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きっと、ね

「皆さんは、将来何になりたいですか?」

先生は希望に満ち溢れた視線を、私たちに分け与えるように聞いた

「消防士かな」
「俺は警察官」
「僕はお父さんの会社継ぐんだ」

まじめな人間たちだな。

「なんでもいいからとりあえず金持ち!」

相当なポジティブ人間だな、そろそろ本気で将来考えろよ

「女優になりたい!」

どうぞ、アンチとの永久戦争へ

「わたしは絶対 教員になりたい。
 ねえ、あなたは?」

突然ふたつの宝石が私に向いた。
脳を動かそうとする前にすっと口が動いた

「わたしは大切な人を守りたい、かな」

なんか粋なこと言ってんな、私。
一番嫌いだよこんなこと言うヤツ
まあ人間ではないものになれたらそれでいいんだけど
欲を言えば守りたい。あなたを守りたいだけ。

「へえ、いいね。あなたならきっとなれるよ」

そういって、いつものように根拠のない未来を明るくしてくれた

「なりたいもの、頭に浮かんだかな?」
1人だけ私たちに向き合っている人間が全員の視線を集めた。
「今日家に帰ったら、その ”なりたいもの” になるためにはどうすれば
 いいのか考えて、実践してみましょう」


わたしは家に帰って、乱れた部屋に飛び込んで封をした

便箋を取り出し、あなたに向けてペンを躍らす
あなたを明るい未来へ導く言葉で、できる限り想いを詰め込む
今までの誰にも触れさせたくないふたりの大切な思い出も少しのせ、
溢れ乱れるほどの愛を広げ、
おなかがいっぱいになるほどの感謝を刻み、
あなたが必ず幸せになりますように願いを込めて封を閉じる

書き慣れた あなたの名前を封筒に大きく書いた

あなたが大好きだと言ってくれた絵を横に添える

ドアを突き破る勢いで外にでた


1番自分がちっぽけだと思える場所まで駆け上がる

「あなたもきっとなれるよ、素敵な教員に」

心から出た声を残して わたしは空を飛んだ


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