2022年に観た映画78本レビュー

はじめに

 友人とほぼ2~3人でやっている週2で映画を観る会「ビデオナイト」の2022年全視聴映画レビューをする。以下の前置きは2021年版レビューのコピペ。

 ★をつけて評価しているけど、これは映画のクオリティを採点しているようなものではなくて、単純に僕がどのくらい好きかを表したものだ。各★のイメージは次の通り。

★ 死ぬほどつまらん
★★ 普通につまらん
★★★ 割と楽しめた
★★★★ おーいいねえ
★★★★★ 超好き

 ★3以上は全部普通に楽しめた映画ばかりだ。それ以上の★の数は完全に趣味の問題だと思う。人によっては僕が★5付けた映画よりも★3の方が好きだったりするだろう。もしかしたらそういう人の方が多いかもしれない。ここで、僕が★を増やすときの基準についても整理しておこう。このリストを参考になんか観てみようかなと思っている人は、まず僕と趣味が合うかどうか確認してほしい。

①内容の特異性/新奇性
 要は、その映画以外ではあまり表現されていないような内容が描かれているかということ。これまで感じたことのない気持ちにさせて欲しい。今まで知らなかった何かを教えてほしい。僕の予測を裏切ってほしい。この対極にあるのは、「お決まりのパターン」を大切にした映画である。商業的に大成功した映画はそういったものが多く、僕の気にいるものは必然的に少なくなる。ここがかなり人によって好みの分かれる部分だと思う。

②人間性への深い洞察
 世の中なんでも白黒つけられるわけではないし、人間の行動全てに筋が通っているわけでもない。時に不条理であったりもする人間の姿を描き出しているものが好きだ。画面の中で人間が生きてるなあ、と感じさせてほしい。

③映像の美しさ
 美しい画面にはもうそれだけで価値がある。

 以上を踏まえた上で、★の数が少なかった順に紹介していこう。映画.comのリンクを添えているので、あらすじなどはそちらで確認してほしい。★4以上はyoutubeのトレイラーも貼っておく。なお、ビデオナイトではなく個人的に観た映画もメモが残っている範囲で(個)とつけて紹介しておく。

★ 死ぬほどつまらん&★★ 普通につまらん

 なし。★2に近いかな~っていう★3はあったけど記録としては一応なし。

★★★ 割と楽しめた

2010年

 かの有名な「2001年宇宙の旅」の続編。監督はキューブリックから別の人に変わっている。
 つまらないわけではないけど、なんというか平凡だった。「2001年」の良さは「人の理解を超えた宇宙の神秘」みたいなものを感じられるところだと思うんだけど、「2010年」においてはその宇宙の神秘が人の理解できる範囲に留まっていて、分かりやすくなった代わりに魅力や迫力を失ったように思う。ただ分かりやすくなった分、「2001年」よりも親しみやすい映画になっており、実際アマゾンレビュー等も全然悪くない。「キューブリック味」を期待して観ると肩透かしを食らうぞ、というだけで、どっちが好きかは趣味によるだろう。


サランドラ

 いい感じにしょうもないスラッシャー映画。殺人一家に襲われる話。しょうもないスラッシャー映画観たいな~って気分のときにオススメ。


シライサン

 乙一の長編監督デビュー作らしい。和製怪談ホラーとしてはかなりオーソドックスかつなかなかの魅力はあった。乙一の初期のホラー系作品はいくつか読んでいたので、あんな感じにもうちょっとメチャクチャな展開になるかと思いきや結構堅実だったなあという印象。


サラエヴォの銃声

 かなり難しい映画だった。第一次世界大戦の発端となったサラエヴォ事件の100年後、その式典を行う会場で色々と事件が起こるという映画。おそらくボスニア・エルツェゴビナ・セルビアあたりの社会情勢を反映した映画なんだと思うんだけど、何分そのあたりについての予備知識が無いもので、何がなんやらよくわからないまま終わってしまった。なかなか教養の要る映画だと思う。


