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へやのなか

59
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#朗読

No.34    (※「34」改)

No.34 (※「34」改)

さよなら世界 ありがとわたし
短いなんて知らないよ 十分すぎる長さだよ

ありがと世界 さよならわたし
溶けて溶けて溶けゆくの 
土になる 水になる 大地へ還る

ありがと世界 おはようわたし
なんて なんて 広すぎて 
なんて なんて 狭いのかしら

おはよう世界 ありがとわたし
眩しいだとか 気持ちいいだとか いったん忘れていいんだよ

「揺れるカーテン 温かいスープの匂い
ふわふわのタオル 

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34

34

さよなら世界 ありがとわたし
短いなんて知らないよ 十分すぎる長さだよ

おはよう世界 ありがとわたし
眩しいだとか 気持ちいいだとか いったん忘れていいんだよ

揺れるカーテン 温かいスープの匂い
ふわふわのタオル 汚れたぬいぐるみ 
イヤホンを外してごらんよ その雫を拭ってごらんよ
また目が覚めた 今日もゆくのね

ありがと世界 さよならわたし
溶けて溶けて溶けゆくの わたしは土で水でそれから

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眠れぬ夜

眠れぬ夜

ただ静かに
夜(よ)の更けるのを共にする

時には庭の鈴虫が
時には窓打つ雨音が
また時には 喉の渇きと腹の音(ね)が
わたしの旅の友になる

闇のなか
寝息のすきまを静かに歩く

ああ この時でさえ
無駄も無意味も起こさない
それを知っているわたし
だから止(や)めずに歩くのだ

歩けども歩けども
闇は 深く鋭くて

瞑れども瞑れども
歩みを止(と)めてはくれなくて

ああ 光を恋い
また 闇を

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