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初心者ライターがつくってしまいがちな構成のパターンを桃太郎で整理した

あれはざっくり5年ほど前でしょうか。

イベント取材を終え、編集者から「初稿の前に構成いただけると幸いです」と言われた駆け出しライターは、10分くらいで構成を作成し終え、どや顔で送付しました。イベント取材中のメモに申しわけ程度の見出しをつけ、一切インデントをせずに羅列しただけのドキュメントを、です。いま、彼女に向かって言ってやりたい言葉はひとつだけ。

「お前が作成したのは構成じゃなくて議事録だからな...!」

とつぜん失礼しました。inquireで編集やライターをしている向です。inquireでは、日ごろの仕事で抱いた悩みや課題を楽しく研究する「編集・ライティング研究活動」をやっておりまして。先月は、冒頭に書いたような議事録型ふくめ「駆け出しライターが陥りやすい構成パターン」について研究してみることにしました。「私の構成、議事録かも...?」と思った人はぜひ参考までに読んでみてもらえると嬉しいです。

ちなみに今回の内容は、主にビジネス領域のトピックを扱い、かつ目的が一定決まっているウェブ記事における構成について書いています。

「構成」って何だろう?

過去の自分を振り返ってみると「構成」が何なのかを考えきれていなかった気がします。

そもそも構成って何のためにつくるのでしょうか。今回、自分の経験を振り返ったり、inquireのメンバーと構成についてお喋りしたりして、だいたい以下の2つにまとまりました。

・記事の目的や想定読者、読後感に対して、適切なアウトプットになりそうかを確認するため
・記事のどこが最も面白いポイントなのか、そのポイントが伝わるようなアウトプットになりそうかを確認するため

上記を踏まえると、構成は「すべての要素が目的や伝えたいメッセージに資する形で選択・配置されているか、出来上がった記事が面白くなりそうかを確認するためのもの」と言えるのではと思います。

ちなみに「すべての要素が目的や伝えたいメッセージに資する」とは、バーバラ・ミント氏の『考える技術・書く技術』で書かれているピラミッド構造のように、伝えたいメッセージ(主題&結論)へあらゆる要素を意図を持って設計できている状態です。詳しくはこちらの記事をどうぞ。

やってしまいがちな構成パターンを桃太郎で整理する

さて、上記の役割を踏まえたとき冒頭の議事録パターンはどこが問題だったのでしょうか。よりわかりやすく共有するために、今回は架空の原稿の構成をつくって、良いパターンと避けたいパターンを整理してみることにしました。

冒頭に述べたとおり、編集ライティング研究は“楽しく研究する”活動です。架空の原稿のテーマは、実際に作成した記事を伏せ字にして...とかではなく、みんなが知ってる桃太郎にしてみました。

ただし、桃太郎のあらすじから「主にビジネス領域のトピックを扱い、かつ目的が一定決まっているウェブ記事」をつくるのは少し無理があったため、仮の設定をつくりました。

桃太郎がサステナブルな鬼退治を掲げる鬼退治代行企業の社員であると仮定し、その企業の公式HPに掲載する鬼ヶ島でのプロジェクト事例紹介記事をつくります。作成する記事の仕様はこちら。

概要:鬼退治代行〇〇社の鬼退治ソリューション〇〇の事例紹介記事
仮タイトル:鬼退治の本質は鬼との関係構築—〇〇社の新ソリューションで鬼ヶ島はどう変わった?
目的:鬼退治ソリューション〇〇のリード顧客の認知向上
想定読者:鬼退治を比較検討中の島関係者
読後感:
〇〇社の鬼退治は他社よりも長期的に島の安全を守ってくれそうだな
〇〇社の鬼退治資料をダウンロードしてみよう
伝えたいポイント:
〇〇社は一方的に鬼を退治するのではなく、ユーザーと鬼との良好な関係構築を促すソリューションを提供している
取材対象:鬼ヶ島の鬼退治担当〇〇さま、桃太郎

基本のあらすじはこちらも参照にしました。

おおむねGOODな構成

まずは「記事の目的や想定読者に対し、アウトプットがズレていないかを確認する」「記事のどこが最も面白いポイントなのか、そのポイントが伝わるようなアウトプットになりそうかをイメージする」を一定満たしている構成をみてみましょう。これだけが絶対に正解!というわけではないですが、おおむね良いのではという例です。

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これを踏まえ、駆け出しのライターが陥りやすい(というか過去の私が陥っていた)構成のパターンをまとめてみます。今回の研究で整理したのは、議事録パターンを含む以下4つです。

