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大量(自主)退職時代の到来〜The Great Resignation〜(1)

海外メディアで特集され続けていて、日本ではまだ取り上げられていない、The Great Resignationという現象について書いてみます。これから数回に分けて、日本での対策等についても考えてゆきます。特に企業経営者や人事関係者の皆様に読んで頂けましたら幸いです!


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             出典: Statista(米国労働省発表データに基づく)

米国労働省が9月2日に発表した週次の新規失業保険申請件数は、昨年3月以来の低水準となる34.8万件となった(総受給者数は1,174万人)。新型コロナウイルスの変異型であるデルタ株の感染拡大が続いているにも関わらず景気回復の追い風もあり、6月末には求人件数は過去最高の1,100万件を記録している。上昇し続けている求人件数と失業保険受給者数との雇用の需給ギャップが開いている理由がいくつか考えられる。

まず1つ目に、失業保険給付の積み増し($300/週)や、受給期間延長といった新型コロナウィルスの蔓延防止策等の特例措置が職場復帰の妨げとなっているとの見方がある。2つ目に、過去最高益を更新しているGAFAMを始めとしたテクノロジー分野の企業の雇用者が求める候補者のレベルと、求職者の現状のスキルが一致しない「スキルギャップ」の拡大も長期的トレンドにおいて大きな要因だと考えている。そして3つ目が、ここ数ヶ月間、欧米の有名メディアがこぞって特集している、"The Great Resignation"ではないか、と考えている。

The Great Resignationとは何か


Resignation: 退職、辞職願

という意味なので日本語の直訳では、大量(自主)退職といった意味になるだろうか。

The Great Resignationという言葉は、今年5月にBloomberg Businessweekの記事の中で、テキサスA&M大学の経営学教授、Anthony Klotz氏が提唱した概念だと言われている。以来、数多くの記事で特集されており、様々な議論がなされている。

The Great ResignationはBig Quitとも呼ばれていて、新型コロナウィルス蔓延によるパンデミックをきっかけに、自発的に仕事を辞める従業員が大量に増えている現象を指している。驚くべきは人員整理や解雇の話ではなく、コロナ不況に苦しんでいる業界も多い中に、自ら「退職する」人が大量に増えているのだ。YouTubeでは、"I Quit(会社を辞めた)"というタイトルの投稿で、自分の退職理由とThe Great Resginationについて解説する動画が増え続けている。

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             出典: Microsoft "The 2021 Work Trend Index"

Microsoftが今年6月に発表したレポートによると、世界の従業員の41%が今後1年以内に現在の会社を辞めることを検討しており、46%が大規模なキャリアの転換を計画しているという。

また6月にギャラップ社が発表したリサーチによると、

・48%の米国の就業者が積極的に転職活動もしくは機会を検討 
・2021年5月の単月で、360万人が退職(解雇ではなく自主退職)

という驚愕のデータが明らかになっているのである。

"The Great"という表現が意味するもの


1930年代に世界中を襲った世界恐慌、The Great Depressionという表現を思わず想起せずにはいられない、2021年に始まったThe Great Resignationという現象。実は、2008年の金融危機(リーマンショック)はThe Great Recession、2020年に世界中を襲った新型コロナウィルスを封じ込めるための大規模な都市封鎖による景気後退は、The Great Lockdownと命名されている。特にロックダウンによる不況は、2008年の金融危機をはるかに上回る、世界恐慌以来最悪の景気後退を記録している。

一連のThe Greatという表現が意味することの深刻さがお分かり頂けるのではないかと思う。しかしながら、The Great Resignationという現象は始まったばかり。歴史の教科書に刻まれる出来事になるかどうかは、退職防止のために従業員のエンゲージメント向上に企業や経営者がどれだけ本気で取り組めるかどうかにかかっている。

この現象は、間違いなく日本にも来るのではないかと危惧している。もしくは、水面下で既に始まっているのでは?と思える話も耳にしている。次回は、自発的に大量の従業員が自主退職している、The Great Resignationという現象が起きている理由について書いてみたいと思う。

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