孤狼の血 LEVEL2

 ヤクザ映画ってどうしても一歩引いて観ちゃうのでのめり込めないんだよな。すごい喧嘩してたなあという感想しか無い。でもめっちゃ喧嘩しててすごかった。


チェルノブイリ・ハート

 チェルノブイリ原発事故から16年後に撮られたドキュメンタリー。なんというか「土地が死ぬ」ということの重みを感じさせられる。


わが青春に悔なし

 黒澤明監督作品、実はあんまり観てないので観てみたやつ。確かにいい話ではあるんだけど、ちょっと説教臭くて何かそれ以上の魅力を感じるほどではなかった。


ライトハウス

 孤島の灯台守2人がだんだん狂っていく話。
 登場人物が全員狂って幻覚を見始めた時点で興味を失ってしまった。幻覚なんて見始めたら映像的にはもうなんでもありだし幻だから結局意味なんて無いわけだし、どうでもよくなってしまう。
 ★3にしたのは映像の美しさでの加点。横幅の狭い画面の閉塞感とか、モノクロの陰影の美しさはなかなか良かった。


ナイル殺人事件

 オーソドックスなミステリー。こういうのたまに観たくなるんだよね。エジプトの背景が美しすぎるのが、逆に作り物感を醸成してしまっていて惜しいなと思った。


ウエストサイド・ストーリー(新しい方)

 「金のかかった映画が観たい」というリクエストを受けて観たやつ。普通に良い。実にオーソドックス。


オールド

 超スピードで老いていく島に閉じ込められた人々を描いたホラー。特異な設定を活かしたおもしろ展開もあり、なかなか楽しめた。


さがす

 突然消えた父を探す娘の映画。ちょっとずつ謎が明らかになっていく過程やきれいなオチが良かった。ただいわゆる「良いシーン」の演出がちょっとクサくて恥ずかしくなってしまった。


呪詛

 なんかついったーでめっちゃ話題になっていた台湾ホラー。ひたすらちょっと怖いシーンが続くモキュメンタリータッチの映画で、恐怖演出や造形はなかなかよかった。ただ特に目新しさは無く、出だしでオチも読めてしまったので前評判ほどではなかった。「怖い映画」としての完成度自体は高いと思うので、普段あまりホラー映画観ない人ならかなり楽しめるのではなかろうか。


世界の車窓から 特別編集版 #2 南フランス

 PrimeVideoにある1時間のやつ。これを映画レビューに入れていいのかは微妙なところだけど、旅行気分を味わえていいね。


水の中のナイフ

 ロマン・ポランスキーの初期作品。夫婦+青年の乗ったボートで繰り広げられるなんだか居心地の悪い人間模様。ポランスキーはやっぱり悪意のあるブラックユーモアみたいなものをさりげなーく表現するのがうまいと思う。その味わいは初期の作品にもしっかりあってさすがだと思った。


立ち去った女

 3時間48分もある長編。まあまあ好きなシーンもあるから★3にしたけど、正直全体でみると★2でもいい。結構退屈なシーンが多く、「長い映画だからこその良さ」みたいなものもそこまで感じられなかった。


ホームワーク

 イランの子どもたちに、「宿題やった?やってないの?なんでやってないの?」ってずっと聞いていくだけの映画。寝た。


インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア

 これ好きな人はかなり好きだろうな。美しい吸血鬼たちの愛憎劇。不老不死ってやっぱりロマンがある。


ヴェラは海の夢を見る

 コソボ映画。夫の突然の自殺の後、妻が男性優位かつ理不尽な伝統社会で一生懸命生きる映画。


ミス・バイオレンス

 ある一家のやばさが徐々に明らかになっていく映画。「ギリシャの奇妙な波」という映画ムーヴメントに乗って制作されたものらしい。


桜桃の味

 最後の方の一番いいところで寝ちゃったので★3にしてるけど、ちゃんと起きてたら多分★4にしたと思う。奇妙な方法で自殺しようとしている男の顛末を描いた会話劇。眠くないときに観た方がいい。


コーヒー&シガレッツ(個)

 ちょっとシャレたコント観てるような感覚。


マザー!

 結局なんなの?って感じだけど途中の描写は楽しかった。


★★★★ おーいいねえ

そして人生はつづく/オリーブの林をぬけて

 どちらもイランのアッバス・キアロスタミ監督作品で、去年見た「友だちのうちはどこ?」の連作。イランのなんでもない日常やちょっとした幸せが感じられて良い。


殺人の追憶

 ポン・ジュノ監督作品その1。韓国で実際に起きた連続殺人事件を描いたもの。この映画製作当時は犯人が捕まっていなかったが、映画となったことで別の罪状で服役していた犯人が自白したらしい。そりゃ自慢したくもなるよな。当時の韓国の警察のメチャクチャさ加減などもしっかりと描かれており、なかなか迫力があった。


