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なぜフィンランドは ”世界一幸せな国” なのか、1年半暮らしたわたしが考えてみた

フィンランドって、日本ではムーミンとか、サウナとか、教育制度とか、それから "世界一幸せな国" 切り口で紹介されていることが多いと思います。でも、世界一幸せって言っても、「それって具体的にどういうこと?」「幸せなんて計れないしどういう基準なの?」って思いますよね、わたしも思います。でも一応、これはでっち上げとか単なるイメージではなくて、国連が毎年正式に発表している World Happiness Report (2020版はこちら) の調査に基づいたものです。2020年の調査が最近発表されましたが、フィンランドは1位をキープしました(3年連続)。World Happiness Report に関しては、wikipediaとかみたらわかりやすく書いてありますが、

- 人口あたりGDP(対数)
- 社会的支援
- 健康寿命
- 人生の選択の自由度
- 寛容さ・気前の良さ
- 腐敗の認識

の6つのカテゴリーのスコア(0-10)で順位が決まるそうです。つまり、フィンランドはいちばんいいスコアをとったわけです。

でも数値じゃなくて、実際幸せって感じるのか?なんでフィンランドは幸せな国なのか、わたしが思った、感じたことを書いていきます。

自然との距離の近さ

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これはわたしに限らず、フィンランドに来たことがある人や、住んでいる人の多くが感じていることだと思います。
でも、実はフィンランドの森林面積の割合って日本とあまり変わらないんですよね。それなのにこの感じ方のちがいはなんなんだろう......。わたしが思うのは、まず地形的な問題。全然専門とかじゃないので感覚的な話ですが、日本の森って、基本山が多いですよね、ほぼ「森=山」みたいな。でもフィンランドって本当に高い山が少なくて、ほとんど森も平ら。だから住宅街とかも普通に森の近くにあるし、みんな日常的にお散歩で森に行けて、自然を身近に感じられるのかなと思います。
もうひとつはサマーコテージと自然享受権 (jokamiehen oikeudet) の存在。フィンランドでは家族などでサマーコテージを所有していることが多く、特に夏の間は都市部の家と自然の中にあるコテージを行き来する文化があります。サマーコテージを所有していない人も、友人や家族とコテージを借りて週末を過ごしたりします。自然享受権は、個人の所有でない森や沼地などを自由に散策できる権利です。もちろんベリー摘みやきのこ狩りなどもできます。たまに保護地域だったりするので少し注意が必要になります(それでもだいたい散策はできますが)。
わたしは今のところ、こんな感じの理由で自然の身近さ、ありがたさを感じています。
ちなみにわたしのお気に入りの森は "Katariinanlaakson luonnonsuojelualue"。トゥルクにあります。保護森林なので勝手に草花や実を摘んだりはできませんが、ほぼ100%の確率でリスに遭遇できます。餌づけもできます!笑

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「世間体」の存在感の薄さと人生の選択肢

わたしは日本で生まれ育って、フィンランドにはまだ合わせて2年と少しくらいしか住んでいないので、正確には比較できないのですが、フィンランドでは「世間体」というものの存在が日本に比べてとても薄いなと感じます。もちろん文化の違いもあると思いますが、『こういう属性の人たちはこうあるべきだ』というプレッシャーは少ないです。そのため、「もう20代後半なのにまだ就職したことがないのはおかしいだろうか」とか「キャリアアップしたいので学校に行き直したいが40過ぎて学生は変だと思われるだろうか」みたいな心配はあまりしなくていいと感じます。さらに、フィンランドにはこういう自由な選択をするための経済的なサポートもあります。多くの方が知っているとおり、フィンランド人(EUの人も)は教育費は基本無料で、大学も学費は無料です。それに加えて、例えば大学生でひとり暮らしをしている人には家賃補助(asumistuki)が出たり、一定期間 opintotuki と呼ばれる学生補助が毎月もらえたりします。
「世間体」というものがほとんど存在せず、新しいことに挑戦するための経済的な障壁が低いため、自分の人生の決定権をしっかり自分が握っている感じがします。誰にどう思われるかあまり気にせず、お金のことで諦めたりすることもあまりなく、自分のやりたいことができる気がします。そしてそれは幸せに生きるためにけっこう大切なことじゃないかなと思います。

