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リスクマネージメントとしての「分人」

3回目の「分人」ネタで恐縮ながら。

就活生が嘆くこと甚だしい。
つまりこう。

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「分人」という考え方に非常に共感するとともに、この考え方がもっと世の中に広まって欲しいと強く感じました。
つい先日まで就活をやっていた私にとって、思ったこと。
社会人(面接官)は私の本当のひとつの姿を見せるよう求めてきます。
「自分」はひとつの面だけではないのに、就活では1人の自分をしっかり持っている人が評価される。そんな就活に違和感を感じました。
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この授業を受ける直前まで、就活サービスでメンターの方にいわゆる「ガクチカ」(学生時代に力を入れていたこと)つくりをお手伝いしていただいた。
自己分析をして、原体験から一貫した将来像を求められる息苦しさを、どうにか受け入れるべく試行錯誤していたあとに「分人」のお話を聞いたことは、一方で救いであると同時に、他方では「でも現実、就活市場では分人なんて考え認められてないじゃん」という救いのなさも突きつけられたようでもあった。
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彼ら彼女たちが就活しているのは、
丸の内や大手町にある一流どころの会社だ。

「夢を持て!」がユメハラといわれるように、
「自分の軸を持て」もジクハラなんだろうか。


世の中、経済成長という「大きな物語」があったとき、唯一の正解があったとき、
つまり世の中がどこへ向かっているのか見えているときは、
自分の「軸」はひとつでもよかった。

でも、経済の成長が止まり、
新コロのような突然の理不尽、不確実なこともあり、
世の中どっち方向にいくかわからないときには、
自分の軸がひとつだけ、
というのは逆に危ない。

突然、その軸が外されたとき、
いったいどうすればいいのか。

もうひとつ。メンタルな面でも、「ひとつの自分軸」は危険だ。

「分人」ってホントに便利で、
好きな自分にフォーカスして、いまいちな自分はスルーする。
もちろん100%正しい考え方ではないけど、
ポジティブシンキングの強烈なひとつではある。

とくに、弱ったとき、困ったときに、
その原因をつくった「分人」を責める。
その分人が自分のすべてであるかのように。

ところが、平野啓一郎さんの「分人」では、
そんな「分人」はひとまずおいておいて、
そうじゃない、好きな分人にフォーカスする。
「なんだ、いままでの自分でもいいんじゃん!」。

分人はポジティブシンキングでもあり、
リスクマネジメントでもある。


小説家平野啓一郎
https://note.com/mura660527/n/n96cb0f3f2e57
プラスの自分だけで十分だ
https://note.com/mura660527/n/n5e67eda6d944