みゅぜぶらん八女の蔵書③

蔵書No.21
(著者)久塚純一
(書名)フランス社会保障医療形成史—伝統的自由医療から社会保障医療へ—(北九州大学法政叢書-10)
(総ページ数)336頁
(書籍の大きさ)21.7cm(縦)×15.6cm(横)
(発行所)九州大学出版会
(発行年)1991年

(解説)
『この本』は、久塚の初めての単著である。今考えると、もう少し時間をかけて丁寧に書けばよかったと思う反面、急いだだけに、想いは強く表現できたとも思う。出だしの部分にあるように、気にかけていたのは、フランスにおけるかつての医療はどのようなモノであったかというコトである。社会保障法を意識しつつも、社会保障法に留まることなく、システムを構成する諸関係のありように気を配った。タイトルを「形成史」としつつも、「伝統的自由医療の崩壊過程」としたのには、そのような意図がある。フランスといっても、「なぜ」、「如何に」という点については、書き上げた時点では、それほど明確な位置付けはなかった(ように思う)。

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蔵書No.22
(著者)久塚純一
(書名)「高齢化社会」・・・「問題」は発見されたのか?--「約束されたような方法論への問いかけ」からの出発—(自治総研ブックレット36)--
(総ページ数)51頁
(書籍の大きさ)21cm(縦)×15cm(横)
(発行所)地方自治総合研究所
(発行年)1993年

(解説)
『このブックレット』は、全体にわたって、「私たちの採用している方法」に焦点を当てたものである。具体的には、「高齢化」、「空間(地域医療計画)」、「身体(ADL)」等についての「方法」である。「新型コロナ」についての圏域を巡る今日的(2021年5月29日)な議論をみるなら、ソレは、未だに、都道府県という既存の行政の圏域を単位としてなされており、それとの関係で、何らの新機軸も提示できていない。このようなコトについては、「ブックレット」の「空間(地域医療計画)」の部分で具体的に論じられている。提示することが少しばかり早すぎたのか ???

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蔵書No.23
(著者)N.J.スメルサー(山中弘 訳)
(書名)社会科学における比較の方法—比較文化論の基礎--
(総ページ数)338頁
(書籍の大きさ)21.5cm(縦)×15.7cm(横)
(発行所)玉川大学出版部
(発行年)1996年

(解説)
蔵書No.23以下では、「比較」に関する蔵書を少しだけ紹介しておこう。最初に紹介する『この本』の原著は、Neil J. Smelser“Comparative Methods in the Social Sciences”(New Jersey :Prentice-Hall,Inc.,1988)である。トクヴィル、デュルケム、ウェーバーの比較の方法に光を当てながら、最終的には、分類、記述、測定、関連、原因、説明、理論にまで論を展開している。非常に明快で、「比較」という方法に、一つの指針を支えてくれる分かりやすい一冊である。

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蔵書No.24
(著者)Henry B. M. Murphy(内沼幸雄・江畑敬介・近藤喬一・吉松和哉 訳)
(書名)比較精神医学—精神障害の国際的、文化的広がり--
(総ページ数)468頁(目次等を除く)
(書籍の大きさ)21.5cm(縦)×15.7cm(横)
(発行所)星和書店
(発行年)1992年

(解説)
原著は、Henry B. M. Murphy “Comparative Psychiatry—The International and Intercultural Distribution of Mental Illness—”(Springer-Verlag,1982)である。『この本』において「比較精神医学」とは、「精神障害と、各種の国家、人びと、あるいは文化によって異なる心理的特性との関係を研究するコトである」とされる(2頁下段)。続いて、定義、目標等が述べられる。私自身に限定するなら、第二章の「公的データの比較可能性」の部分に、最も刺激を受けた。「なんとなく」のような私の方法に指針を支えてくれた一冊である。

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蔵書No.25
(著者)レ・タン・コイ(前平泰志・田崎徳友・吉田正晴・西之園晴夫 訳)
(書名)比較教育学—グローバルな視座を求めて--
(総ページ数)449頁
(書籍の大きさ)21.5cm(縦)×15.7cm(横)
(発行所)行路社
(発行年)1991年

