance-
(総ページ数)575頁
(書籍の大きさ)23cm(縦)×16cm(横)
(発行所)Slatkine Reprints(Genève)
(発行年)1970年

(解説)
『この本』は、1905年にパリで出版された原著の再版本である。内容は、ルネサンス期の共同体(社会)での医師、医学部の誕生と教育、外科医の教育、解剖学、公衆の衛生と私的な衛生、病院、法医学、等など、多岐にわたる。分厚い書籍なので(?)ほとんど読んでいないが、アンダーラインが引かれている部分がある。それは、医師への謝礼(honraires)(≑診療報酬)についての部分である。ソノ記述によれば、「医師への謝礼(≑診療報酬)は患者の財産に規定される」というもので、「やっぱり、そうなのか・・・」とばかりに、私の方法は、さらに弾みがついて、モリエール、バルザックに入り込んでいった。

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蔵書No.13
(著者)Guy Thuillier
(書名)Principes de L’histoire de la Protection Sociale
(総ページ数)123頁
(書籍の大きさ)23.5cm(縦)×16cm(横)
(発行所)Comité d’histoire de la Sécurité Sociale(Paris)
(発行年)2003年

(解説)
『この本』のタイトル< Principes de L’histoire de la Protection Sociale >をどのように訳せばよいのだろうか。あえて邦訳すれば「福祉史の基礎」というようになりそうであるが、内容をみると「福祉史以外のものとの関係」「ニーズ分析」「一般原則」等などについて、どのようなモノを読むことによって「より良いモノとなるのか」を、若い研究者向けに幅広くまとめている。第ⅩⅤ章(113頁以下)は、「若い歴史研究者向けの助言」にあてられている。ココに、バルザックやゾラ等などが出てくるではないか。蔵書No.12の解説の最後に、「モリエール、バルザックに入り込んでいった」と書いたが、しばらくの間は、私自身が、私の方法を「奇をてらったモノではないのか」という、なんとなく、すっきりしない状態でもあったが、<Comité d’histoire de la Sécurité Sociale>が出版した『この本』に勇気づけられた。

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蔵書No.14
(著者)マルク・ブロック(高橋清徳訳)
(書名)比較史の方法
(総ページ数)129頁(巻末の索引12頁部分を除く)
(書籍の大きさ)19.3cm(縦)×13.5cm(横)
(発行所)創文社
(発行年)1978(昭和53)年

(解説)
邦訳された『この本』では、56頁までがマルク・ブロックの論文の邦訳で、57頁から65頁までは原注部分の邦訳である。そして、67頁から127頁までは、邦訳者による解説に充てられている。凡例によれば、論文の原著は Marc Bloch “Pour une histoire comparée des sociétés Européenns”(Revue de Synthèse Historique,Déc.1928,p.15-50)である。『訳本』の10頁には、「・・・諸現象は解釈される前に発見されなければならない。・・・」「・・・史料は証人である。したがって、大部分の証人がそうであるように、それは質問をうけなければほとんど何も語ってはくれないのである。困難は問題表の作成にある。」という記述がある。まるで蜘蛛の巣のような状態である私の脳神経で、知覚を介して得られた何らかの情報はどのようになるのか・・・という私の方法に大きな指針を支えてくれた一冊である。

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蔵書No.15
(著者)マルク・ブロック(堀米庸三監訳)
(書名)封建社会
(総ページ数)555頁(あとがき・参考文献・索引部分を除く)
(書籍の大きさ)21.8cm(縦)×15.5cm(横)
(発行所)岩波書店
(発行年)2008年(第5刷)

(解説)
原著は、Marc Bloch “La société féodale”である。訳書は上下二段組みの膨大なもので、私の蔵書ではあるものの、ほとんど読まれていないモノの一冊である。序章<本書の目指すところ>に続く<第一巻>は「依存関係の形成」で、第一部の「環境」と、第二部の「人と人の絆」から成り、<第二巻>は「諸階層と人間の支配」である。高齢になった私に時間があるとすれば、何度も、何度も、時間をかけて読んでみたい一冊である。

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蔵書No.16
(著者)二宮宏之
(書名)マルク・ブロックを読む
(総ページ数)256頁(主要著作・参考文献等の部分を除く)
(書籍の大きさ)18.8cm(縦)×13cm(横)
(発行所)岩波書店
(発行年)2004年(第3刷)

(解説)
蔵書No.14や蔵書No.15をどのようなモノとして読もうかとなったら『この本』を手に取ってほしい。とはいっても、マルク・ブロックの著作の幾つかを簡単にまとめた『本』ではない。マルク・ブロックが、どのような時代に、どのように生きてきたかを知ることで、マルク・ブロックの著作を読む作業に拍車をかけさせるというモノである。なかにはデュルケムもでてくるし、各種の雑誌の創刊の経緯も出てくる。その意味で、まさに、『マルク・ブロック(という人のコトを)を読む』なのである。付け加えると、私の仕事に大きなヒントを与えてくれたアルザス・ロレーヌにマルク・ブロックも関係している。