オクジャ okja

 ポン・ジュノ監督作品その2。「食肉」に関わる倫理的な問題や対立をテーマとした映画だが、特定の思想を強烈に支持するようなものではない。なんというか、どうにもならない難しい問題を、どうにもならない難しい問題としてありのまま素朴に描いているのが良かった。


恐怖の報酬(1977年版)

 端的に言ってしまえば、ジャングルの中、トラックでニトログリセリンを運ぶ映画。それだけなんだけど、なかなかにスリルと絶望感があった。


魂のゆくえ

 かなり紹介の難しい映画。純粋故に悩んで悩んで変な方向へ捻くれていく牧師の話。タクシードライバーの脚本を書いたポール・シュレイダーという人が監督をしているらしい。


バクラウ 地図から消された村

 ブラジリアンホラー映画。開幕のメチャクチャ陽気な葬式とか、村内放送をDJがやってたりとか、政治家が車で自分のオリジナルテーマソングをかけながらやってきたりとか、文化の違いが面白い。それだけじゃなく、エンターテイメント性も普通に高いバイオレンス映画だった。


馬を放つ

 キルギス映画。キルギスの人々が持つ文化的背景をあまりにも知らないため、主人公の行動原理を理解するのはかなり困難だった。ただ一応想像はできるし、なんだか爽快感もあるし、青々とした山も美しいし、良い気持ちになれる映画だった。


ファブリック

 サブカルファン御用達って感じになってきたA24の映画。音楽やムードにアルジェントへのリスペクトを感じる。不思議なムードがなかなか良かった。


宝島

 フランスの避暑地の人々をただひたすら映していくドキュメンタリーっぽい映画。人々が生き生きとしていてなんかいい感じ。


赤い闇 スターリンの冷たい大地で

 ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、何かその辺の映画観ようという回。スターリン政権下のソ連もウクライナに対してえげつない行為をしていたようで、それを告発した実在のジャーナリストを描いた映画。そりゃウクライナも西側に付きたがるでしょって感じだ。このジャーナリストが告発後にちゃんと殺されているというのもすごい。ホラー映画のレビューで「結局怖いのは人間なんだよな~」みたいなセリフをよく目にするけど、一番恐ろしくておぞましいのはやっぱり「権力」だと思う。


台風クラブ

 台風で家に帰れなくなった中学生たちが一晩学校に泊まる話。非日常的な状況で、普段の抑圧から解放された少年少女の姿を描いている。何とも言えない生々しさが良い。


ノスタルジア

 惑星ソラリスで有名なタルコフスキーの作品。めーーーーっちゃ寝た。よくわかんないしめちゃくちゃ寝れる。すごく気持ちよく寝れる。映像が良い。


遠い夜明け

 南アフリカのアパルトヘイト時代を描いた作品。この時代の黒人差別政策について教科書的な知識はあったけど、実際の様子を描かれるとやはり衝撃を受ける。


クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園

 とても丁寧にミステリー映画という形式をとっているのが良かった。真相も実にクレヨンしんちゃん的で、分かるわけねーだろと思いながらもなるほどなー思わされる解答がきっちり用意されてて非常にうまい。


フリークス

 見世物小屋の小人の恋模様を描いた作品。切ない。


地獄の警備員

 黒沢清監督の初期作品。松重豊がひたすら不気味に人を殺す映画。


カリスマ

 黒沢清監督作品その2。カリスマと呼ばれる一本の謎の木を巡って人々が争う映画。価値観や立場による対立を戯画的に描きつつ、そういうの全部捨てると気持ちいいぜって感じ。内容としてはCUREに近いけど、僕はCUREよりこっちの抽象性や不条理感が好み。


すべてが変わった日

 普通に楽しめるスリラー。法よりも地元の人間関係や慣習が優先されるど田舎の恐ろしさを感じた。


バスケットケース

 切除したシャム双生児の兄をバスケットに入れて持ち歩くというめちゃくちゃな設定のカルト映画。期待を裏切らない楽しさ。なんと3まで出てる。そのうち全部観たい。


都会のアリス

 ヴィム・ヴェンダース監督作品。空港で突然小さな女の子を預かることになった男が、彼女の記憶を頼りにおばあちゃんを探しに行くロードムービー。「そうそう、こういうのがいいんだよな~!」っていう良さがたくさん詰まっている。好き。


