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トイレに逃げ込むできそこない

 新卒で入社したとある企業をうつ病(のちに双極性障害と診断)の発症により半年で退社したあと、ふたつくらいアルバイトをした。
 その中で双極性障害を(のちにASDも発覚)患いながら労働をするということがどんなに困難でうまくいかないことかを痛感した。ああ、わたしは普通ではないんだと感じないことがなかった。

 退社して1ヶ月後にラブホテルの清掃員として働くことになった。家にいる時間が長いと病んでしまうと思い働くことにしたのだ。
 清掃員として入社したため朝の9時から夕方の5時までひたすら部屋を掃除していた。二人一組で掃除をしていくため当然ながら雑談はある。さらに休憩は皆で同じ机を囲みながらだったため、わたしは雑談から逃げるためにずっと読書をしていた。自らが人間関係を築くのが下手でそれが原因で心を病むことはわかっていたので、できる限り人間関係を築かないようにしようと決めていたからだった。
 しかし、人員不足だった職場でわたしはフロント業務も任されることになった。これが厄介だった。
 わたしの勤めていたラブホテルのフロント業務は、お客さま対応はもちろん厨房業務もあったため調理から提供までしなくてはならなかった。ここでパニックになった。業務だけならまだしもフロント業務の人はおしゃべりが大好きな人が多かったので、必然とわたしはその中に放り込まれた。
 ここでマルチタスクのできなさに失望し、雑談で空気の読めなさに絶望、期待に応えなくてはというプレッシャーにやられて1ヶ月も持たずに退社した。
 その後2ヶ月ほど何もできずに引きこもりをきめこんだ。

 さて、そろそろ働けそうだと思ったわたしは某カフェのアルバイトに応募した。ここでは学生時代から働いてみたいと思っていたので採用された当時はとても嬉しかった。
 しかし、いざ実際に働いてみるとわたし以外の皆さんがとてもキラキラしていて、楽しそうでマルチタスクを難なくこなし、さらにはルックスも綺麗だということで自分自身に劣等感を感じ始めた。
 わたしより年下の人が多い職場で自分の仕事のできなさに周りが辟易としているだろうなということが、結構伝わってきてしんどさは増していった。ここでわたしは精神崩壊した。
 わたしはうつのときに過食をしてしまう傾向がある。このときはとても酷かった。家に帰る道中で過食のための食材を買い、家に帰ると食べ漁る。そして死にたくなって下剤を多量摂取するのだ。夜中に何度も腹痛で目が覚める。さらには出勤中にも腹痛に苛まれるので何度もトイレに逃げるのだ。
 下剤を飲んでいるとはいえ体重は増えるのでパンツのウエストはきついし、顔はむくむしでトイレの鏡に映る自分がとても醜く見える。周りの人はあんなに可愛くて綺麗なのに自分はどうしてそうじゃないんだろうと思う。そして自分の顔を頭を殴るのだ。
 この癖が治らなくて、トイレに行くたびに自分のことを殴りまくった。無能で無力で不細工な自分を消したかった。
 これが職場だけではなく家にいるときにもするようになった。職場での失敗を思い出しては自分を殴る。殴ると少しスッキリする。殴り過ぎて頭痛が酷かったときもあった。けれど、やめられなかった。
 そして殴ることに飽きたらずリストカットをし始めてしまった。ここでわたしは流石に大変なことになっていると思い精神科医に助けを求め、アルバイトを辞めることになった。

 この経験があるから、自分が精神崩壊したときのことを考えるのがこわい。また同じようなことになるのではないかと思うしもっとひどくなったら収拾が付かなくなる。
 精神疾患を抱えながら労働をしている人はたくさんいて本当に尊敬する。わたしにはできないんじゃないかとしか思えない。過去のことを思い出すたび死にたくなってしまう。わたしにはできるんだろうか。できる場所があるんだろうか。

 死にたくならない場所で生きたい。

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