花粉から家族を守る住まいの換気 ~知っていますか?24時間換気システムの使い方~
住まいは何十年もの時間を共にする大切な場所。だからこそ、あなたや大切な人が健やかなくらしを送るために、快適で安全な場所にしておきたいですよね。
「みんなでつくる住まいの手引き」では、快適な暮らしに役立つ知識や住まいを長持ちさせる適切なお手入れ方法をお伝えします。無印良品の家のスタッフによるノウハウと、実際のご入居者さまのアイデアもご紹介します。
あなたも一緒に「賢い住まい手」を目指しましょう。
そろそろ花粉症が気になる季節。今回のテーマは「花粉対策と住まいの換気~24時間換気システムの正しい使い方~」。ご家庭の換気設備を正しく使って、快適に、健やかに暮らしましょう。
1.換気しないと家はどうなる?
花粉シーズンになると、特に気になるのが住まいの空気。朝起きた時にくしゃみが出たり、床に落ちている花粉が舞って目がシブシブしたり。室内で快適に過ごすためには換気が欠かせません。
花粉対策としてはもちろんのこと、換気はさまざまな家のトラブルを防いでくれます。では換気しないと、どのようなことが起こるのでしょうか?
換気しないことにより起きるトラブル
汚染物質を吸い込み、アレルギーや体調不良に
換気をせずにいると、花粉だけでなくハウスダスト、ダニ、ウイルスといった汚染物質が室内に留まります。呼吸するたびに汚染物質を吸い込み、体調不良を引き起こしやすくなってしまいます。
酸素不足による息苦しさ、思考力の低下
人は常に呼吸するもの。新しい空気を取り込まなければ、室内は酸素濃度が低下して二酸化炭素(CO2)の濃度が高くなっていきます。二酸化炭素が多い空間に居続けると体が酸素不足になり、息苦しさを感じる、頭痛、集中力がなくなる、思考力が低下するなどの影響が出ます。
湿気がたまり、ダニやカビの温床になる
室内に空気が停滞すると、湿気がたまりやすくなる場合もあります。ダニは高温多湿の環境が好物。湿気の多い場所では繁殖が活発化し、あっという間に増えてしまいますので注意が必要です。カビの発生も要注意。感染症やアレルギーなどの健康被害をもたらします。
一酸化炭素中毒の危険
特に冬場に注意なのが一酸化炭素中毒です。卓上コンロでお鍋をしたり、石油・ガスストーブなどを使う時は要注意。酸素を使って燃焼させるため、酸素が不足すると不完全燃焼となり、有毒な一酸化炭素(CO)が発生する可能性があります。人が一酸化炭素を吸い込むと酸欠状態を引き起こして一酸化炭素中毒となり、最悪の場合、死に至るケースもあります。
※高気密・高断熱住宅である無印良品の家では、石油やガスを燃やした排気ガスを室内に吹き出す「開放型燃焼機器」と排気のみを屋外へ排出する半密閉型燃焼機器の使用を禁止しています。
新築の住宅は特に注意
新築当初は化学物質の発散が多くなります。入居から3か月程度は窓を開けて換気するなど、室内の空気を積極的に入れ替えるよう心がけましょう。
また入居する頃は家づくりと引っ越しの疲れがたまり、体力や免疫力が落ちていることも…。疲労時は化学物質過敏症やシックハウス症候群の発症リスクが高くなりますのでご注意ください。
2003年から住宅の「24時間換気」が義務化
ちなみに2003年7月1日以降に建てられた住宅には、1日中、自動的に換気を行う「24時間換気システム」が設置されています。
1990年代後半ごろから、高気密・高断熱住宅が増えたことによるシックハウス症候群(住宅の建築資材に含まれる化学物質が室内に滞留することにより引き起こされる鼻水、喉の乾燥などの体調不良)が社会問題化しました。換気の重要性が見直され、2003年7月1日に、シックハウス対策のための規制導入改正建築基準法が施行され、24時間換気で1時間あたり部屋の半分の空気を入れ替えることが義務付けされました。
2.知っていますか?24時間換気システムの正しい使い方
24時間換気システムは、室内で発生する化学物質や二酸化炭素などを排出し、きれいな外気を取り入れてくれるものですが「わが家にあるのを知らない」「使い方がわからない」という方も少なくないようです。そもそも24時間換気システムは自然換気とはどう違うのでしょうか?
