十三代目市川團十郎白猿襲名披露「十二月大歌舞伎」夜の部1
二か月目に突入した「市川團十郎白猿襲名披露公演」に行ってきました。夜の部です。先月の「口上」や「助六」を観ていませんので楽しみでした。いよいよ猿之助さんが口上に列座なさいます。
夜の部の幕開きは「口上 柿色裃勢揃いにて相勤め申し候」
これが圧巻でした!最前列センターの團十郎さん新之助さんのまわりを囲むように大勢の役者が列座していました。三列にもなり、全員が市川家の正装、柿色の裃姿です。襦袢の襟も浅葱色と決まっているそうです。また、鬘の髷(まげ)が市川家独特で、筆先のように先が細く、上に向かってピンと立っています。これを「鉞(まさかり)」というそう。
だいぶ以前に蔦之助さんのblogで詳しく知りました。これは市川家の役者の中でも実績があり、大事な名跡を継いでいる数名しか許されないそう。猿之助さん中車さんはこの形の鉞です。ただ、宗家は形が同じでも「油付鉞」という特別仕様なものとか。
体調不良で休演の白鸚さんに代わり、左團次さんの仕切りで行われました。いろんな意味でドキドキして楽しい(笑)新之助さんの紹介を忘れてしまうハプニングも左團次さんのお人柄で無事にクリア。こういうアットホームな雰囲気が歌舞伎の口上だと思う。
猿之助さんは最前列の一番下手でした。最前列の役者だけが口上を述べていました。上手端の幸四郎さんの次が猿之助さん。この状況を上手く使って(笑)幸四郎アニキが全部言ってくれたので。。話すとこの後の助六の通人のネタがなくなっちゃう「以下同文」と笑いを誘っていました。私的には、その「以下同文」が口上の節の一番声を張る部分にきてしまい、強調しちゃっているのがツボ(笑)もうそこしか耳に残らない。さすがです。
後列には中車さん猿弥さん笑三郎さん笑也さん寿猿さん青虎さん右近ちゃん團子くんが。個人的には、澤瀉屋最年長の寿猿さんと、最年少の右近ちゃんが一緒にいる様子が嬉しい。右近ちゃんの成長にびっくり。
お祝いの言葉の後は團十郎さんの「にらみ」の披露がありました。市川家のお家芸「にらみ」は、邪気を払い、見た者は一年無病息災と言われています。團十郎さんの目の寄りは通常の見得とは違うので必見です。久しぶりに睨んでいただき有難かったです。
二つ目は「團十郎娘」
聴いたことがないなぁと思っていたけど「’近江のお兼’とも呼ばれる」とあったので驚きました。近江のお兼は歌舞伎公演でよく観ていた踊りです。
力自慢のお兼。。というには幼い’ぼたんさん’ではありますが、その存在感はお見事でした。私は初めて ぼたんさんの踊りを拝見しました。子役さんたちにはいつも驚かされます。曲が体に染み込んで一体になり心地いいこと!子供らしく溌剌と明るく、可愛らしかったです。
当たり前なのですが共演者は皆が男性。その中で負けていないオーラは末恐ろしいものがありました。漁師の種之助さんの踊りが楽しい。大勢で立ち廻りもあって面白かったです。
後半の見せ場、布晒しを両手に持って踊る場面。ウチワのような持ち手から、晒しが新体操のリボンのように長く伸びている道具を持って踊ります。ぼたんさんは巧みでした。驚いたのは、晒しの先まで生きているかのように布が動いていたこと。そして、その晒しが舞っている様子が清らかに見えたのです。白さも、ぼたんさんの’今’にリンクして、これからどんなカラーに染まっていくのか。。そんなことも思いました。
今日のお席は三階の東側でした。上からでも花道をよく見たかったからです。猿之助さん演じる通人は、上手から登場して花道を通り揚幕へ。。そんなルートです。
舞台はこんな角度で見ることができます。
東の扉に近いほうでした。舞台上手は見切れるけど、彌十郎さんの意休はギリギリ見えました。口上の猿之助さんは花道近くに座るのでよく見えました。また、通人もほぼ観ることができ大満足です。通人は段取りは決まっているけど、セリフは台本にほぼ無いと聞いたことがあります。
二年半前、延期になった襲名披露公演で猿之助さんの通人が発表になった時は、やったー!と思いました。面白いに決まってます。それがやっと叶いました。
猿之助さんの今までを考えると、おそらく毎日ネタを変えてくるであろうと妄想。今では日替わりは得意分野ですから(笑)むしろ同じことを毎日するほうが、猿之助さんにとっては苦痛な気がします。
幸四郎さんの襲名で巡業を同行した時、口上を全て(昼夜も)違うネタで話したこともあります。町を歩き、ご当地ネタを探していたそう。これには地元の皆様は大喜びでしたよね。
昔、猿之助さん座頭の公演で、巳之助さんも毎日違うことをしていて話題になったことがあります。猿之助さんの指示でした?記憶が曖昧ですが(笑)猿之助さんの公演ではあることなので、とうとう歌舞伎座まできたかと楽しみです。
もちろん今日のネタは面白かったのですが、それよりも猿之助さんらしく愛に溢れた通人だったことに感動でした。
そのお話は次回に続きます。
aya
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