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七つの前屈ep.硝子張響「血塗の赤春~壊せ、傷。~」⑦

7.


「あ、そうそう、心が痛いって言えばさあ。なんかよく『痛いのは生きてる証拠だ』とか、『痛みがあるから人は生を実感できるんだ』とか、傷をつくることを美化するみたいな話ってよく聞くじゃん? あれなんなのかなー。痛いっていうのは辛いことだし、辛いってことは不幸だってことじゃん。悩むとかがんばるとか、みんなほんとはしたくないはずでしょ? たしかに大人になったら避けては通れない道なのかもしれないけど……まあたぶん奇跡ちゃんはそれすらも避けて通っちゃうんだろうけど……しなきゃなんないことは、するべきだという理由にはならないよねえ。他にも『痛覚は人間を危険から守ってくれてるんだ!』みたいなムズカシイ話をする学者さんなんかもいるけど、いやいや、ほんとうに危険なことって、死ぬとか病気になるとかよりも、それを自分が嫌だとか、怖いとか、苦しいとか辛いとか思う気持ちの方じゃん。だから結局、痛みを感じないんなら感じない方が総じて得だよねえ……なんて、思っちゃうかなー、奇跡ちゃん的には! デモちゃんはどー思う? ──あ、てかてかそういえば、さっきあやしー男の人たちがぞろぞろとそこの倉庫に入っていってたけど、変に絡まれたりしなくてよかったよねえ。やっぱり奇跡ちゃん、ラッキーだなあ」

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