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むにみずべ 静岡編02 駿河湾フェリー

富士山を臨む、黄金のフェリー航路。何やら県道指定もされているこちら、知っていますか?


特技 金山再生の男

時は徳川家康が天下を獲った頃。
ホトトギスが鳴くまで待った粘り勝ちの天下人が、新たな政権を盤石にするのは、やはり、金でした。
一度荒廃していた伊豆の土肥金山に送り込まれたのは、大久保長安おおくぼながやす

金掘りすぎて山が割れた
佐渡金山も大久保

この大久保長安、当時日本最大の佐渡金山、世界の1/3の銀を算出した石見銀山をどちらも担当し、その産出量を爆上げしてきた、特技金山再生の男

そんな伝説の請負人が来たら、土肥金山もその沈黙を破らざるを得ません。大久保長安の就任と共に、ドバドバと金が産出されるようになりました。

この溢れ出てくる金を、今か今かと海の向こうで首を長くして待っている男、それが天下人、徳川家康です。


駿河湾を渡る黄金

駿河湾を渡った千石船
土肥金山HPより

60歳の還暦といえば、赤いちゃんちゃんこを貰う習慣がありますが、徳川家康が還暦(数え61歳)でもらったのは、従一位 征夷大将軍の地位でした。さすがの天下スケールです。
ところがわずか2年で息子の秀忠に譲り、自身は現在の静岡市に造った駿府城へ

そんなおり、目の前に広がる駿河湾の対岸、伊豆半島の土肥金山からはドバドバと金が出るようになりました。
大御所様が待っておられるのに、テクテク歩いて持っていく訳にはいきません。
土肥の港に並ぶ、葵の御紋の帆を張った千石船にせっせと積み込み、向かうは対岸の清水港です。

さて、この黄金が運び出された航路を辿ることができるのが、
今回のむにみずべ、駿河湾フェリーです。


いざ大御所様のもとへ

では乗って行きましょう。
こちらのフェリー、なんと徒歩での乗船の場合は予約不要です。ふと大御所様に会いに行きたくなったら乗れちゃいます。

海沿いのポテっとシンプルなハコが
ターミナル
ここでチケットを購入

今回はお盆に差し掛かる土日なので、渋滞を避けるべく、公共交通機関の乗り継ぎ旅行です。と言うわけでフラーッと乗れます

チケットを買って待っていると、岬の向こうに金色の船がやってきました。

近づいてきた
回転はじめー
目の前で大回転されて、
少しバルチック艦隊の気持ちにもなれます

何やら金色に塗られた船体。そしてGOLD LINEの文字。まさに土肥金山からかつて金を運び出していたことにあやかるカラーリングです。

というのも、この土肥金山と佐渡金山そして山梨と長野の金山を結ぶ
その名も黄金KAIDOなる観光ルートがあるそうで、その一角を担うこの駿河湾フェリーもいつしか黄金一色になったみたいです。


県道223号線

こちらのフェリー、全国で道路網が整備され、海峡を渡る橋が架けられ、年々赤字を抱えフェリー航路が廃止になる中、1日4往復。
今年2024年には、なんと全世界的な値上げ基調の中、値下げまでしてしまう元気な航路です。現在は2000円で乗れます

その堅調さを支えるのは、伊豆半島が、首都圏や中京圏から程よい近さで観光客が集中する割に道路が未発達で、慢性的な渋滞に悩まされていること。そうした渋滞を避けてワープできる駿河湾フェリーには、大きな需要があります。

そしてもう一つ、富士山を海から臨むフェリーであることです。あまりの堅調さに静岡県はこの航路を県道に指定。その番号も富士山にあやかり、223ふじさん号線に設定しました。洒落が効いています。

さて意気揚々とムニが行った日は、
真夏の太陽が照り付ける晴れた日だったものの、チケット売り場には、
「本日富士山は見えません」との文字が。
やはり富士山級のお山になると、下界の天気なんかとは別の次元で生きている訳です。

県道223号線の本領を見ることはできないのか、と少し残念に思いつつ、きらきら光る海原を撮影していると、岬の向こうに何やら意味深な影が見えてきました。

ん、あれ、あいつは…
ふ、
富士山だ! ドンッ!

見えませんと言いつつ見せちゃう、太っ腹なサプライズ
やはりあの末広がりな孤峰は、見えるとテンションを上げる効果があります。さすが世界文化遺産です

県道標識と撮っておきました

さて甲板を堪能した後は大人しく、船内へ。
まだこれだけでは終わりません


駿河湾を堪能する船内

駿河湾フェリーの船内を楽しむには段階があります。まだまだ初心者の皆様はまず、駿河湾ジェラートでしょう。

せっかくなので富士山を描きました
山麓に変な筋入っちゃったけど

日本で一番深い駿河湾の青い海を表現した塩風味のジェラートは、とても美味しいです。

さぁ中級のみなさんは、階段を登り特別室に行きましょう。500円払うだけで、コーヒーと豆菓子付きのVIPルームへご招待です。

入り口が金
Oh Gorgeous!
特等席 窓の外には

そしてこの特別席に来て初めて、船首ではためく、あの、葵の御紋を拝むことができます。
そう、この紋所が目に入る訳です。

でーん
でででーん

人生楽ありゃ苦もありますので、たまにはこのVIPルームでゆっくりするのも良いですね。

ちなみに上級者になると、貸切特別室なる、さらなる高みがあるようですが、片道12000円と通常の6倍さすがに天下人スケールなので今回は諦めました。

しばらくすると、
都会が広がってきました

目的地の清水港です。富士山を眺める名所の三保の松原も見えます。

ヨットや
コンテナ船も見えてきました
清水港の灯台を超え
清水港に到着、
ふと湾の向こうに目をやると
巨大な山影が背後に迫ります

背後霊のような富士山が見守る清水港に到着です。

フェリーターミナルから、静岡鉄道の新清水駅、JR清水駅いずれも無料シャトルバスが出ているので便利です。

以上、富士山を臨む黄金のフェリー航路でした。ぜひフラッと乗ってみてください。

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