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海外に住んで外科医として働くイメージは持てる?いやいや情報無いとできないでしょう!北米移植外科フェロー編

日本人IMGが海外のフェローに応募する場合、海外暮らしへの不安、職場の不安など、不安が多過ぎてイメージがしづらいことは確かである。でも実際はコネクションがないと話すら聞けない。今回は私の今のポジションについて、後身向けに、どこにも書いていないくらい詳細にまとめておくので、イメージを掴むための参考にして頂ければと思います。

☆勤務環境
TGHの腹部移植外科は移植と肝胆膵の2グループに別れていて、ASTSの移植フェロー(毎年2人)と肝胆膵悪性腫瘍外科フェロー(毎年1人)と病院フェロー(隔年1人)の計7人のフェローがいる。いずれも2年間の採用期間(病院フェローのみ1月スタート)。スタッフ10人とレジデント(1−2ヶ月ごと、3−6人程度)、NP(移植)とPA(肝胆膵)で診療を行う。肝移植は移植内科医が同時に病棟管理をしてくれて、腎移植は術後は腎臓内科医がメインで管理をしてくれる。
フェローは、肝移植implant、肝移植病棟管理、膵腎移植、ドナー、肝胆膵の5つのサービスをカバーする。基本日課は手術であり、実力次第だがほぼ全ての手術の執刀を任される。(日本ではあり得ないですね)
肝胆膵は3ヶ月周期に変わるが、その他の移植サービスは1週間毎に交代となる。一年目は互いのグループをオーバーラップするが、二年目は自分の専門にシフトできる。
例)移植外科フェロー
一年目;3ヶ月肝胆膵、9ヶ月移植
二年目;12ヶ月移植(生体、小児、Redoなど難手術メイン)
https://www.torontoaotransplantfellowship.com/fellowship-overview/#description

☆特徴
下記HPから詳細を確認して欲しいですが、固形臓器北米No 1、肝臓移植北米No 1、生体肝移植数北米No 2などなど北米で一番忙しいプログラムの一つです。基本的に執刀である点、生体肝や小児移植、多臓器移植を経験できるのでASTSのマッチングでは2人枠に100名以上が応募し、上位12名が面接に呼ばれます。病院フェローはASTSマッチでのリスト上位者やASTSとは異なる選考で決められます。
https://www.torontoaotransplantfellowship.com/

☆待遇
給与年収8万9000CAD(現在なら大体1000万円)
勤務に際してはオンタリオ州の医師免許取得、トロント大学医学部への登録料で年間10万円以上経費がかかる。その他、Work  Permitビザ取得、CMPA(賠償保険)など掛かる。概算であればフェローシップパンフレット参照。
https://pgme.utoronto.ca/wp-content/uploads/2017/05/OrientationBooklet_WEB.pdf

☆衣食住教育環境
トロントはカナダ一の都会で4割が移民です。日本人留学者やワーホリも多く、留学先としてはかなり住みやすいと思います。AirCanadaで成田から直行便12時間、空港からダウンタウンまでは電車で30分ほどです。オンタリオ湖に面しておりリゾート的な街並みです。カナダは超乾国で湿度が低いので、夏は日本より本当に涼しく最高ですが、冬は極寒でマイナス20度になる日もあります。ギネス記録の地下街や地下鉄が発達しており、またコンド(マンション)は温度自動管理ですので、真冬でもコンドによってはTシャツで家から職場まで通勤可能です。

大学からの補助金はないです。住む場所はダウンタウン市内(大学病院はダウンラウンの真ん中にある)か日本人が好むノースヨーク(地下鉄30分ほど)。腹部移植外科フェローはダウンタウンの大学病院近傍をお勧めします。夜中の呼び出しが多く、また手術直前まで家でご飯や休憩ができるため。値段はダウンタウンで1LDKで2500−3000CAD程度。(ピンキリ)

現在は医療保険はCOVID特別措置で渡航初日から国民皆保険(保険料無料)に入れます。薬と歯医者は大学のファミリーカバーで保険加入できます。公園や児童保育園は充実しています。渡航後1.5年経つと子供一人当たり年間70万円程度の補助金が出ます。ちなみにカナダは全例無痛分娩で無料、日本帰国後に出産一時金を申請できるのでカナダで子供を作る留学者は多いです。子供の学校は学区が決まっており、家を決める際に学区の英語と数学の能力はネットで要確認。日本語の補修校あり。

治安は悪くないです。世界住みやすさランキングは日本を抜いて世界2−4位前後。深夜まで働いていても歩道、バス(深夜バスは一晩中ある)、地下鉄で身の危険を感じたことはありません。ただマリファナが合法化され、たまに匂うので私は繁華街が嫌いです。浮浪者は日本よりは多いが無害です。米国と異なり銃社会ではないので安全と思います。