ベルリン、天使の詩

 ヴィム・ヴェンダース監督作品その2。ベルリンの街で人々を見守る天使の話。とてもロマンチックな優しい映画。


東京画

 ヴィム・ヴェンダース監督作品その3。小津安二郎作品に憧れたヴィム・ヴェンダースが、小津作品の時代から時を経た昭和末期の東京を訪れるドキュメンタリー。「過去の日本を外国人の視点から観る旅行記」という感じで不思議な気分になった。


世界の涯ての鼓動

 ヴィム・ヴェンダース監督作品その4。中東のテロ組織に潜入するスパイの男と、深海探査船に乗る研究者の女のお話。それぞれの世界で極限の環境に赴くドラマ。若干とらえどころがない感じもするけど描きたいものは伝わった。


バニシング―消失―

 シリアルキラーと被害者遺族が対話するという展開が異彩を放つフレンチサスペンス。こんな丁寧に殺人犯が犯行を語る映画は中々ないんじゃないか。


血の祝祭日

 世界初のスプラッタ映画らしい。ゴア表現の歴史はここから始まったんだねえ。予告の最初にある警告がとても時代を感じる。


白いリボン

 ドイツの田舎村で起きる事件を描いた映画。抑圧的な慣習の中で人の悪意が増幅されていく様子がとても気持ち悪くて美しい。


眠る男

 白いリボンとは打って変わって、田舎のゆったりした温かい生活を描いている映画。群馬県が人口200万人到達記念で制作した映画らしい。


オスロ、8月31日

 入院して薬を断った薬中が、退院して社会復帰を目指す話。周りの友達はまともな人生を歩んでいる中自分だけがクズだという巨大な劣等感がさらに自分の首を締めていく感じ、とても良くわかる。心情を言葉だけではなく映像的に丁寧に描写していて魅力的だった。


幻の湖

 「東宝50周年を記念して作られたとんでもないクソ映画」という触れ込みで観たのだが、普通に楽しめてしまった。確かにあらすじを説明しようにもメチャクチャすぎて意味不明なんだけど、なんとも言えない熱量と爽やかさを感じられる映画だった。世間での評判と自分が楽しめるかどうかはやっぱ別だね。


シェラ・デ・コブレの幽霊

 心霊ホラーの古典映画。ホラーだけでなくミステリー要素もあって退屈しないし、主人公のキャラクターがすごく立ってて魅力的だった。お手伝いのおばさんもいいね。映像以外では古さを全然感じさせない面白い映画。


スリープレス

 イタリアンホラーの巨匠、ダリオ・アルジェントの2001年の作品。この人の映画は初期~中期の作品にファンが多く、新しめの作品はいまいち人気が無い。でもこの作品にも「アルジェント映画でしか味わえない味」はしっかり込められている。キルシーンに込められた熱量と美学がやはり良い。


ラストナイト・イン・ソーホー

 夢と現実が混じり合うホラー映画。現実のロンドンと夢の中の60年代ロンドンを行き来する様子が映像的にとても楽しかった。


アルプス

 「聖なる鹿殺し」のヨルゴス・ランティモス監督による、相変わらずだいぶわけわからん不条理映画。主人公たちは家族を亡くした人の家で「死者の役」を演じることで死んだことを忘れさせ、悲しみを癒やす仕事をしている。そんな妙な仕事が受け入れられている世界や、死者を演じる中で自己を見失っていく主人公たちの姿がとても不気味でよかった。


シン・ウルトラマン

 最高に腕利きのオタクが作った超贅沢な二次創作。


TITANE/チタン

 普通には生きられない女の人生を、超エキセントリックに描いた作品。現代では「社会における女性の生きづらさに目を向けよう」というムーブメントが世界中で起きていて、それに乗った作品もたくさんある。この作品もその流れの中にあるような気もするが、あまりにもエキセントリックすぎて「説教臭さ」がまるで無いのが良かった。2021年のパルム・ドール。


インスタント沼

 すっごい軽い気持ちで見れる邦画。たまにはこういうのもいいよね。


博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか

 キューブリックのかなり際どい反戦ブラックコメディ。純粋におもしろい。映画作るのうめ~ってなる。


珈琲時光(個)

 本当に何も起こらない。淡々と自然に時間が流れていくような映画。


悪魔のいけにえ―レザーフェイス・リターンズ―(個)

 悪魔のいけにえの続編。一応ちゃんと話もつながっている。原作ファンへのサービスがしっかりあって良い。


クリムゾン・ピーク(個)

 スタンダードな館幽霊モノだけどセットや映像の美しさがヤバい。


ナイブズ・アウト:グラス・オニオン(個)