自由な時間と自由な働き方

これは割と有名だと思いますが、フィンランドは日本みたいな長時間労働は基本ないです。もちろん残業が全くないなんてことはないです。わたしも夫もまだ働いていないので詳しいことはわかりませんが、たとえば夫の友人は忙しい時期は20時とかあるいはもっと遅くまで残業することも少なくないと聞きました。でも、(シフト制ではない仕事だと)16時とか17時に終わるところが多いです。特別なことがなければ始業時間も自由だったり、木曜日にちょっと長く働いて金曜日早めに上がるとかできるところもあったり。コロナ前からもリモートで仕事している人も日本よりたくさんいました。そして、日本に比べて職場の近くに住んでいる人が多いので、通勤にかける時間も少なく、夏休みは3-4週間とか取るのが普通です。そもそも労働時間が長くなくて(日本が長すぎるだけ?)休みがしっかり取れるのはもちろん、働き方も柔軟性が高いと感じます。
そうすると、自分の自由な時間がある程度確保できて、趣味をして過ごしたり、家族との時間を作ったり、ただただリラックスしたりできます。例えば義父は、コロナ前から週の半分以上はリモートで仕事をしていて、たいていは16時に仕事が終わり、そのあとは自由に過ごしています。夏休みは友人と趣味の狩りや釣りに北に行ったり、家族でサマーコテージで過ごしたり、義母と南の国に旅行に行ったりしています。しっかり自由な時間が確保できるとストレスも減りそうだし、幸せだなと感じることが多くなるのかなと思います。

少ない娯楽と食べ物問題

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フィンランド、娯楽、まじですくな......。東京から移住してくると特に感じますこれ。東京にいた頃は行きたい場所やイベントやお店やカフェが常にあって、新宿に行ったらルミネでウィンドウショッピングして友達とランチでおしゃれなご飯食べて、居酒屋はいつも美味しくてリーズナブル。バイト中のランチはコンビニで安いけど美味しいご飯で、バイト終わりはスタバで期間限定のフラペチーノ買って飲みながら帰る。みたいな生活を普通にしてると、ご飯は安くてそれなりに美味しいのは当たり前だし、ちょっと値が張るところに外食行ったらもちろんサービスしっかりしてて美味しくておしゃれ。次から次に新しいカフェや商品が出てきて飽きないのも当たり前。こうやって幸せを感じるハードルは上がっていくんだなと今思います。フィンランド、外食は基本高い、もちろん美味しいところもあるけどかなり値が張るのは覚悟、出かける場所といえばカフェかミュージアム、買い物はいつものモールとアジアンショップ。こうしてるとたまの外食とか、日本食とかで幸せになれます。最近、ハーゲンダッツを買って食べたら最高に幸せになれたし、太陽が見えたら普通に幸せです。日本、恵まれすぎ説。

大富豪と大貧民の不在

これはヘルシンキ大学のフィンランド人の先生が授業中にちょこっと話してた話なのですが、なんとなく納得したのと、わたしがここで書いたこととも繋がっている気がしたのでシェアします。
彼女いわく、フィンランドの幸福度が高いのは「お金持ちと貧しい人の差が少ないから」だそうです。貧しい人にも福祉によって最低限の生活が保証されていて、教育の機会もほとんど平等なので、貧しい人がすごく辛い思いをしづらいのはもちろん、お金持ちの人も「お金持ち」でいることに罪悪感を抱かずにいられるので、より幸福度が高くなる、という考えでした。彼女は、貧富の差が激しいと、お金持ちの人は心のどこかで貧しくて苦しんでいる人に対して罪悪感を抱いているのではと言っていました。

以上が今のところのわたしの感想です。制度などに関しては別にちゃんと調べてるわけじゃないので間違ってるかもしれません!

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