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自分は性格が悪いが、あんたも悪い。

言わせてくれ、自分は性格が悪い。
これから書くことは、何度か続けて書こうと思っているテーマで、徐々に掘り下げていこうと思う。感想は読んだ人の手に委ねる。ただ、この文章を通して観てほしいのは性格の悪い自分の眼を通した、彼女のストーリーだ。

B子とする。

B子とはまあまあ長い付き合いだ。彼女は中年に差し掛かる歳になる。
自分の代わりはいくらでもいるような職について、職場と人間関係を悪化させて転職。今はまた、代わりがいくらでもいるような正社員の職についた。

彼女には兄弟が複数人いて、結婚と離婚を繰り返している。そのたびに、子供を実家に連れて返ってくる。また兄弟たちは結婚と離婚を繰り返す。(狂ってないか?)B子はいまも実家で子どもの面倒をみている。休日は大量のアイスを買ってやるし、財布の痛みづらいマックにも連れて行く。
ここまで聞くと、B子は聖人に聞こえるだろう。立派である。

さて、B子本人について。
彼女は、学生時代から容姿が良くない。彼氏はできなかったというか、男達はあまり近づかなかった。しかし、明るい性格とキャラクターなので、数年もすれば周りに人があつまるような人間になった。

ただ、容姿は良くない。
肥満、芋臭い、そのあたりのどこにでもいる凡人感のある顔立ち。就職活動は困難を極めた。なぜなら、第一印象が良くない限り一般的な中小企業は採用に踏み切らない。ましてやスキルや経験もないような学生を、芋臭い学生の我等を、採用してなにになるというのか。そんな時代だったのだ。ルッキズムと言われるかもしれないが、同時代を経験した自分もこのような風潮を感じた。ルッキズムをはらんでいるのはこの文章ではない。実世界の就活業界だ。

なので、B子は就職をしなかった。できなかったのかもしれないが、そうは言わなかった。パート社員として、好きな業界で働き始めた。真面目な性格もあって、パートなのに社員並の仕事を勝手にしはじめ、1年で正社員になった。そして、職場のチームに指示を出したり、飲み会でみんなの不満を集めて上部に届けたり、そういうことをし始めた。

職場の人たちは、びっくりした。
なんで、この新人がそんなことやってんの?
と。

1年そこそこ職場にいて社員になったことは、成り上がった身からすると認められた気分であるが、第三者からすると新しい人間がなんかから回ってる…怖っ…という扱いなのだ。それがB子にはわからなかった。

ここで、文書を読み慣れているひとは違和感を持ったはずだ。
なぜこの文章を描いている"自分"は、B子の職場の人間が思っていることをわかったふうに書けるのか。当てずっぽうではない。

なぜなら、自分がB子の話を聞いていると、明らかに周囲の人たちが呆れていて、すこし諭したり怒ったりしているのに、B子だけが気付かずエピソードトークとして自分に話してくれるからだ。

なぜB子は気付かないのか。それは、経験が少ないから。

人とコミュニケーションを取るケースが、決まった人としか繰り返されなかったり、人との会話を雑にあつかったり、相手の気持ちを自分本位でしか考えなかったり、相手を自分と同じ環境だと思いこんでいることが、B子を盲目にして自主退職まで追い詰めた。
家族としかコミュニケーションをとらず、学生時代も周囲に寄ってきた人としかコミュニケーションをとらず、自分から何かを得ようとしなかった経験は増えることなく、その空洞は社会人になってから頭を殴ってくる。

経験が少ないまま大人になることは、恥ずかしい。
教訓めいた話ではなくて、ただ恥ずかしいことなのだ。
"恥ずかしい"とは、一過性の感情ではない。
ルールから逸脱している自分を戒める気持ちであって、このルールは誰かが勝手に決めたことではなく自分の経験から導き出される尺度なので、経験不足でルールを持っていないことが、苦しいのだ。
誰からも指摘されず、本人を追い詰める。仕事を、活躍の場を奪う。

B子は上記から職場内で人間関係のトラブルを起こし、窓際となり、職を代え、また誰でもできるような仕事についた。
そして、プライベートでは人に施すコストを減らした。自分の快に使うためのコストを増やした。そうでもないとやっていられないのだ。
悲しい速さで、B子は堕ちていく。

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