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蔵書No.17
(著者)エマニュエル・ル・ロワ・ラデュリ(井上幸治・渡邊昌美・波木居純一 訳)
(書名)モンタイユー(上)・・・ピレネーの村 1294-1324・・・
(総ページ数)367頁
(書籍の大きさ)19.5cm(縦)×13.7cm(横)
(発行所)刀水書房
(発行年)1990年

(解説)
本書の帯の表現を借りれば、『この本』はアナール派の最高傑作とされる著書の「上巻」である。原著は、Emmanuel Le Roy Ladurie “Montaillou,village occitan de 1294 à 1324”Gallimard,1975である(訳者あとがき)。14世紀の異端審問の記録から読み取れる人々の意識や心性に迫るエマニュエル・ル・ロワ・ラデュリの真骨頂といえる著作の訳本である。「上巻」は、「序章 異端審問から民族誌へ」、「第一部 モンタイユーの生態学—-家と羊飼い--」、「第二部 モンタイユーの考古学—身振りから神話へ--」から構成される。ただし、「史料に何を質問しているのか」というコトに、読者がのめり込んでいくことがなければ読み通すコトは困難かもしれない。もし、のめり込むコトが出来れば、長編の物語を読んでいるような感覚に陥るかもしれない。

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蔵書No.18
(著者)エマニュエル・ル・ロワ・ラデュリ(井上幸治・渡邊昌美・波木居純一 訳)
(書名)モンタイユー(下)・・・ピレネーの村 1294-1324・・・
(総ページ数)425頁
(書籍の大きさ)19.5cm(縦)×13.7cm(横)
(発行所)刀水書房
(発行年)1991年

(解説)
蔵書No.17の「下巻」が『この本』である。「上巻」の「第二部 モンタイユーの考古学—身振りから神話へ--」が、「第十二章 結婚と女性の立場」で終わっているので、ソレを引き継ぐ形で、「第二部 モンタイユーの考古学—身振りから神話へ--」の「第十三章 子どもの時代、人生の諸次期」から始まっている。各所にみられる「供述」は、「村で死ぬ(というコト)」、「呪術と救済(というコト)」、「貧困(というコト)」などなどを、まさに、追体験させる。「上巻」の「序章 異端審問から民族誌へ」と「第一部 モンタイユーの生態学—-家と羊飼い--」を読まなくても、「第二部 モンタイユーの考古学—身振りから神話へ--」を楽しめそうであるが、そのような作法によって、ル・ロワ・ラデュリの表現したかったコトを手に入れるコトが出来るかは疑問である。

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蔵書No.19
(著者)ル・ロワ・ラデュリ(樺山紘一・木下賢一・相良匡俊・中原嘉子・福井憲彦 訳)
(書名)新しい歴史[歴史人類学への道]
(総ページ数)317頁
(書籍の大きさ)19.5cm(縦)×13.7cm(横)
(発行所)新評論
(発行年)1981年(初版3刷)

(解説)
蔵書No.7の(解説)の部分で紹介した「アナール派」について、その方法が魅力的なモノとして描かれているのが、訳書としての『この本』である。原著は、Emmanuel Le Roy Ladurie の二巻から成る膨大な論文集“Le territoire de l’historien”であるが、その五分の一程度の部分訳である(訳者あとがき)。訳著215頁以下の「近代技術と農村風俗--バルザック『田舎医者』を巡って--」が、岐路に立っていた私のモヤモヤを吹き飛ばしてくれた。

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蔵書No.20
(著者)二宮宏之・樺山紘一・福井憲彦 責任編集/樺山紘一・立川昭二 解説
(書名)医と病い(叢書歴史を拓く-アナール論文選3)
(総ページ数)249頁(県地図部分を除く)
(書籍の大きさ)21cm(縦)×15cm(横)
(発行所)新評論
(発行年)1984年

(解説)
『この本』も蔵書No.7の解説の部分に紹介したものである。「アナール論文選」ということで、フランスの“Annales Économies sociétés Civilisations”から選ばれた論文が訳出されている。論文のいくつかは、1977年の9月-10月号(32e Année No.5) 特集“Médecins,médecine,et société en France aux ⅩⅧe et ⅩⅨe siècles”に掲載された論文である。久しぶりに『この本』をパラパラと読んでみたが、湧いてきたのはかつての「ワクワク」感ではなく、「なぜ、ココに傍線が引かれたの?」という「不思議な気持ち」であった。そして、今(2021年5月28日)の私なら、多分、「ココに傍線を引くだろう」という箇所が、「新型コロナ」との関係で、たくさん出てきた。

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