市民には老母への仕送りにも課税するのに政治家にはまたお目こぼしか

忘れられないひと言がある。

20年以上前のこと。
目黒税務署から署員がやってきて、
じっくり調べられたことがある。

爽やかな感じの税吏で、
ものごし低くワキ甘く、いい感じの人だった。

けど、仕事はきちんとしていた。

そんなにじっくり調べることがあるのか、
と思えるぐらい、いちいち領収書と帳簿をチェックしていた。
フリーランスだが、それなりの収入があるにせよ、
入ったからにはなにかミスを見つけて針小棒大に解釈し、
「お土産」として追徴課税していかなければいけないにしても、
たった一人のフリーランスのそれより、
売上がわたしの10倍20倍の億単位の会社なんで、
目黒税務署管内にはヤマほどあるんじゃないか、と、
税務署は実はヒマしてるんじゃないか、と疑うぐらい。

その税吏がわたしにいったことが忘れられない。
「毎月、この方に○万円送金してますね」
「母です」
「どちらにお住まいですか?」
「長崎です」
「おいくつですか?」
「昭和16年生まれですから……」

「贈与税、に当てはまるかも」
「親への仕送りにですか?」
「領収書、ありますか?」

親孝行にも税金を取るぞ、
いやならその親に領収書毎回書かせろ。

腹が立って仕方がなかったが、
ベテランの先輩たちからは、
「それが税吏だ」と教えられた。

いま、わたしの会社の経理担当が、
領収書がひと月分見当たらないと右往左往している。
たかだか数十枚、数十万円ぐらいの領収書でも、
「自分の責任ですから」
と真っ青になったり真っ赤になったり、ジタバタしている。

岸田文雄総理が2021年の選挙で、
270枚添付した領収書のうち、
98枚はただし書きが書いてなく、
141枚が宛名がない領収書だったと。

安倍晋三内閣以来、国会議員が領収書をなくしても、
なんの咎めもなかったことが続いている。

どうせその程度だったら、
領収書なんてなくしてほしい。
不正であることがわかっているのに、
見過ごさなくてないけないのは、
税務署にとっても辛いだろう。

市民には老母への些細な仕送りにも課税してくるのに、
政治家ならばなにをやってもお目こぼし。
そう思われては、
いくらなんでも真面目に仕事をしていられないだろう。

永田町がいちばん苦手なのはデジタルだ。
すべてデジタルな取引にして、
証拠がきちんとクラウドに残るようにしてほしい。
みんなが調べられるようにしてほしい。