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「占いはなぜ当たるのですか?」ほか7選 /ムー民のためのブックガイド

「ムー」本誌の隠れ人気記事、ブックインフォメーションをウェブで公開。編集部が選定した新刊書籍情報をお届けします。

文=星野太朗

占いはなぜ当たるのですか/鏡リュウジ 著

全編にわたって「占い愛」が汪溢する必読の書

 今や押しも押されもせぬ日本占星術界の重鎮・鏡リュウジ氏。占いに心理学的アプローチを導入し、従来の占い観を一新したその業績は、本誌の読者ならだれしもご存じだろう。
それもそのはず、氏は占いの研究家であると同時に、国際基督教大学大学院でユング心理学を専攻した本物の心理学者であり、いくつかの大学の客員教授も務める学究派なのだ。
 本書は、そんな鏡氏が若かりしころ、すなわち1999年に上梓した書物の復刻版である。同書は2002年にも一度文庫化されているから、何と今回3度目の登場ということになる。その事実だけで、本書が必読の名著であることはすでに証明されているといえよう。
 ともかく全編にわたって鏡氏の「占い愛」が汪溢。みずみずしく清新な文体で、占星術の歴史や仕組みから、占星術と科学の関係、ユング心理学で解釈する占星術、などといったテーマが縷々語られる。
 そしてファンにとって何とも嬉しいのは、時折差し挟まれる少年時代、青年時代の鏡氏の自伝的エピソードである。とくに、幼少時代の氏が「当時、日本で出版されていた占星術関連書のほとんどすべて」を揃えていたという逸話には舌を巻く。文字通り「栴檀(せんだん)は二葉より芳(かんば)し」を地でいく才人ぶりである。
 しかし何といっても本書の白眉は、「神々との語らいとしての占星術」と題された第4章である。ここでいよいよ、標題である「占いはなぜ当たる」のか、という問いに対する答えが提供されるのだが、その答えがまた、「占い師」と「懐疑主義者」の狭間で長年にわたり、徹底した考察と研究を重ねた鏡氏にしか到達し得ぬ深遠なもの。たんに占い云々に留まらず、人間の、そして今の自分の生きる意味にまで光を当てる、衝撃的にして静謐(せいひつ)な洞察である。
 旧版に対して、新たに随所に脚註が加えられ、参考文献の参照も容易になっているのも魅力のひとつ。また、旧版以後の著者の業績も一覧化されており、これまた便利この上ない。
 全部で500ページ近い大部の著作だが、活字が比較的大きいことと、リズム感とユーモアに溢れた氏の巧みな文章により、意外にもすらすらと読めてしまうのもまた魅力だ。
 本誌「ムー」の読者でありながら、今の今まで本書を読んでいなかったという不届きな人(評者含む)は、この度の復刊を人生最大の僥倖として真摯に受け止め、ともかく買い求めるべし。絶対に損はしない。


0フォース 人類最大の発見 縄文秘力/千賀一生 著

ファンタジーの形式を借りた現代の奇書

 本欄でご紹介する書籍は、どれほど荒唐無稽なものであったとしても、基本的にはすべてノンフィクションである。そういうポリシーなのだと思っていたが、ときには例外も発生する。本書がその珍しい事例で、「この物語は、ファンタジーです」とはっきり謳われている。だが同時に「しかし、この中から、読者ご自身の信実を一つでも見いだしていただけたら幸いです」とも記されている。ファンタジーの形式を借りて、何らかの信実を伝えようとする書なのだ。
 2012年、冬。主人公である「私」は、場所を明かせぬ、とある縄文の遺跡で、別の時空に転移する。それは今から1万年ほど前の、縄文の集落であった。しかもその文明は、その時代からさらに2万5800年前、すなわち今から3万6200年前から連綿と続いているというのだ。
 この転移体験を何度も重ねるうちに「私」は縄文文明の本質と、その奥深い秘密を真摯に学んでゆくことになる。そもそも縄文とは、1万年以上にわたって戦乱とは無縁の完全調和社会が築かれていたという人類史上稀に見る文明である。その文明の根底には、とある未知なるフォースが息づいていた――。
 研ぎ澄まされた文体は不思議な緊迫感を湛え、読者は知らず知らずのうちにその独自の世界観にぐいぐいと惹き込まれる。気がつけば、主人公である「私」と一体化し、そのフォースを体感していることだろう。正真正銘、現代の奇書である。


