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映画「ザ・チャイルド」レビュー「邪悪なのは子供ではなく監督の方だと思いますよ!」

スペインに旅行に来ていた
トム(ルイス・フィアンダー)と懐妊中の妻エヴリン(プルネラ・ランサム)。
ふたりが訪れた町は祭りの真っ最中で喧噪著しい。
そこで彼が独身時代に訪れた離れ小島で
夫婦水入らずでのんびりしようと妻に提案した。
エヴリンは夫の提案を快諾し孤島へと向かった。

孤島に着いたふたりは閑散とした町の佇まいをみて,おや?と思ったが
数人の子供を見かけたのでいずれ大人に出会えるだろうと楽観している。
しかしアイスクリーム屋ではドロドロに溶けたバニラアイスを目撃し
食堂では真っ黒に焦げたままの肉を目撃し
ホテルのフロントでいくら呼び鈴を鳴らしても誰も出てこない。
あたかも大人が忽然と消失してしまったかのようだ。
子供しか見かけないこの島で
容易ならざる事態が起こっていようとは思いもしないふたりであった…。

本作品の冒頭で戦争・内紛・内戦・飢饉の最大の犠牲者が
子供であることが実際の映像で延々と「解説」される。
なれど。
「だから子供が大人にほんの細やかな「意趣返し」をしてもいい」
と結びつけるナルシソ・イバニェス・セラドール監督の人の悪さたるや
本邦で対抗できるのは突然大人達が世間話をしながら子供を殺し始める
「ススムちゃん大ショック」(71年)を描いた
漫画家・永井豪氏くらいだろう。
本作品が公開されたのが76年であるから
永井氏の慧眼ぶりに驚きを隠せない。
サラドール監督の「人の悪さ」は全編に横溢していて,
非常に後味の悪い結末となっている。

ところで…「ザ・チャイルド」と「ススムちゃん大ショック」を
関連付けたのは僕の独創ではない。
ジャーナリストの本多勝一氏は著作「子供たちの復讐」の中で本邦の
親が子を殺した「開成高校生殺人事件」と
孫が祖母を殺して長文の遺書を新聞各社に残し自殺した私立大学生の事件と「ススムちゃん大ショック」「ザ・チャイルド」
の関連を論じて永井豪氏にインタビューされている。

永井豪氏との対談より
本多「かなり前に永井さんが描いた作品の中に,
ある時母親たちが狂って子供を片端から殺し始めるのがあったでしょう。
手元に持ってないので,何処で読んだのか覚えが無いのですが」
永井「(前略)『ススムちゃん大ショック』です。」
(中略)
本多「スペイン映画だかに子供が気が狂って
親を一斉に殺し始める様な映画があったと言うのですが」
永井「(ザ・)チャイルドかな」
本多「私は見てないのですが」

うーん…コレ酷いなあ。
立花隆さんの取材相手を徹底的に調べ上げてから対談しないと
相手がこっちを信用しないって話を思い出すよ。

例えどれ程多忙であろうと取材相手(永井先生)のコトを
ろくすっぽ知りもしないで対談に臨むとは
本多さんのコトは尊敬しているが
この件に関しては微塵も尊敬出来ないね。
対談は「うろ覚え」が罷り通る世間話とは訳が違うんですよ本多さん。

本ブルーレイはAmazonとスティングレイ公式サイトで注文出来るが,
スティングレイ公式サイトで注文すると
オリジナルポストカードが6枚付属する。
値段が同じなら付録が付いた方が僕は得だと思う。


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