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【13日目】『ABC理論』と「当たり前」に隠された【信念】(ニンゲンのトリセツ)

◆『ABC理論』とは何か 

 では『ABC理論』について書いていきますね。

 『ABC理論』とはエルバート・エリスという人が提唱した認知行動療法の一種で、ココロから勝手に湧いてくる「ように見える」様々な感情に振り回されるのではなく、アタマで論理的に行動を分析・コントロールする手法の一つです。

 まず、ABCとは次の三つを指します。

・A「出来事」(Activating event)
・B「信念(考え方の基礎のようなもの)」(Belief)
・C「結果(わき起こった感情)」(Consequence) 

◆「犬を怖がる人」の中で起こっている「プロセス」

 簡単な例として「犬を怖がる人」を見てみましょう。

 犬が怖い人というのは、犬を見たら怖がります。これをABC理論のAとCに当てはめると、次のようになります。

・A「出来事」=『犬を見た』
   ↓
・C「結果」=『犬を怖がる』

 僕たちは普段の生活で、このように自分の感情や行動をとらえています。ですが、よく考えてみると、AとCの間に、Bである『信念(=考え方の基礎)』があることが分かります。つまり

・A「出来事」=『犬を見た』
   ↓
・B「信念」=『犬とは、襲ってくる怖い生き物だ』
   ↓
・C「結果」=『犬を怖がる』

という具合です。人によって犬が大好きだったり、怖い生き物だったりするのは、この「Bの部分」が人によりけりだからだ、というのがABC理論なのです。

 さらに、ABC理論ではこのB「信念」の部分を変えられれば、結果としてC「結果」を変えることができる、とされています。

 この例で言えば、犬を怖がっている人も、Bの「信念」の部分である

B=『犬とは、襲ってくる怖い生き物だ』

という考え方を、何とかして

B=『犬は人間にやさしい生き物だ』

というふうに変えられたら、Cの「結果」である部分が

C=『犬は怖くない、むしろ可愛いから、怖がらない』

というふうに変わるんです。

◆B「信念」はあなたの「当たり前」に隠れている

 「人生が辛い」というときにも、必ずアタマのどこかにこの『B』が隠れています。逆に言うと、この『B』を変えてやらないと、いつまでも人生は辛いままです。

 結局のところ、前回話したとおり僕たちは「アタマ」しかコントロールできないので、僕たちはこの『B』しか、自分の意志で操作できないんです。ですからまず、自分自身で自分の『B=信念』をよく振り返って、ネガティブな気持ちが起こったとき(=好き嫌いゲージが下がったとき)「どういう『B=信念』があるのか?」と、自分自身にたずねてみてください。

 中には「そんなこと言われても、わからないよ!」という方もおられるでしょう。そんなときは、あなたのアタマの中に

「当たり前のこと」

が隠れています。その、あなたにとっての「当たり前」こそが『B』に当たるものです。

 カンタンな例を出しましょう。朝、誰かに挨拶をしても、返事がもらえませんでした。ここで「ムッとしてしまう(怒りを感じる)」人は多いと思うのですが、このとき

A=あいさつを返してもらえなかった(事実)
B=(  ??  )
C=ムッとしてしまった(感情)

こういう構図がある、ということなんです。このときの『B』こそが、あなたのアタマの中に隠れている「当たり前」なんです。

 大抵の場合、この『B』には、

B=あいさつをされたら、返すのが「当たり前」だ(信念)

があるのではないかと思います。確かに「当たり前」のことなのですが、場合によっては、何か考え込んでいたとか、単純にあなたに気づかなかったとか、そういう「相手なりの『事情』」があるものです。ですから、いつでもあなたの中の「当たり前」が機能するとは、限らないのですよね。でも、結果として「C=ムッとしてしまった」のであれば、それはあなたのアタマの中の『B=信念』によって、感情がわき起こったからだと言えるのです。

 ですから『C=感情』を変えたいなら、まず、自分でこの『B』に気が付かなければなりません。これには練習がいるかも知れませんが、生活の上でこのABCの構造を常に意識していると、ある時ハッと気づくものです。


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「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)