見出し画像

地元の本屋さんに仕事で使う本を大量に発注し、
入荷したから、というので取りにいった。

「クルマはどこに停めてますか?」
と書店のご主人のクワハタさんがわたしにたずねる。

釜石でご飯を食べにいったり、打ち合わせにでかけていくと、
けっこうこの「クルマは……」ときかれる。
バスできました、汽車できました、歩いてきました、
答えるとほぼ100%、驚かれる。

住んでるアパートすぐ近くですから、
といって、抱えて持って帰ろうとして思い出した。
radikoで聴いて気になった本を注文しよう。

書名と書影とか、情報をスマホで見せると、
(Amazonの「カートに入れる」はこういうときに便利)
「あ、その本だったらありますよ」
クワハタさんはとととと、っとレジから書棚に移動して、
「『ねこしき』ですよね。人気あるんですよ」

猫沢エミさんは福島で生まれ、
18歳で上京し、26歳でシンガーソングライター兼パーカッショニストとしてデビューする。
けど、そうそう爆発的に売れるわけでもなく、
したがって収入もそこそこなので、
美味しいものを食べるには、自分でつくるしかない!
ということで、料理の腕を磨いていった。

本には「生活料理人」と表現してある。
プロの料理人ではなく、アマチュアの家庭料理を少しだけ上手につくれる人。

36歳でパリに行く。
会社をつくってプチお金持ちになったが、
やがて傾いてつぶし、
フリーペーパーの編集長をして、
ミュージシャンとしても活動する。

パリジャンヌらしく恋をして、いくつも恋をして、
そのひとつが実は不倫だったり、
でもそれがやがて不倫じゃなくなり、
病気をして、両親を看取って、
50歳になったら50歳なりの人生の積み重ねをしてきた。

ひとは50歳にもなれば、もうあれやこれやチャレンジすることもない。
自分に残されている時間は、なんとなく数えられる。

でもチャレンジしないこともないタイプもいる。
あれやこれや手当たりしだいにやらないだけで、
「これ!」と決めたものには、突き進んでいく。

50歳にもなれば、それくらいの経験とスキルは身につけている。
なんとかできるし、なんとかなる。
それを喜んだり励ましてくれる人がそばにいると、
あと何年でもどうにでもなるような気持ちになる。

それが人生の、しまい方なのだ。

プロの料理人は人に満足を与え、
生活料理人は幸せをシェアする。

【粋な心遣い】
珍しい和綴じだから、本がぺったりと開く。
これはレシピ見ながら料理するときに便利。