ゼスチャーワーク

清宮克幸さんの大隈塾での講義で。

ラグビー部でマネージャー候補の選手がいた。
同学年みんなが、その部員は
プレイヤーとしての技量より
マネジメント能力を活かしたほうが
チームが強くなる、と判断しての推薦だった。

清宮監督は、そう伝えて、選手を引退し、
マネージャーに就任するようお願いした。

その部員は、固辞した。
ものすごい拒絶のしかただったらしい。

監督は何度も何度も説明をし、説得をした。
が、彼は拒否し続けた。
「赤黒(縞:1stジャージ)を着るためにラグビーやってんです」

監督はキレた。
「選手のままでいい。だが覚えておけ、
お前はぜったいにいいプレイヤーにはなれたい」

もちろん、いっていいセリフではない。
とくに、130人の部員で130番目の選手が頑張らないチームは強くなれない、
が持論の清宮監督としては。

2軍や3軍どころではなく、8軍9軍の実力。
であるならば、マネジメントの力でチームに貢献するのが
その部員の役割だろ。
みんながその役割を求めているのを知っていながら、
自分の願望を押し通す。
役割を果たせない、責任感のない、絆をぶち切る、チームへのロイヤリティのない、
そんなやつはいらない。

一方で監督は、いってはいけないこと、
面罵してしまったことは後悔していた。

下手は下手なりに努力した。
最後の学年になって、
赤黒がかすかに見えるところまで、力をつけた。
1軍の選手たちに、捨て身のプレーを見せ続けた。
満身創痍での奮闘にチームは奮い立ち、
大学日本一のチームになった。
優勝インタビューで主将は、彼の名をあげて褒め称えた。

お別れの会で、その選手はみんなの前で語った。
「監督、最後まで謝ってくれなくてありがとうございました。
おかげでずっと、『いまにみていろキヨミヤ!』でやってこれました」

監督はこのエピソードを話し終え、
「それが彼の使命だったんだ、とそのとき気がついた」

ひるがえって、わたしの体験。
大隈塾では、ゲスト講師が話してくれた内容を、
より深く理解して身につけるために、
ゲスト講師が帰ったあとも、グループワークで学び続ける。

グループワークを設定する担当のアシスタントは、
ゴールデンウィークをはさんだこともあり、
なかなか準備を進めてこなかった。
役割を果たしていなかった。

本番まであと1週間、となったときのミーティングで、
わたしはワークプランを提示した。
アシスタント4人全員がよく知ってるワークだ。

アシスタントは拒否した。
めずらしく、激しく拒否した。
「むらさんのプランでは、ノブレス・オブリージュにもチームビルドにもならない」
確かに、変化球といえば変化球を投げかけてはいた。
それはわたしもわかっている。
だけどもう、時間がない。

拒否したアシスタントに代案はなかった。
たったいま思いついたプランを、
プランにもならない思いつきを、
説明にならない説明で、かぶせてきた。

見かねた別のアシスタントが、
別の授業でやったことがあるワークを
うろ覚えのまま提案した。

のこり2人のアシスタントは、わたしのプランに賛成していた。
数的有利でもあり、すでに何度かやっているのがわたしのプラン。
それを拠り所にして、反対アシスタント2名を説得したが、
2人とも固辞した。
「ぜったいにむらさんのプランじゃない」

むらさんはキレた。
「好きにしろ!3日後に、リハーサルをできるようにしておけ」

結果、清宮さんの講義のあとのグループワークは大成功だった。
アシスタント2人は、文献をあさり、アドバイスを求め、
のこり2人のアシスタントももちろんサポートし、
そして彼らの協力の求めに応じてくれた受講生たちのおかげで、
参加者全員が熱くなれる、楽しめる、笑いが途絶えない
気づきと学びの多いワークになった。

わたし、いつ謝ろうかな〜と思っている。