古事記の神々 付古事記神名辞典/三浦佑之 著

『古事記』の神々を分析し直そうとする野心的な試み

 日本最古の歴史書である『古事記』は、後世『日本書紀』と併せて「記紀」と併称されるようになった。そのため、一般にこの両書は互いに補完し合うものと考えられがちだが、さにあらず。著者は、そのように両書を融合させようとする「従来の研究には根本的な誤りがあった」とし、『古事記』の成立過程を説明する「序」を「後世の偽作であるとみなす」。現に『古事記』において相当部分を占める「出雲神話」は、『日本書紀』においては意図的に排除されている。いい換えれば『古事記』には、大和朝廷成立以前の日本列島の古層の神話が残存しているのだ。
 本書は、そのような従来とは異なる視点に立脚し、『古事記』の神々を分析し直そうとする野心的な試みである。著者である三浦佑之氏は古代文学、伝承文学研究を専門とする斯界の権威。数々の大学の教授職を歴任し、現在は千葉大学名誉教授。そんな権威者が、『古事記』に関する従来の研究を覆す革命的な視点を提唱しているのである。面白くないわけがないではないか。
 実は本書は、2016年に上梓された『古事記・再発見。』の増補改訂版である。新たに3本の論文が追加されているほか、巻末に付録として「古事記神名辞典」が収録されている。この付録が、『古事記』に登場するすべての神を網羅した凄まじい労作。このような辞典はありそうで実はなかなかないものだけに、この部分だけでも必携の書物である。


コロナと胎内記憶とみつばち/船橋康貴・池川明 著

福音ともいうべき前向きなメッセージが満載

 本書の著者のひとりである船橋康貴氏(ハニーさん)は養蜂家であり、「人間都合で考えない、みつばち目線の生き方を提案する環境教育」に邁進する人物。もうひとりの著者である池川明氏(明ちゃん)は産婦人科医で、「胎内記憶」の第一人者である。
「胎内記憶」とは子供がまだ母体内にいたときの記憶のことだが、受胎以前の記憶も含まれるらしい。さらに昨今では、何と生まれる前に「宇宙にいた」ときの記憶をもつ子供が増えているというから驚く。
 本書は、このハニーさんと明ちゃんのふたりが、それぞれの専門であるみつばちや胎内記憶、さらには新型コロナ禍について語り明かしたZoom対談の記録である。
 話題は多岐に及んでいるが、一貫しているのは、現在の地球が宇宙的な変革期にあるということ。「宇宙から来た」子供たちが増えているのも、この変革期を選んで生まれてきているかららしい。そして明ちゃんによれば「その子たちが大きくなるときには、宇宙人とのコンタクトは普通にできている」。非常識と常識がひっくり返る時代がもうすぐそこまで来ているのだが、今回のコロナ禍はそのための「一度お試し」の「練習期間」であるというのである。
 とくに今回のコロナ禍でいいしれぬ不安を抱えている多くの人にとっては、福音ともいうべき前向きなメッセージが満載された、魅力的な本。「世界74億人を幸せにする」という愛らしいステッカーつき。


