夢中になることの魔力

そんなにがんばって働いてないで、
ゆっくり休みたいとは思いませんか?

というような質問だった。

前田裕二さんの回答は、

それはともさん(質問者のニックネーム)が夢中になってないからですよ

だった。

前田さんは大学を卒業して外資系の証券会社に就職した。
新卒でも優しく育ててくれるような環境ではなく、
先輩たちとの競争にいきなり放り込まれた。
前田さんの作戦は、朝4時に出社して、
レポートを読み、分析をし、7時の始業に備える。
先輩たちに比べて知識も経験も不足しているけれども、

その日しばらく、最新情報についてはボクが一番知ってて、
その日しばらく、ボクが一番付加価値の高い人間になれる。

ちょっとのページだけでも、
少しの時間だけでも、
努力することに労を惜しまない。

そういうプロセスを大事にした。

アメリカに赴任したとき、
現地のお客さんたちは、プロセスより結果を重視した。
営業トークでもプライベートトークでも接待でも、
コミュニケーションを重ねていって、ビジネスにつなげる。
という日本式のやり方は通用しなかった。
なんぼ儲けさせてくれたか、だけだった。

でもそれはそれで合理的だと、前田さんは思った。
働いているプロセス、時間じゃなくて、成果のみで判断される。
周りの同僚たちは、定時になったらさっさと家に帰って、
家族との時間を大事にした。
週末も上司や取引先とのゴルフ、なんてあり得なかった。

SHOWROOMを立ち上げたときの身体に残っていた記憶は、
小学生のときの路上ライブだった。
生活のために歌っていたが、
やがてそれが楽しくなり、夢中になった。
投げ銭をしてくれる人たちが増えていった。
中には、1万円を入れてくれる人もいた。
それは……と断ると、
「いいんだよ、楽しかったから」

それから歌っているときにもお客さんを観察してみるようになった。
自分が歌っているとき、自分も楽しいけど、
聴いてくれている人たちも楽しそうだった。
だから、夢中になって歌うことができた。

あとからその体験を振り返ってみると、
観ているお客さんたちは、歌っている小学生を育てているプロセスに
充実感なり満足感なり幸福感を感じ、
自分に投げ与えてくれるお金は、その幸せの対価である。
というふうに分析できた。

結果が価値を生むことはもちろんだけれども、
プロセスが価値を生むこともある。

とすればネットで同じようなことをするには、
プロセスに価値を感じさせるビジネスはできないか?

夢中になればたくさん働いても苦じゃない。
がんばってたくさん働いたら苦しく痛くなってくる。

なぜ苦しくてもがんばれるのかというと、
ゴールが見えているから。正解がわかっているから。

正解がない世の中では、
がんばっても価値は生み出せない。
夢中になると、自分に価値がついてくる。

昨日の大隈塾は、前田裕二さんと田原総一朗さんとの対談から学んだ。