(解説)
原著は、Lê Thành Khôi “L’éducation Comparée”(Armand Colin Éditeur,1981,Paris)である。1頁から47頁にわたる「序」において、「比較教育学」の概念から科学性、そして、研究の諸段階などについて丁寧に論じられる。そして、第Ⅰ部の「比較教育学の対象」と第Ⅱ部の「方法と技法」で、「これでもか !!」というように、細部にわたり論じられる。大著であるが、「比較という方法」に苦慮している若い研究者向きの一冊である。

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蔵書No.26
(著者)マーク・B・アダムズ(編著)(佐藤雅彦 訳)
(書名)比較「優生学」史-—独・仏・伯・露における「良き血筋を作る術」の展開--
(総ページ数)494頁
(書籍の大きさ)21.5cm(縦)×15.7cm(横)
(発行所)現代書館
(発行年)1998年

(解説)
翻訳された『この本』の原著は、Mark B. Adams (ed.)“The Wellborn Science : Eugenics in Germany,France,Brazil,and Russia”(Oxford University Press ,Inc.1990)である。マーク・B・アダムズ以外の著者は、シーラ・フェイト・ウェイスが「ドイツ」を担当、ウィリアム・H・シュナイダーが「フランス」を担当、ナンスィー・レイズ・ステパンが「ブラジル」を担当している。そして、編者のマーク・B・アダムズは、「総論」と「まとめ」のほか「ロシア」を担当している。蔵書No.23、蔵書No.24、蔵書No.25が「比較の方法」を念頭に書かれているのに対して、『この本』は、「比較」としながらも、四カ国についてのそれぞれの論述に力を入れている。そのような手法を可能としているのは、科学性を背景とした「優生学」というように、抽象化が既になされているからなのであろう。

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蔵書No.27
(著者)岡澤憲芙/宮本太郎 編
(書名)比較福祉国家論—-揺らぎとオルタナティブ--
(総ページ数)287頁
(書籍の大きさ)21.7cm(縦)×16cm(横)
(発行所)法律文化社
(発行年)1997年

(解説)
『この本』は、研究としての「比較福祉国家論」の不十分性を踏まえて、日本を含めた幾つかの福祉国家の揺らぎについてのケーススタディーを行いつつ、福祉国家の現状に対するオルタナティブの在り方を模索することを試みるものである。

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蔵書No.28
(著者)久塚純一
(書名)比較福祉論
(総ページ数)260頁
(書籍の大きさ)21cm(縦)×15cm(横)
(発行所)早稲田大学出版部
(発行年)1999年

(解説)
私が早稲田大学に赴任した時に担当した科目の一つが「比較福祉論」であった。しかし、当時はまだ、「福祉」といえば、「あるべき論」や「アプリオリ」なものも多く、そのこととの関係で、「比較福祉論」といえば、日本の福祉の不十分性を指摘する方法であるというように、限定的に理解されることも多かった。毎週資料を作成するのも面倒だし、受講生に私の「方法」も伝えたいし、さらには、「方法としての比較」を介して「私たちの自身の方法」を知って欲しいという思いで、『この本』は執筆された。

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蔵書No.29
(著者)久塚純一
(書名)比較福祉論[新版]
(総ページ数)267頁
(書籍の大きさ)21cm(縦)×15cm(横)
(発行所)早稲田大学出版部
(発行年)2001年

(解説)
『この本』は、蔵書No.28の[新版]である。早稲田大学出版部内での諸々の経緯もあって、2010年頃だったと思うが、在庫が無くなった段階で絶版にしてもらった。

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蔵書No.30
(著者)久塚純一
(書名)比較福祉の方法
(総ページ数)295頁(目次を除く)
(書籍の大きさ)21cm(縦)×15cm(横)
(発行所)成文堂
(発行年)2011年

(解説)
『この本』は、絶版となった蔵書No.29の後を受ける形で「成文堂」から出版されたものである。「私たちの自身」が「私たちの自身の方法」に気づくことが出来るように、「ことば」に気をつけて「加筆」がなされている。

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