人を豊かにするのは、有益さよりも余白だと思う

このインターネットの時代に、世の中には有益性の高い情報が沢山流れています。それを喜ばしいことだと思える一方で、時々ひどく息苦しいと感じる自分がいます。お前のその1分1秒にはちゃんと意味があるのか、考えているのかと問い詰められている気分になるんです。

私はこんな功績を残しています

成長のための10の習慣

〇〇をして年収がいくら！

そんな言葉は洪水のように溢れかえっていて、常に向上心を持って行動し続けないとあっという間に流されてだめな人間になってしまうかのような錯覚に陥ります。朝ツイッターを開いた時に意識の高い方々が似たような発信をしていると、あー私のタイムラインからわんこがただ走ってる動画が見えなくなってしまうよ〜とか思うわけです。

正直私は、意味のないことしてて何がだめなの？と思う派です。

意味のないこと。別に本人は意味なんて考えずにし始めたこと。ただやりたかったこと。

休日の昼寝。川辺でたそがれること。ワーキングホリデー。お風呂に入る前に普段と違うメイク。行き先を決めない散歩。ギャップイヤー。仕事と関係ない資格試験。アウトプットしない読書。

何かをする時に、どうしてそれをするのか言えないと悪いことをしているような気持ちになります。なんにも悪いことなんて無いのに、私は私が幸せになるために時間を使っているだけなのに。

意味があることだけをしたい人は最短距離だと思う道を走ればいいかもしれないけど、学校と塾と自宅の3地点で動く点Pみたいな人生送った人って楽しかったのかな。もしくは大学入学→サークルで彼女できる→単位そこそこ落としても卒業→そこそこの企業に就職→20代でそろそろと思って結婚！みたいな、人から安心だよと言われたストレートな人生でアイデンティティを喪失しないのだろうか。

もちろん私だって努力は大切だと思うし、なんなら優等生だねとか真面目だねとか人からよく言われる方です。仕事をダラダラしてもいいとは思わないし、目標のためにこつこつ頑張ることって大事だと思います。だから目標に対して意味のあることを求めて生きている人を批判したいとかそういうことではありません。ただ、それはその人個人の人生であり選択であって、それが人生のお手本なわけではないと思うだけです。

私は、道草できる小学生が大好きです。大学生のうちに世の中の「なんとなく当たり前な気がすること」に疑問を持って立ち止まってしまっても、いいと思います。

だけれど、そういう立ち止まる時間にすら、人は意味をもたせようとするんです。今までとは違った自分を見つめることでこれができるようになる、とか、その時間はあなたにとって価値あるものだよ、とか。他人の定規で測られて、生き急がないといけないような気がして。

そういう事が言われたいんじゃないんだよな。英語が伸びない留学だって、ぼーっとすごしたフリーター時代の２ヶ月だって、私には見える世界がたくさんあったんだよなと思うんです。それは楽しかったとか辛かったとか、自分で話したかったらちゃんと私は言葉にします。それなのに、そこの時間をめいっぱい搾り取らなきゃだめなんだっていう外圧をいつも感じます。

人生には余白がないと、つまらない人間になってしまう気がします。少なくとも私は効率化された生き方を、自分では選びたくはありません。それは、いつも想定外な私でいたいから。

誰かが歩んだ道を歩くだけの人生なんてもったいない気がするし、無駄を削ぎ落とすっていうのはそうやって自分らしさになりうるものを捨てていくことだと思うんです。だから私は、道端のガラクタでもなんでも拾って自分のネタにしてやりたい。それが私に意外性や多面性をもたらして、面白い人間にしてくれるんだと思っています。

自分にとって意味のあることが、他人にとっても意味のあることだと信じすぎてしまうのは恐ろしいことです。自分は絶対だと信じるあまりに想像力を失って、時に相手を傷つけてしまうかもしれません。そして善意から相手を傷つけたとき、多くの人は相手の痛みに気づくことができないんです。

悪気がなくても暴力は暴力なのに、「正論」なら許されると思っていることがあります。それが怖いことだと思います。有益性や効率化だって、時にそういう武器になります。一見良いことが相手を窒息させているかもしれないんです。

だから私は、空気を思い切り吸える自分の空間を守りたい。

たとえそんな時間は無駄だと言われても、回り道に顔をしかめられても、うつむくのではなく堂々としていたいと思います。そして誰より幸せそうに生きていたら、それが有益性よりもずっと私にとっては大切なことだと証明できると思うんです。だから今日も、少しの遠回りも自分も不器用さも受け入れて、自分なりのものさしを育てていきたいと思っています。