食事は日本人が経営するラーメン、和食、居酒屋が多い。極端に旨いものはないが、一般人の生活をするなら味は良いです。ただし外食は価格も税率も高く、チップ文化なのでラーメン1杯で2000円はします。食品は多くのスーパーがあり全く困りません。台湾や韓国スーパーで日本製品も手に入るが価格は2−3倍程度。

総じて、物価は高い、生活費は住宅は東京程度、日用品は2−3倍程度。

生活面や書類申請系統はトロントパーティという日本人のグループが留学マニュアルを作成しているため、内定が決まったら加入、マニュアルを入手して下さい。

☆実際の働きスタイル
働き方は至ってシンプル。手術があればまずそれに割り当てられ、なければ外来かフリー(帰って寝るもよし、他の手術に入るも良し、論文書くもよし)。移植に手術数が半端ないので、予定は前日午後10時くらいに決まる。

まず通勤。私は大学病院から徒歩20分くらいのところに住んでいて、大雪以外は徒歩で通っている。同僚は大体病院の周り徒歩5分圏内が多い。地下鉄やバスは日本ほど混まないが、遅延も多くあまり信用できない。自転車や電動キックボードでの通勤も流行り。

医局は最新の建物の12階。コーヒーはスタバかTim Hortonか気分で選ぶ。
院内は建て増しで迷路のよう。地下にフードコートがあるが、正直日本のコンビニがあれば圧勝である。ギリシャ料理は美味しい。和食は寿司とうどん、どんぶりの店がある。他はハンバーガー、イタリア料理、サンドイッチ、ベーグル、ジュースショプなど。

①肝胆膵フェロー
朝は早い。5−6時にレジデントと回診開始。チーフレジデントが回診を仕切り、ジュニアレジデントやPAがオーダーする。フェローは総括責任者。誤りがあれば提案する。8時オペ出し。回診後はコーヒーを飲みながらRTL(Run the list)してオペへ。オペは腹腔鏡下肝切除や膵切除に加え、Whipple(膵頭十二指腸切除。当院は結構再建が多い、動脈も躊躇なく繋ぐ)、Two stage肝切除など多岐に渡る。オペが終わり次第病棟当番のレジとスタッフと打ち合わせして解散。移植技術も持ったスーパー外科医の集団であり、門脈再建Whippleでさえ3時には終わる。6時過ぎまで仕事をすることは稀。

②移植フェロー
肝移植当番、肝移植病棟当番、膵腎移植、ドナーで全く異なる。まずドナーだが、3ヶ月間のトレーニングの後に独り立ちし、レジデントと行う。腹部は肝臓、膵臓、腎臓、大血管を摘出する。当院はスタッフがドナー手術に参加しない。他院で行う手術でも全責任は基本的にフェロー。ドナーはほぼ毎日出る。脳死のみならず心停止後の摘出(Super rapid procurement)は腹部臓器全てを極める必要があり、日本では経験できない手技。肝移植と膵腎移植登板は届いた肝臓、膵臓+腎臓または腎臓のみをひたすら移植する。私のレコードは週に肝移植5件執刀または週に膵腎2件と腎臓7件執刀。徹夜で1日4件腎移植した際は無意識に縫う力がついた。移植当番では仕事は不定期。ほぼ何日も徹夜が続くこともある。一方、肝移植病棟当番と膵腎移植当番では病棟もカバーする。7時から回診開始。内科医やNPと回診して方針を決める。一日2回の会議あり。18時には帰宅。

いずれも土日も平日と変わらず勤務する。唯一の違いは予定手術がないくらいの差。それでも月に一度は週末フリーになるよう計画されている。

それと当直はないです。その代わり、24時間いつでも呼び出されて手術する可能性があり、内科のインセンティブが出る当直のが金銭的には良い。ただし日本の何倍も執刀するので文句は全くない。

術前カンファ、M&Mカンファ、教育カンファもある。教育カンファは売りの一つで、初めての症例の画像を読んで診断プロセスを説明し、手術手順を説明するガチカンファ。討論ではStaffからバシバシ質問が入る。それに答えられたらもう怖いものはない。その他、トロントが誇る膵臓がんのカナダ中から症例集まる初診外来など頭を使う場面も多い。

総じて言えるのは、手術に精通しているTalentedを教育する雰囲気。腹腔鏡下の肝胆膵手術、Whippleや血管吻合も基礎はできる前提で話が始まる。日本でレジしただけでフェローになると多分ついていけない。(というか絶対に採用にならない。)

さて、イメージは掴んで頂けたでしょうか?

ここから先は流石に大っぴらに言えない内容もあるので、
★応募と選考基準の実際
★プログラムの闇
はいずれ有料記事にさせて頂きますので気になる方はどうぞ!


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