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【百物語】貯金箱


「じゃあ、おじさんに本当の事話してくれるね?」

「話したら、タイホはしないんでしょ?」

「ああ、約束するよ」

「じゃあ、いいよ」


「さいしょはお母さんだったの。

 かいものに行ったときに、おかしを買ってくれなくて、

 でもぼくはちょきんばこを持っていたから、

 そこからお金を出して買おうとしたの。

 そしたら、お母さんはおこってぼくのちょきんばこを

 とり上げようとしたの。

 ボクが店をとび出してにげようとしたら、

 お母さんがおいかけて来るから、

 『やめて!』って言ったの。

 そしたら、お母さんはトラックにぶつかっちゃった」


「お父さんは?」


「ぼくは二かいのじぶんのへやにいたの。

 おこづかいがいくらたまったか、ちょきんばこを見てたの。

 そしたらお父さんがやって来て、いきなりおこるの。

 ぼくはなにもわるいことしてないのに。

 お父さんは、『それをわたしなさい!』って言うから、

 ぼくはにげようとしたら、おいかけて来るの」


「お母さんの時といっしょ?」


「うん、だからぼくはまた『やめて!』って言ったの」


「そしたらお父さんは階段から落ちたんだね」


「うん」


「・・・・・」


「ぼくはなにもわるいことしてないよ」


「ターくん、ちょきんばこ見せてくれる?」


「・・・・・」


「大丈夫だよ、とったりしないから」


「・・・・・」


ターくんは持っていた小さなカバンを探った。

チャリン、チャリン、と硬貨の音をさせながら取り出したのは、小さな頭蓋骨だった。

鑑識を呼ぶまでもなく、それが乳幼児のものなのは確かだ。


「ここのね、歯と歯の間からお金を入れるの。

 下の方はね、お金がおちないようにテープで止めてあるんだよ」


「ターくん、それ、どうしたの?」


「にわで”ひみつきち”を作るときに穴をほっていたら見つけたの」


私は思わずその貯金箱をとりあげようとした。


『やめて!』


ボキッ、と首の骨が鳴った。




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