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フレームワークは便利だが、ツールとしての限界を知らないと簡単に使い方を誤る #ターゲットは長万部

フレームワークは便利ですけど、ツールとしての限界を知らないと使い方を誤ります。この世に万能の杖はありません。

2020年7月18日公開の「ターゲットは長万部」の第14号のなかから、コラムのコーナーを全文公開してみます。

2020年7月18日公開の「ターゲットは長万部」の第14号
https://note.com/muroya/n/nef7afa83062d


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マーケティングの世界にはいろんなフレームワークがありますよね。

SWOTとかPESTとかファイブフォース分析とかバリューチェーンとか色々。
フレームワークはときに問題を解決してくれる強力な仲間になったり、それを組織に浸透させることで皆が同じように高いパフォーマンスを上げられるようになれば組織力を高めてくれる良さもあります。

前にこんなnoteも書きました。


「フレームワークの良さ
・組織として再現性をもつことができ、継続して成果を出せるようになる(属人的にならず、ノウハウを組織に蓄積できる)
・工夫すべき焦点が明快になるので、思考のエネルギーを「創造」に集中させられる
・共通の前提知識となるので、それにもとづいた議論を行う際のコミュニケーションコストが少なくなる
・育成や指導を行いやすくなる
・流行って共通言語になれば、やがて社内で当たり前のように使われ、社内カルチャーをつくりあげていく一手となる」


組織の成長期を支えてくれるフレームワークは私は大好きで、よく自作もします。

過去に
・ユーザビリティの「ビール三杯理論」
・グロースハックの「テンション上げるかハードル下げるか」
・マネジメントの「システム思考の組織づくり」
・簡単でパワフルなクチコミ分析「ネットスラング三兄弟」
・タワレコSNS講座で紹介した「BC理論」
・SNS向き消費者行動論「消費顔分類」
・検索も加えたメディア活用視点整理の「PESSO」
などなど作りました。

しかし、ときに蟻地獄に落ちる罠もあります。

それはなぜか。フレームワークは色眼鏡だからです。
言葉のとおり、思考の「枠」を決めて、その枠内で最適解を見つけるものです。思考法というツール。
なので、そこから出てくる答えは、フレームワークが決めた枠内のものです。
本当に求める答えが枠外にあった場合は、、、です。

また、フレームワークは再現性があるので(誰がやっても同じような答えに行き着く)、模倣リスクが高いのです。
流出したら、他でも簡単に真似されてしまうので、競争優位性になりづらいです。
競争優位の持続性がないのですね。P&GのWho,What,Howとか、だいぶ広まってるように、フレームワークがコモディティになるのです。
アイデア発想の観点からも、同じような論理構造で解いていくと、同じようなクリエイティブにたどり着いて、新鮮味がないためにつまらないものになるでしょう。クリエイティブジャンプがないので。


* * *


流行りのフレームワークに飛びつかず、いつの時代での大切なのは原理原則。
目的を吟味して、制約条件を加味して、今本当に解くべき最適な問いをたて、答えを導くことです。

フレームワークとは、お仕着せの思考法。
そのフレームワークが生まれた背景の状況と、あなたが今いる状況は違うはずです。
フレームワークにも賞味期限はありますし、パズルにハマるかどうかはわかりません。

企業や担当によって、目的・制約条件・資源もまるっきり違います。
ゼロベースで何を解くべきか、どう解くべきかを考える方が、よっぽど生産的なこともあります。

フレームワークに頼ってる時は、だいたい脳みそがサボっています。
外に答えを求めるよりも、もっとお客様のことを理解しようとしたり、自社の商品を磨き込めないか考えたり、組織能力を高めることに目を向けるほうが、本質的な答えを導き出せるかもしれません。
(フレームワークを知ることで、そこから新しい世界の見方を得て、自分なりの解法を導き出せることもあります)


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今、ネットフリックス の『ネクスト・イン・ファッション』という若手デザイナーたちが戦う番組を観ているのですが、
「アクティブウェア」の回で登場したアディダスのデザイナー、ジョセフィン・アーバーグ氏のセリフがとても印象に残っています。

ネクスト・イン・ファッション


それは、司会者からの「アクティブウェアを作るのに重要なことは?」の質問に対して、
「一番大事なのはフィット感。あとは着た時に自信とパワーを感じられること。」
との回答したこと。

これを聞いた時「まさに!」と思いました。ユーザーとしてスポーツウェアに求めることにズバリでした。機能面はもちろん、この感情の面はまさにで膝を打つ感覚。
言語化したことがなかったのですが、心の奥底を言い当てられた感覚がありました。

これはフレームワークではなく、エッセンスですよね。
「何のために?」を突き詰めて考えて辿り着けるものです。
この要点をおさえて服づくりした人とそうでない人の差はきっと大きいはずです。

優れた人は、このような人間への深い洞察をもとに、本質的なソリューションを届けている。
骨太な思考の強さを感じたエピソードでした。


* * *


ある思考法には、必ず「インスピレーションの源泉」があるはずです。
ヒトは0からは思考を組み立てられません。必ず「源(みなもと)」があります。

何らかの情報が刺激となって、思考を組み立てているはずです。

優れたアウトプットを生み出す人は、思考の組み立て方がすごいというかは、この思考を組み立てていく源泉のエッセンス、この鋭い情報を持っているのだと思います。良い「源(みなもと)」を持っているのでしょう。なので、エッセンスを持たない凡人がいくらフレームワークでこねくり回したところで、少し的からずれたところで精度を高めているようなものだなと。

他者からもらった「枠」で考えるか=フレームワーク、
それとも深い人間理解への洞察に基づいて得られたエッセンスから考えるか。

エッセンスがあってのフレームワークは、速くいい答えにたどり着けそうです。
エッセンスを抑えていないフレームワークは、速く間違った答えにたどり着けそうです。

フレームワークは知的生産を早めてくれる脳内工場の良い設備投資ではありますが、
インプットにエッセンスがあるかどうかで、全然アウトプットは変わりそうですね。

時代がいくら変わっても変質にしにくいエッセンスを押さえることの大切さを噛み締めていきたいものです。何回も何回も目的を吟味すること、人々は真に何を求めているかを想像し見抜くこと、それを満たすものを創り・作り・届けること。原理原則です。

「原理原則の愚直の実行」。いっさい真新しさのない当たり前のことですが、この徹底が何よりも重要なのです。

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