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フレーニ&クライバー&ミラノ・スカラ座

【過去の演奏会より】

日時:1981年9月15日 (火)
場所:東京文化会館大ホール

・演出 : フランコ・ゼッフレッリ
・指揮 : カルロス・クライバー
・管弦楽 : ミラノ・スカラ座管弦楽団
・ロドルフォ:ペーター・ドヴォルスキー
・ショナール:アントニオ・サルヴァドーリ
・ミミ:ミレルラ・フレーニ
・マルチェルロ:ロレンツォ・サッコマーニ
・コルリーネ:パオロ・ワシントン
・ムゼッタ:マルゲリータ・グリエルミ 他

【演目】

プッチーニ作曲 歌劇『ラ・ボエーム』(イタリア語上演)
 (ミラノ・スカラ座初来日公演)


イタリアのミラノ・スカラ座の初来日引っ越し公演のニュースで音楽仲間は盛り上がり、是非チケットを手に入れて、天井桟敷でもいいから見に行くんだと気合いがみなぎっていた。チケット売り場に前日から並んで、徹夜で東京文化会館の5階最後部付近の席を12,000円で手に入れた

開演前から前のめりで、目で耳で全力鑑賞だった。幕が開くとそれまで見たことのないような、フランスの屋根裏部屋の風景が飛び込んできた。舞台を見るだけで圧倒された。

これがオペラなのか。歌い手たちの実力は凄まじく、それまで感じたことのない声の圧を全身で感じ、イタリアオペラの世界に没頭していた。ホールの一番後ろでもまるで1階のど真ん中で見ているような迫力と臨場感だった。

幕が終わるたびにカーテンコールがあって、歌手たちがにこやかに出てきた。必死で拍手をした。特にミミを歌ったフレーニに対する拍手は割れんばかりだった。豊かな声と演技は抜群で、特に4幕は体を折ったり寝転びながらもしっかり声がホール全体に響いていた。ロドルフォを歌ったペーター・ドヴォルスキーも聴いたことのない素晴らしいテノールだった。

2幕のカルチェラタンのシーンでは、幕が開くと大きな拍手が沸き起こった。舞台が2段に分かれて立体的になっていて、本当にそこにいるかのような臨場感だった。すごい人数の合唱。ムゼッタはマルゲリータ・グリエルミ。声も演技もムゼッタそのものだった。

3幕は薄いカーテンが下され雪のシーンを見事に表現していた。本当に体が寒くなるようだった。幕切れで音楽が終わる前に拍手が始まってしまったのは、かなり残念。

4幕で主役のミミが最後に息を弾き取ろうとしている時、会場ではすすり泣く声が聞こえた。近くの女学生も泣いていた。音楽も感動的だ。素晴らしいオペラだった。

指揮者はカルロス・クライバー。生気あふれる縦横無尽のタクトさばきに、音楽だけでも感動。とても手が長く、優雅な指揮ぶりは見ていた5階からでもはっきりわかった。もうこんなカップリングなんてありえないだろうと思うほどの豪華キャストだった。演出はフランコ・ゼフィレッリ。これ以上望めない名演だったと思う。

終演後は30分近く拍手が続いた。

日本の声楽家の中には、海外の引っ越し公演を営業妨害だといわれる方もおられた。でも私は『学ばなければ。』この一言に尽きると思う。

この公演以降、数々のオペラ海外引っ越し公演に憑かれたように行くことになるのだが、その圧倒的なレベルの高さ、素晴らしさにはいつも鳥肌が立ち、感動させられている。

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