 相変わらず気持ちよく観れるミステリー。いいね。


★★★★★ 超好き

2001年宇宙の旅

 むかーし観たときは「よくわかんないな~」って感じだったんだけど、観直したら「よくわからんけどいい!」って感じだった。全てを理解する必要はなくて、ただそこにあるものを味わうというのも作品の楽しみ方のひとつだという大らかさを、年をとることによって手に入れることができたようだ。始めの「2010年」のところでも書いたけど、このよくわからなさが「人の理解を超えた神秘」を感じさせてくれる。「宇宙」を感じよう。


ドライブ・マイ・カー

 村上春樹のいくつかの短編を元にしているらしい。僕は村上春樹作品に触れたことがないので他の作品や原作との比較はできないけど、この映画はめちゃくちゃ良かった。主人公と専属ドライバーの車の中での会話を軸に、徐々に変わっていく関係性や心の動きが繊細に描かれる。気持ちの良い余韻が残る素敵な映画だった。


千年女優

 今敏作品で一番好きかもしれない。現実とイメージをごちゃまぜにしながら、一人の女優の生涯を振り返っていく映画。ラストシーンが最高。今敏の新作が観たいよ。


世界の車窓から 特別編集版 #1 スイス

 スイスの自然すごすぎて圧倒された。


青春群像

 フェデリコ・フェリーニの有名な作品。確かキューブリックが好きな映画として挙げていたということを知って観たやつ。生まれ育った街で同じ仲間と同じようなバカな毎日を過ごす青年たちの話。安心感と閉塞感の同居する感じがとてもリアルで良い。これもラストシーンが最高。


夏時間

 子どもを主人公にした韓国のホームドラマ。お姉ちゃんと弟の仲が良いような悪いような絶妙な塩梅とか、登場人物同士の関係性がとにかく自然で良かった。


地獄の黙示録 ファイナル・カット

 なんというかすごかった。もちろん「軍人カッコイイ」系の映画ではないし、それでいてただの反戦映画でもない。戦場の常軌を逸した過酷さと、その先にある人間の狂気をものすごい迫力で描いている映画だった。


彼岸花/お早よう/秋日和/秋刀魚の味

 小津安二郎作品4作。
 2022年一番ハマったのが小津作品だった。全部昭和の家族の姿を描いた似たような話だし、どの作品にも同じ俳優が同じような役で出ているのに、何本観ても全部面白い。この良さを言葉で伝えるのは本当に難しい。「これぞ映画体験」とでも言うような、確かな満足感がある。画面の中に「本物の人生」を感じてしまうのだ。「昔の日本の家族の話」という局所的なテーマを扱っているにも関わらず、世界中で未だに広く愛されているというのは伊達じゃない。
 今まで観た小津作品の中で特に好きなものを挙げると、「お早う」「秋日和」「秋刀魚の味」の3作。これらは後期のカラー作品で、モノクロより観やすいだろうしオススメだ。特に「お早う」は子どもたちを主人公にしたホームコメディで、アニメを観るくらいの気軽さで観れる上に小津作品の良さもしっかり味わえるイチオシの作品。普段古めの映画を観ない人は「古典的な名作は難しそうで観ても楽しめるか不安」みたいに思うかもしれないが、小津作品は頑張って理解しなきゃいけないような映画ではなく、ぼーっと観ているだけでじんわり染みてくるような映画だと思う。気負わずに一度観てみて欲しい。


散歩する惑星/さよなら、人類(個)

 スウェーデンの監督、ロイ・アンダーソンの作品2本。
 人生の悲哀をものすごくシュールなコメディとして描いた作品。とりあえずトレイラーを観て欲しい。悲しいけど暖かくて、なんかいい感じなんだよね。


おわりに

 2022年のまとめとして書きたいことの9割は小津作品のところに書いてしまった。とにかく小津作品を推したい1年だった。騙されたと思って「お早う」を観てほしい。ほんとーーーーに面白いから。
 ヴィム・ヴェンダースやアッバス・キアロスタミは小津安二郎のファンであることを公言しており、その繋がりで観た。作品に直接的な類似性はほとんど感じられないが、どちらも人々の日常における機微を大切に描いているという点では確かに小津作品と共通した魅力があって好きだ。でもやっぱ小津がナンバーワンでありオンリーワンなんだよね。
 もうちょっと新しい話題作だと「ドライブ・マイ・カー」もすごく気持ちのいい映画だったのでおすすめしたい。
 おわり。

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