(1)
議事録パターン
(2)何を書くか不明パターン
(3)詰め込みすぎパターン
(4)目的ガン無視パターン

1. 議事録パターン

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何が問題なのか?
さて、どの辺りが問題なのでしょうか。ひとつは要素がまったく構造化されていないことです。構造化されていないので、段落でメインで何を伝えるのか、そのために何をどのような順番・ロジックで伝えるかがわかりません。

また、一部は文字起こしのコピペなのでひとつの文に複数の要素が入っています。複数の要素が混ざっていると、本来わけて伝えたほうがわかりやすい要素を一緒に伝えてしまったり、論理的につながらない複数の要素を混在させてしまったりしやすいので、注意したいところです。

議事録パターンを防ぐための問い
じゃあ何に気をつけたら良いのでしょうか。ここは今後も引き続き研究したいところですが、自分の場合は以下のような質問を投げかけると気づきやすくなりました。

・伝えたいポイントを伝えるうえで捨てるべき要素はありませんか?
・要素同士の関係性は明らかになっていますか?
・ひとつの要素に複数の要素が混ざっていないですか?

2. 何を書くか不明パターン

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何が問題なのか?
このパターンも議事録の次に私がやりがちだった構成です(とくに締め切り前に焦っているときなど)

見てわかる通り、記事全体や段落で何を伝えたいのか、そのためにどの要素をどの順番で書くのかが一切わかりません。ちゃんと目的に資する記事になっているのか、面白い記事になるのかが全然イメージできないと思います。

何を書くか不明パターンを防ぐための問い
・どのようなアウトプットになるのかをイメージできそうですか?
・各段落で伝えたいことは何なのか、そのために何をどの順番で伝えるのかは明らかになっていますか?

3. 詰め込みすぎパターン

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何が問題なのか?
ひとつの段落にたくさんの要素を盛り込もうとしてしまっている、複数のメッセージを伝えようとしているパターンです。書き始めると「やべえ盛り込みすぎた」ってなるやつです。少し議事録パターンとも重なるかもしれません。

意図を持って要素を盛り込むのはまったく問題ないですが、意図せず要素が溢れてしまっているのは問題です。「読者にどう読んでほしいのか」から逆算し、情報量が適切であるかは常に意識しておけると良いと思います。

詰め込みすぎパターンを防ぐための問い
・ひとつの段落で伝えたいメッセージは一文で説明できる内容にまとまっていますか?
・ひとつの段落に含まれている要素のなかで、分けて伝えたほうが良さそう、あるいは削れそうな要素はありませんか?
・記事を通して届けたい体験を踏まえたとき、文章量や段落に盛り込む要素が多すぎる可能性はありませんか?

4. 目的ガン無視パターン

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何が問題なのか?
その名の通り、記事の目的をおもいっきり無視しているパターンです。今回は事例取材なのでその企業のソリューションの良さに重きを置きたいところですが、メインが桃太郎の成長譚になっています。

目的を無視しても面白い記事になることは往々にしてあると思います。ただ、ライターとして目的の明確な記事を書くのなら、達成に導くためのアウトプットを出す必要があります。

このパターンは、そもそもの目的や想定読者、伝えたいことを理解できていない、あるいは理解できているがどうアウトプットするかを掴めていないときに起こりやすいように思います。そのあたりを確認できると防ぎやすくなるはずです。

目的ガン無視パターンを防ぐための問い
・全体で伝えたいメッセージ、各要素で伝えようとしているメッセージは原稿の目的に合致していますか?
・原稿の目的や想定読者、伝えたいメッセージについて疑問点や理解しきれていない部分はありませんか?
・目的を達成するうえで不要そうな要素、削れそうな要素はありませんか?

より良い構成を目指すために

さて、ここまで「構成」の役割や、駆け出しライターだった頃につくりがちだった構成のパターン、防ぐために考えるポイントをまとめてみました。

これを読んだだけでバッチリな構成をつくれるのかというと、なかなか難しい部分もあるのかなと思います。より良い構成をつくるための旅路はまだまだ続きます。

また、「どうしたら防げるのか」についてはもっと良いやり方や考え方が編み出せたら良いなと思っているので、今後も編集ライティング研究で深掘りしていく予定です。もし「自分はこうやって構成を書いている」などあれば、ぜひ教えてください。ではでは!

お知らせ

私の所属するinquireが運営する、「書く」を学び合うコミュニティ『sentence』で、新たな講座を始めます!この記事で扱うような、一定の目的に寄与するコンテンツをつくる仕事において、必要な思考やスキルをさらに磨いていきたい方に向けた内容です。興味のある方はぜひ以下から概要をチェックしてみてください。



最後まで読んでいただきありがとうござました!