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父のイカ刺と「なだ万」体験記(其の弐)

「こんな贅沢な時間を良いのだろうか」と独り言ちる息子と

「私は今まで正義を疑えとあなたたちに言い続けてきたけれど、美味しいは真の正義だと思う」と訳のわからない信念を語りだす母

「そうだよね、美味しいの前では皆が平和になる」

世界平和を願う田舎者親子は吟醸酒「鶴齢」を冷で飲み交わすのであった。

蒸し物

河豚のスープ蒸し

 焼餅 黄芯白菜 椎茸 葛きり 

春菊 チリ酢あん 赤卸し 万葱

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酸味のあるあんがかかっていて、ふんわりとつるんとぷりんと美味しい。

「やっぱり茶わん蒸しは美味しい」と教養の無さをさらしながらも、幸福に食べ続ける。

あのぷるぷるだった食材は何だったのだろう、葛や餅ではないことだけは確か。

若しやあれも河豚、だとしたら河豚それは侮れぬやつである。

造り

河豚焼霜造り 薬味

本鮪 真つぶ貝 牡丹海老 あしらい

土佐醤油 ポン酢

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手前にある黒く四角が海苔 右がもみじおろし

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同じ様な写真を2枚もごめんなさい

右側の青い器が土佐醤油で海苔を入れて奥の器の食材を

白い器がポン酢でもみじおろしを入れて葱を巻きながらふぐ刺しを

「やはり本物は歯ごたえがある」そんなことにまで感動する、生の河豚は初体験の貧乏人親子。

北海道でも最近は温暖化のせいで潮の流れが変わったからか、河豚が水揚げされるようになってきたらしいのですが、河豚を食べつける習慣が無いのだ。

実家の馴染みの魚屋さんの三代目が、講習を受けに行って免許を取ったと話を聞いた。

煮物

和牛と九条葱みぞれ鍋

黄韮 水菜 舞茸 三つ葉 黒七味

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北海道は食材の宝庫ではあるのだが、それに頼り切る傾向が各家庭でもあり、みぞれ鍋を作る家庭はまれだと思う。

お鮨屋さんではなく、こちらに来たのは偶然ではなく必然だったの・・・なんてことを思う。

体が温まりお肉も柔らかで癖が消えて、大根の底力を知らされた。自宅でも作ってみよう。。。。。。

父と朝採れたてのイカと大根おろしと

私は夏に弱い細い子だった。昔のクラスメートに、倍になったと揶揄されるくらい細かった。

朝にも弱く、朝食を食べることが苦手な子供だった。

朝食を食べなければ登校させてもらえず、遅刻の常習犯になってしまったくらいだった。

そんな私を心配してか、父は水揚げされたばかりのイカを近所に住んでいる漁師さんから分けてもらい、朝食用にイカ刺を作って冷蔵庫に入れておいてくれた。

父は宿直勤務もある仕事だったので、朝の休憩時間に官舎に戻ってきてイカを調理し大根をおろして冷蔵庫に入れ、また職場に戻って仕事をしていたのだ。

つめたく冷えたイカ刺と大根おろしに醤油をたらし、熱々のごはんを入れて食べるのが夏場の私の朝ご飯だった。

冷たいイカと暖かいご飯で、これならば一人前以上食べることができた。

母は魚を下ろしたりの調理が苦手な人だったし、まだ職業婦人だったので朝の家事で忙しかった。母の作る朝食のおかずは、唐揚げやカツのことも多かった。

今でもときどき父の作ってくれたイカの刺身を思い出す。

大根おろしとご飯の食べ方は、行儀が悪いのでしなくなったが。

「ごちそうさま」は「ご馳走様」と書くのだが、父が馳走して作ってくれていたのだな。

美味しいは愛だと思う

#美味しい #美味しいは愛 #美味しいは正義 #子供 #父親 #介護 #エッセイ #家族

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