秘密結社からみた台湾問題の真相/北一策
今、台湾海峡は一触即発の危機を迎えている。いずれ中国は侵攻を開始するのだろうか? ところが、この問題の背景を探っていくと中台関係の秘められた側面が浮かび上がってくる。蒋介石と毛沢東の間に交わされた謎の密約、要人をつなぐ知られざる客家人脈、陰で暗躍しつづける秘密結社・青幇……現代世界の行方を左右するチャイナ・ミステリーに迫る‼
◉陰謀の国際情勢◉ 文=北 一策
蒋介石と毛沢東の知られざる「密約」
台湾海峡が火を噴きそうだ。東シナ海の争乱は沖縄にも危険が及ぶ。東アジアが緊張するなか、昨年11月には米ミサイル艦が台湾海峡を通過。中国は
これを挑発行為と非難したが、昨年には米国だけでなく、英、仏、豪の軍艦が台湾海峡を通り抜けている。対抗するかのように、年末に中国軍は海ハイ南ナン島近辺で「台湾上陸作戦」を思わせる大規模な軍事演習を行った。
昨春まで米軍のインド太平洋軍司令官だったP・デーヴィッドソンは「中国軍は2027年までには台湾に侵攻する」という。2027年は中国人民解放軍創設100周年にあたるうえ、習近平国家主席の3期目の最後の年となるからだ。
後任のJ・アキリーノ司令官は「開戦時期はもっと近い」と警告。「第14次5か年計画の最終年となる2025年までに中国軍は台湾を占領する」というのだ。
中国軍の台湾侵攻はないとの観測もある。昨秋の共産党大会で「歴史決議」が採択され、習近平は毛沢東、鄧小平と並ぶ「終身皇帝」の座を手に入れた。こうなると習近平にとっては国内安定が重要で、カネにもならない戦争をはじめることはないというのだ。
中国は台湾に侵攻するのかしないのか。さまざまな情報が乱れ飛ぶ。表に出る情報からでは中国と台湾の本当の関係を理解できない。両者の間には深い闇が眠っている。その闇を知っているのは、「終身皇帝」の座にたどり着いた毛沢東と鄧小平だけなのかもしれない。
中国を建国した英雄とも、史上最大の虐殺者ともいわれる毛沢東は、共産党軍を率いて蒋介石の国民党軍と長期間の戦争を戦い抜いた。1927年から1949年までの国共内戦である(途中9年間は日本軍を相手に両軍が合流)。この間に両軍合わせて200万人以上の戦死者を出している。
1949年10月1日に毛沢東が中華人民共和国の建国を宣言した。この時点では中国全土の3分の1は蒋介石(国民党軍)の支配下にあった。その後、共産党軍は国民党軍を追い詰め、殲滅。蒋介石は首府・重慶を捨てて成都に逃げ込み、11月には台湾撤退を決定した。蒋介石が重慶から逃げ出した。直後に、毛沢東は廬山にある「美廬別荘」を訪れている。
美廬別荘とは中国中部の廬山にある華麗な別荘。ユネスコ世界遺産にも登録されている景勝地で、19世紀には英米仏露など20か国以上の大金持ちたちが競って別荘を建てた。現在も500棟ほどが残されている。美廬別荘もそのひとつで、1903年に英国人が建て、のちに宋美齢に贈呈された。宋美齢とは蒋介石夫人で、蒋介石はこの別荘が気に入り愛用していた。蒋介石を重慶から追い払い、共産党軍の勝利が決定的となったとき、毛沢東は美廬別荘を訪れ、ひとり蒋介石の個室に閉じこもり、蒋介石愛用の椅子に座って長時間本を読んだという。勝利に酔いしれたのではない。蒋介石の思い出に浸っていたのだ。毛沢東にとって6歳年上の蒋介石は最大の敵であり、友であり、畏敬すべき先輩だった。毛沢東は蒋介石を憎み、愛し、尊敬していた。
中国と台湾の関係を読み解くには、蒋介石と毛沢東の奇妙な関係を理解する必要がある。「蒋毛密約」と呼ばれるものだ。
「西安事件」のウラに青幇が存在した
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