24時間換気システムの一番の特徴は「強制的に室内の空気の入れ替えを行う」設備であること。これは「常時換気」と呼ばれ、システムが稼働している限り、絶えず換気が行われています。2時間程度で全体の空気の入れ替えが可能です。
24時間換気システムを正しく使うことで、24時間365日、室内をきれいな空気に保ちます。
24時間換気システムの種類
24時間換気システムは4種類ありますが、戸建て住宅で主に採用されている第一種換気と第三種換気についてご紹介します。
第一種換気
給排気をすべて機械で行うシステム。室内の気圧を一定に保ち、超高気密な住宅でも扉が重くなるなどの心配がありません。熱交換型は室内温度を一定に保てるメリットがあります。一方でイニシャルコスト・ランニングコストがかかるというデメリットもあります。
第三種換気
自然給気と機械排気で換気を行います。お手入れが簡単で、第一種換気と比較するとイニシャルコスト・ランニングコストが安く抑えられます。気密性が低いなど冷気対策が十分ではない住宅の場合、給気口から入る空気で部屋が寒くなる場合があります。
無印良品の家では第三種換気を採用しています。高気密住宅のため、給気口からやさしく空気を取り込み、寒さが気になりにくい仕様です。(「縦の家」のみ第一種換気)
こんな使い方はNG
何気なく、このような使い方をしていませんか?正しい使い方を知り、住まいを快適に保ちましょう。
旅行中や寒い時など、たまに電源を切っている
24時間換気システムは空気の滞留による結露の発生を抑制し、ホルムアルデヒドやVOCなどの化学物質を排出しています。長期間にわたり不在になる場合も、電源は切らず常に稼働させてください。
給気口を閉じている
換気は給気と排気がセットです。24時間換気システムのある住宅には必ず空気を取り込む給気口が設置されています。この給気口を寒いなどの理由で閉じてしまう方がいらっしゃるようなのですが、必ず開けたままにしておいてください。
給気口を詰まったまま放置している
給気口にはフィルターがついており、汚染物質をシャットアウトしてきれいな空気を取り入れてくれます。フィルターが詰まると汚れた空気がそのまま室内に入ってしまいますので、定期的なお手入れが必要です。お掃除をしないと給気口周りの壁が汚れてしまうこともあります。
24時間換気システムに関する疑問
Q.24時間換気システムが付いていれば、1年中窓を閉め切っていても大丈夫?
24時間換気システムが正常に稼働していれば、窓を閉め切っていても特に問題はありません。卓上コンロを使う時や大勢のお客さまを招いてパーティをするときなどは適宜窓を開けて換気するとさらに安心です。
Q.停電などで24時間換気システムが止まってしまったら?
一晩程度であれば健康に害を及ぼすことはありませんのでご安心ください。万が一、停止期間が長期に及ぶ場合は窓を開けて自然換気を行いましょう。
3.24時間換気システムのお手入れ方法
24時間換気を正常に稼働し続けるためには、給気口と換気扇などのお手入れが必要です。簡単なお掃除でOKなので忘れずに行うようにしましょう。
給気口のお手入れ
①フィルターの清掃(目安:月に一度)
表面のカバーを外し、フィルターを引き抜きます。フィルターの汚れは掃除機で吸い取って除去してください。汚れがひどい場合は水洗いするか(縮んでしまう場合があるので注意)、交換しましょう。
②フィルターの交換(目安:年に一度)
定期的に新しいフィルターに交換しましょう。
換気扇のお手入れ
中性洗剤の溶液で拭き掃除(目安:汚れが目につくとき)
まずグリルを取り外します。水で薄めた中性洗剤に布を浸し、軽く絞って表面のグリルやプロペラなどの汚れをふき取ります。
仕上げに水拭きをして十分に洗剤をふき取りましょう。
※換気扇を掃除する際は、必ずファンの電源を切って運転を停止してから行いましょう。稼働したままのお掃除はケガなどの重大な事故につながる恐れがあります。
無印良品の家にお住まいのみなさんに聞きました。
Q.給気口のお手入れ、していますか?
半数以上の方が「お手入れしたことがない」という結果になりました。日常で給気口を意識する機会は少なく、お手入れを忘れがちな部分のようです。空気がきれいで健康的な住まいを保つために、ぜひお手入れを心がけてくださいね。
Q.どのようにお手入れしているか教えてください。
4.知っておきたい自然換気のポイント
24時間換気システムのない築年数の古い住宅にお住まいの場合や、24時間換気システムが停止してしまった、という時のために、効果的な自然換気の方法をご紹介します。
空気の通り道をつくる
給気と排気がスムーズに行われるには窓をたくさん開ければよいわけでなく、「どの位置の窓を開けるか」が大切です。窓の多い戸建て住宅は対角線上にある窓を開けるようにしましょう。マンションなどの窓が少ない住宅の場合は、玄関ドアとお部屋の窓を同時に開ける、サーキュレーターや扇風機を外に向けて回すといった工夫が効果的です。
自然換気の頻度は?
理想的な目安は1時間に2回程度、1回あたり5、6分程度です。こまめな換気が難しい場合は、一つの窓を常に少し開けておく常時換気でもよいです。
みなさんの換気の工夫
5.換気以外でできる住まいの花粉対策
効果的な換気を行うだけでも十分に有効な花粉対策になりますが、家づくりの工夫でプラスアルファの花粉対策をすることができます。
土間を広めにとる
土間に十分な広さがあると、パタパタと汚れを払い落して入室できます。大量の花粉を部屋に持ち込むリスクが減少します。
手洗い場所は動線を意識する
たとえば玄関近くなど、外出から戻ったら必ず通る場所に洗面所を設けると、小さなお子さまも手洗いを忘れにくくなります。
ランドリールームと脱衣室の配置
ランドリールームと脱衣室を併設させると、汚れた衣類を脱いですぐに洗濯機へ入れられます。外出から戻ったら脱衣室で部屋着に着替えるようにすれば、花粉の持ち込みも減らせます。
換気の工夫と家づくりの工夫を組み合わせ、辛い花粉の季節も快適に過ごせる住まいをつくりませんか。
家づくりに関するご相談は全国の無印良品の家モデルハウスでお受けしています。お気軽にお問い合わせください。