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「いっぱい食べる君が好き」はいつまで有効ですか

24年間生きてきた私は、どこに行っても、餌付けされます。

まあ餌付けと言ったらちょっと言葉の響きが悪いのだけれど、つまり誰もがなぜか私においしいものをくれる世界が広がっているというわけなんです。

おいしいものから寄ってくるのか、おいしいものを引き寄せているのか、食べ物あげたい症候群の方々が私の周りには多いのか。

思えば私の24年の人生は、食べ物を介した人とのつながりで語れるんじゃないかと思ってしまうほどでした。



今から24年前、生まれた当初の私は3000グラムに届かないほどの、特別大きくはない赤ちゃんでした。ところが翌年の保育園では、お友達の中でもダントツでビッグな1歳児。1月生まれの女の子なのに、4月生まれの男の子を差し置いて学年1番の称号を獲得します。体重計測では保育士さんたちの熱い応援を誰よりももらっていたんだそうです。何だその世界は。


そんな私が新潟の親戚からもらったあだなは、横綱


何でもよく食べて好き嫌いもしない子供でした。私が0歳のときには職場復帰した母に代わって、料理がとっても得意な祖母がいつも面倒をみてくれていました。祖母の初孫としていつもたらふく愛情も食事ももらっていたと思います。

そんな私が親戚中からモテモテだったことは言うまでもなく、あらゆる人が私に食べ物を送ってくれました。

新潟からはお米やそらまめが、横綱あてに届きます。

母方の祖母のなめこのお味噌汁と餃子とおうどんが好きだし、

父方の祖母は煮小豆やかぼちゃの煮つけなんかをよく鍋ごと届けてくれました。


こういう幼少期のエピソードはまだまだ可愛いものです。まんまるなあかちゃんが両親や親戚に幸せをお届けできたのなら、女子としては不名誉なあだ名にも目をつぶれるというものです。


でも私は、中学生になっても高校生になっても大学生になっても、食べ物の神様から見放されることがありませんでした。いやむしろ、ダイエットの神様から見放されたと言ったほうがいいのでしょうか。おいしいものとそれを与えてくれる人が、年頃の女子には幸か不幸か、いつもそばにいました。


高校時代、部活の同期はおいしいものをなぜかよく分けてくれました。それは女子校の女子の習性でもあるのですが、女の子にめっぽう弱い。「これたべたいんでしょ〜〜」と私を見て笑う顔が本当にかわいくて(そしてそのお菓子がまたおいしそうで)いつもコクコクと頷いてはおいしいものをもらっていました。お菓子を分けてくれる時の女の子は本当に可愛い顔をします。その笑顔をたくさん見てきた私の蓄積は、ある意味財産かもしれません。


大学時代、インターンをしていたベンチャー企業では、まゆちゃ〜〜〜んお菓子あるよ〜〜〜と仕事中もしょっちゅう社員さんから呼んでもらっていました。出張が多い会社だったからお土産も多かった上、誕生日をちゃんとお祝いするアットホームな会社だったので、お菓子やらケーキやらが常駐しているオフィスだったんです。好きなだけとってきな!みたいなお姉様からいつもいただきものをしてきました。


そしてしまいには、ご飯を作ってくれる友人まで現れました。6年間老舗女子校仕込みの家庭科教育を受けてきたので、お魚のさばき方まで習ったはずの私です。料理はできないわけではないのですが、だからといって残念ながら食べるほうが得意なのは事実です。幼馴染も高校時代の友人も大学で出会った人も昔の恋人も、私がぼけっとしている間に素敵なご飯を作ったりしてくれました。



おかげさまで私は、温かい人とおいしいものに囲まれながら過ごしてきました。

いっぱい食べなさい。そう家族に言われるがまま食べて、気づいたら人より太っていた思春期。そしてダイエットしようにも食べるのをやめられないというそこから今に至る長い時間。いい子より可愛いと褒められたい年頃でも、そうじゃない現実を励ましてくれたのは大抵スイーツでした。

あの「いっぱい食べる君が好き〜♪」というコマーシャルが、現実の私の前に流れてくれたりしないかな。そんなこと思う余裕もなかった私は、自分の怠惰さにただ傷ついたりした時もありました。


でもあのとき、好きな人はそのままでいいと言ってくれたから。


それは想像していたあのメロディーよりもだいぶ静かで、でもそれはそれはあたたかい言葉でした。


今はもうそれも過去のことで、私には「まゆちゃん今日もゆでたまごみたいでかわいいわ!」と勢いよく褒めてくれる母だけがいます。

でも、私の中にはちゃんとあのぬくもりが残っていて、今でも自分のことを好きでいられる気がするんです。そして、私のことを想ってくれる周囲の人達にも、今までよりありがとうを目を見て言えるような気がします。



今日の夜ご飯のキムチ鍋はとってもおいしかった。多分明日の朝ご飯は冷蔵庫に残っている納豆を食べるけれど、ちょっと甘いものも食べたい気分だな。お昼には妹にホットケーキを焼いてあげようかな。それとも白玉粉でお団子にリベンジしてみようかな。


24歳。私は今でも、おいしいものが大好きです!








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