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村崎懐炉短編小説集

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短編小説をまとめました。僕は不思議な話や甘い恋の話が好きなんです。
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2018年12月の記事一覧

短編小説「シンナー」

短編小説「シンナー」

俺の脳みそはシンナーで半分溶けているんだ。
だけど勘違いしないでくれよ。
もうシンナーは止めたんだ。
ガキっぽいからさ。

地下鉄に乗っていた。
乗っていたはずなのに、今は太陽を拝んでいる。
なんでだよ、地下を走るから地下鉄なんだろ?
いつの間に地上を走ってるんだ?

欺瞞だ。そういう嘘を付くところが嫌いなんだ。
俺はこの街の連中が嫌いだ。
どいつもこいつもスマしやがって。

ああ、タ

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ショートショート「宇宙茄子について」

人類が火星の空気層に植えた茄子はいつの間にか自我が芽生えていた。
元来植物に精神があるとは、一部の奇抜な学者から指摘されていた事であったが、凡その歴史においてそれらの主張は比喩と受け取られたか、或いは黙殺された。
だが多肉植物が見せる人間への精神感応を見る限り、植物に精神が宿ることは自明と云える。

我が国の政府は火星に100エーカーの敷地を有している。火星の土地主張権は各国の争点であったが、政府

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