見出し画像

【5日目】「奪う」モトあつめと「増やす」モトあつめ(ニンゲンのトリセツ)

◆感情は「モトあつめ」のためのココロの命令だ

 新しいことばかりだと思うので、前回までのことを少しまとめますね。

・『モト』とはココロの材料
・モトの量が増えるとポジティブな、減るとネガティブな感情が出る
・モトあつめには二つの方法がある。
・一番目のモトあつめ……「他者から奪う」
・二番目のモトあつめ……「自分のココロで増やす」

 モトあつめ、という話をしましたが、なぜ僕たちがモトあつめをしようとするのかというと、実はココロは常に

「モトをあつめたい」

と思っていて(そういう器官なんだと思ってください)、そのための「命令」として、感情というものを出してくるからなんです。
 そう、感情というのは、ココロが僕たちにモトあつめをさせるためのツールのようなものなんですね。それはポジティブなもの、ネガティブなもの、どちらもそういうものなんです。
(感情とモトの関係は、次の「初級編」でくわしく説明します)

 ではいよいよ、こういう「モトあつめ」というものが、実際にどのように行われているかを見ていきましょう。

◆典型的な「一番目のモトあつめ」

 まずは、一つ目のモトあつめです。例えばこんなシーン……上司と部下、二人の人物が向かい合っています。部下は、上司にこっぴどく叱られています。叱られている内容は、この部下に直接関係のない、とばっちりのようなものです。こういう場面を想像してみてください。

 まず、部下の気持ちを見てみましょう。こんな場面ですので、当然「ネガティブ」な気持ちのはずです。上司を怖がっている、上司にうんざりしている、上司を嫌っている、そういう感情がココロにわき起こっているでしょう。

 このとき、部下の気持ちが「ネガティブ」なのは、叱っている上司に『注目』しているため、自分のココロからモトが減っているからです。
 僕たちは怒った仕草をしている人には、ものすごく注目をするものです(自分の身に危害が及ぶかもしれないから、本能的にです)。モトというものは注目したものに向かって飛んでいく性質を持っていますので、部下のモトは上司に向かってどんどん飛んでいき、ココロから減っていきます。

 一方で、叱っている上司はどうかというと、大きな声で相手を怒鳴りつけることによって、部下の注目を集めます。そうすると、部下からモトが飛んできます。飛んできたモトは、上司のココロが受け取ります。そうやってモトを受け取ることによって、上司のココロはちょっと満足します。
 怒っているときに、誰かを怒鳴ったり暴力をふるったりすると、少しスッキリするものですが、ここにもこういうメカニズムがあるのです。ココロが相手からモトを奪うことによって、ちょっとだけモトの量を増やせるからなんです。

 このような場面では、叱っている上司による

「一方的なモトの強奪」

が起こり、上司のモトが増え、部下のモトが減ります。典型的な『一番目のモトあつめ』とは、このような形で行われています。

◆「二番目のモトあつめ」は「いい気分」のときに起こる

 では『二番目のモトあつめ』はどうでしょうか? 実は、この「自分で増やす」タイプのモトあつめは、自分ひとりでもできるんです

 例えば、難しいゲームで遊んでいるときに、何度もやり直しながらやっとステージをクリアできたとき……とてもうれしくて、興奮しますよね。これは「ポジティブ」な感情です。
 ポジティブな感情が出ているときは自分のココロがモトで満たされているときです。ポジティブな感情というのは、ココロが「モトの量が増えているぞ!」と感じているサインなんです。
 こういうときは、自分のココロの周りで「ポコポコッ」とモトが生まれています。そう、二番目のモトあつめが自動的に行われているんです。

 こんなふうに、一人でいるときに映画やテレビ番組、ゲームや漫画、芸術や音楽、スポーツなどでレクリエーションをしていても、嬉しくなったり、楽しかったり、面白かったりエキサイティングだったりと、ポジティブな感情になれることがありますよね。その時は、誰かから「モトを奪っている」わけではありません……もともと一人なんですから。つまりです。モトを増やす手段というのは、先程の上司と部下のような「やりとり」だけでなく、「自分で増やすこともできる」ということが言えます。これが僕の言う『二番目のモトあつめ』なんです。

◆一人より、二人。二人より、三人がいい。

 前回の内容で「二人の人物がモトを増やし合う」様子をお話しました。二番目のモトあつめというのは、一人でもできるし、そして二人以上でもできます。というよりはむしろ、二人以上の人が楽しく過ごすことで、より多くのモトが生まれますので、人数が多いほど「その場全体のモト」が効率よく増えていきます
 つまり、二番目のモトあつめを、より多くの人がたくさん行うことによって、この世界の

モトの「全体量」

が増え、より多くの人が幸せになる、ということが考えられます。逆に、一番目のモトあつめだけを行い続けると、誰かがモトを増やした分だけ、誰かがモトを減らさなければならないので、人間関係というものはギスギスしたものになっていきます。

 ですから、です。僕たちは日常的に、対人関係においては『一番目のモトあつめ』をやってしまいがちだと思うんです。ですが、意識的に『二番目のモトあつめ』をするように心がけて暮らすことで、人生の悩みごとや人間関係の困りごとは、ほとんど解決してしまうのではないかと考えています(もちろん、さっきの例に出てきた上司と部下、両方がそうしないといけませんが……)。

 この一番目と二番目のモトあつめのやり方、イメージが掴めましたか? では次は、こういった「モトあつめ」によってどうして気分や感情が変わるのか? という『仕組み』についてのお話をしますね。


次の話→
←前の話

「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)