古事記と聖書/畠田秀生 著

小説という体裁で解き明かす「古事記と聖書」

 その昔、高木彬光の『邪馬台国の秘密』という推理小説がベストセラーとなったことがあった。神津恭介なる名探偵が、その卓越した推理力で「魏志倭人伝」を読み解き、邪馬台国の真の位置を突き止めるという筋立てであった。
 そんなことを思い出したのは、まさしく本書が、小説という体裁で「古事記と聖書」の驚くべき関係を解き明かした書物だからだ。主人公である鈴木幸太郎はキリスト教の信仰篤き若手会社員。彼と恋人の青木順子が、取引先の営業マンである佐伯、聖書研究会を主宰する敷島というふたりの「師」から『新旧約聖書』と『古事記』に関するレクチャーを受け、古代イスラエルと日本の真実に開眼する、という筋書きである。開示される内容によれば、国生みの神伊(いざなぎ)邪那岐はイザヤ・ナギ、すなわち「統治者イザヤ」の意味であり、日本の建国は西方からやってきた古代イスラエル人によって成された。また、天あま照てらす大おお神かみは実は男神であり、その「岩戸隠れ」はイエス・キリストの死と復活に対応している。つまりイエス・キリストこそ、日本の真の皇祖神であるというのだ。
 著者・畠田秀生氏は「聖書と日本フォーラム」という研究会を主宰する牧師で、著書も多数。
 神であるキリストへの信仰と、神国である日本への愛国心。その両者を見事に両立・融合させた本書は、信仰の有無にかかわらず、まさしく全日本人必読の書といえよう。


増補 聖別された肉体 オカルト人種論とナチズム/横山茂雄 著

原点にして頂点、基本にして至高んる真の名著

『聖別された肉体』という書名を聞いてピンとくる方は、本誌の読者のなかでもかなりの古参とお見受けする。というのも本書は1990年、すなわち今から30年も前に「書肆風(しょしふう)の薔薇」という瀟洒な社名の出版社から上梓された同名の書籍の復刻版なのだ。旧版は評者も座右の書として愛読していたが、正直、今回の増補復刻版の登場には目も眩むほど感動している。かの井村宏次氏は本書を「可能な限りに、英・独の文献を探索参照し、オカルト人種論とナチズムに関する詳細な論考を行った稀有の書である。本書を抜きにしてナチスとオカルトは語れない。是非参照願いたい」と激賞している。それほどの必読書なのだが、現在では都内の図書館にもほとんど蔵書がないという惨状。だからこそ、今回の復刻はまさに令和の読書界における最大の事件である。優れて学術的でありながら、一度読みはじめると止められない魔性のような筆力が冴え渡る、まさに原点にして頂点、基本にして至高なる真の名著。この分野における先駆的な文献とされるポゥエル&ベルジェの『魔術師の朝』などまったく歯牙にもかけぬ学問水準を誇る本書が、すでに30年も前にこの日本で出版されていたことに改めて驚嘆する。オカルティズムとナチズムに少しでも関心をもつ人なら、何を措いても入手し熟読すべき必携書。本書の復刻を企画された創元社編集長の畏るべき慧眼にも深甚なる敬意と感謝を表する次第である。


天使と人の文化史/ピーター・スタンフォード 著

天使に関する一通りの知識・情報を網羅

 天使とは何か。それを知りたければ、本書を読めばよい。ユダヤ教とキリスト教の聖書から聖書外典、イスラム教の天使まで、中世の天使学からダンテの神曲、ルネサンス、啓蒙時代を経て現代の天使まで、およそ天使に関する一通りの知識・情報はすべて本書に網羅されている。
 著者ピーター・スタンフォードは英国の編集者兼ジャーナリストで、宗教や倫理に関する著作が多い。今から20年ほど前に、同じ著者による『悪魔の履歴書』と題する書籍が本書と同じ原書房から邦訳出版されていたので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれない。同書は標題の通り、悪魔に関する概説書であるが、大方のテイストは本書と似通っている。内容的にも分量的にも、本書はまさしく同書の「天使版」であると考えていただければよいだろう。
 近年の調査によれば、いわゆる従来の宗教の人気はここのところ下落の一方を辿っているが、これに対して「天使への信仰はうなぎ上り」であるという。英国人の何と10人にひとりが実際に天使の存在を体験しており、3人にひとりが守護天使を信じているというのだ。つまり「ある意味、天使は神よりも健闘している」。このような時代にあって、天使に関する正しく体系的な知識を得ることのできる書物は必須。その点、体裁こそ一見硬派だが、とくに専門的すぎたり難解すぎるところのない本書は、万人にお奨めできる好個の天使入門書である。


(月刊ムー2020年11月号掲載)

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