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#3 財務分析の前にJクラブ個別経営情報開示について考えてみた。

公認会計士のゆうと申します。
数あるnoteの記事からご覧いただき、ありがとうございます。

今回は財務分析の対象となるJリーグや各Jクラブの個別経営情報開示についてです。
お時間のない方は、目次から3.まとめをご覧ください。

1.Jリーグはなぜ経営情報を開示しているのか?

財務分析をするにあたって1番の参照先となる公益社団法人日本プロサッカーリーグ(以下、Jリーグ)のHPの【Jリーグ経営情報】において、なぜ開示が行われているのでしょうか。
その趣旨が、同じくJリーグのHPで公開されている【2020年度 クラブ経営情報開示資料 (先行発表)】において、以下の2点を記しています。

・JリーグおよびJクラブをサポート頂いている方々への迅速な情報提供
・クラブライセンス制度の透明性・公平性の担保

まず、JリーグおよびJクラブをサポート頂いている方々への迅速な情報提供です。
Jリーグ規約】の第24条に以下の内容を記しています。

Jクラブはそれぞれのホームタウンにおいて、地域社会と一体となったクラブづくり(社会貢献活動を含む)を行い、サッカーをはじめとするスポーツの普及および振興に努めなければならない。

その内容を鑑みると、Jリーグが経営情報等は各クラブの現状や課題を相互に認識し、共に愛するクラブを大きくするための方向性を共有するため材料として提供していると窺えます。

次に、クラブライセンス制度の透明性・公平性の担保です。
Jリーグでは、2012年より【クライブライセンス制度】を設けており、以下の内容を記しています。

クラブライセンス制度導入の目的は大きく分けて「サッカーの競技水準や施設的水準の持続的な向上」「クラブの経営安定化、財務能力・信頼性の向上」に集約されます。

このうちの後者は、経営情報の開示によってクラブの経営に対する信頼性が向上する手助けとなると窺えます。また、開示によってクラブの財政状態が明らかとなり、クライブライセンスが本来取り消しされるはずのクラブが大人の事情で交付されるという審査のブラックボックス化を避けることが可能となります。

このように、Jリーグは理念である地域密着の観点から地域社会と一体となったクラブづくりのために、経営情報の開示を積極的に行っていると窺えます。

2.Jクラブはなぜ経営情報を開示しているのか?

それでは、Jリーグで開示されている経営情報をJクラブでも開示をしているのでしょうか。

JリーグのHPの【規程・規約】にある【Jリーグ規約】の第26条、第80条には以下の内容を記しています。

第 26 条〔Jクラブの健全経営〕 
(1)Jクラブは、人件費、運営費その他の経費の設定に際し、健全な財政状態の維持に配慮しなければならず、違反した場合、第 142 条に定める懲罰が科され得るほか、理事会は必要な措置を講ずることができ、Jクラブはそれらに従わなければならない。
(2) JクラブはJリーグに対し、Jリーグが指定した書類を定められた期限までに提出しなければならない。
(3) Jクラブは、前項の書類に虚偽の記載をしてはならない。
(4) Jリーグは、Jクラブの事前の同意がない限り、第2項の書類を第三者に開示しないものとする。ただし、JリーグおよびJクラブの状況を社会に告知するために、実行委員会の承認を得たうえで、提出書類に内包された情報をもとに作成された資料を、個別のJクラブの運営に支障を来たさない限りにおいて開示することができる。

第 80 条〔収支報告〕 
Jクラブは、Jリーグから試合収支および/または大会収支にかかる決算書の提出を要請されたときは、Jリーグが定めた期限までに提出しなければならない。  

第26条自体には対象の明記はないものの、〔Jクラブの健全経営〕と記載されていることから経営情報の開示に関する資料も含まれていることが推察されます。また、第80条では決算書の提出が要請されております。

第26条(2)項、(3)項によりJリーグは虚偽表示のない情報をクラブから入手することが可能となります。また、第26条(4)項はできる規定であることから、株主、スポンサー、サポーター、その他取引先等のステークホルダーへの説明を積極的に考えているクラブは、Jリーグの経営情報の開示に加えて、内容の説明を合わせてしているものと窺えます。

その一方で、開示することにより、特に経営状況の良くないクラブはネガティブな情報を公開することになります。また、例えばステークホルダー側はチーム人件費の比重を置いてほしいと願っている一方で、試合関連経費やトップチーム運営経費の比重が大きい場合はステークホルダーから圧力を受けることも考えられます。したがって、開示することが必ずしもプラスにつながらないクラブも存在するのではないでしょうか。

このため、自クラブのHP等での開示をマストとせず、各Jクラブの戦略として、クラブの運営に支障が出ない範囲での開示決定の判断が委ねられているのではないかと考えます。

3.まとめ

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4.次回

次回は各Jクラブの経営情報の開示状況についてみていきたいと思います。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!


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