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船橋にアマビエが出現していた!? 「白い三角」怪談による予言獣との遭遇/吉田悠軌・怪談解題

ダイヤモンド・プリンセス号はアマビエだった!
ーー衝撃の新発見の裏には、探偵がコロナ騒動のさなかに聞き取った、海辺での奇妙な体験談の存在があった。「海からやってくる異形」とパンデミックを結ぶ鎖に、オカルト探偵・吉田自身も絡めとられていたーー!

アマビエ自撮りb

吉田悠軌(よしだゆうき)/怪談サークル「とうもろこしの会」会長、『怪処』編集長。『恐怖実話 怪の残響』(竹書房)、『 怖いうわさ ぼくらの都市伝説』シリーズ(教育画劇)のほか選定・監修した『ムー実話怪談「恐」選集』(学研)『、禁足地帯の歩き方』(学研)など著書多数。今月の一枚は感染症対策での自宅待機中、自作のアマビエとツーショット。

怪談 夜釣りの浜辺で

 2018年5月、浩さんは千葉の海へと夜釣りに向かった。
「最初は稲毛の海岸にいくつもりでしたが、現地に着いてみたら、盛大なお祭りが開催されてまして。これじゃあ釣りなんかできないなあ、と」
 かわりになる場所を捜しつつ、たどりついたのは船橋の湾岸。埋め立て地の大きな海浜公園で、浩さんも初めて訪れる場所だった。
 バイクを停め、あらかじめスマホで調べておいたポイントへと歩いていく。ここは干潟がずうっと続いているため、突堤を進まないと竿を投げられるポイントがないそうだ。 

 原稿を書くにあたり、私もその海岸を訪れてみた。
 確かに、海岸の西端から細長いコンクリート道が海上にせり出している。幅は2メートル強、長さは300メートルほど。この新型コロナ騒動にもかかわらず、というよりそのせいで学校が休みだからか、多くの子どもや家族連れが釣り糸を垂らしていた。

「その先っぽに陣取ろうとしたんですが、歩いていくうち、すでに先客がいたのがわかったんですね」
 真っ暗な突堤の先で、小さな明かりがいくつか揺れている。釣りグループ数人がつけているヘッドライトだろう。それなら仕方ない。こちらは突堤の途中に陣取ることにした。狙いはクロダイかシーバス(スズキ)、ルアーではなく置き竿である。
 とはいえ場所が悪いのか、いっこうにアタリがこない。魚がいる気配も感じられない。やはり先っぽのほうにいきたいな……と思っているうち、突堤の先端にいたグループが、帰り支度をして戻ってきた。そこで彼らは浩さんに、こんな質問をぶつけてきたのだ。

「え? これからやるの?」
 その声も顔も、なにやら驚いた様子である。
「はい……今日はぜんぜん釣れないですか?」
「いや、釣れないとかじゃなくて……」
 彼らは互いに目配せしつつ、「なあ?」「まあね……」と苦笑している。その仕草が気になったが、こちらが言葉を繋ぐ前に、早々と去っていってしまった。

 ……まあいい、もう少ししたら先端の方へ移動してみよう。
 なにげなく浜辺に目をやってみる。潮干狩りを行うような、浅く黒々とした浜辺である。
 そこを、白いワンピースを着た女がひとり、歩いていた。
 こんな夜中になにやってるんだろうな……と、また竿に視線を戻す。

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