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『地獄変』芥川龍之介 「芸術にストイックだよね」と、同じ土俵に立って

このnoteは、本の内容をまだその本を読んでない人に対してカッコよく語っている設定で書いています。なのでこの文章のままあなたも、お友達、後輩、恋人に語れます。 ぜひ文学をダシにしてカッコよく生きてください。


『地獄変』芥川龍之介

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【芥川龍之介を語る上でのポイント】

①『芥川』と呼ぶ

②芥川賞と直木賞の違いを語る

③完璧な文章だと賞賛する

の3点です。

①に関して、通の人がモノの名称を省略するのはどの分野でも適用されます。文学でもしかり。「芥川」と呼び捨てで語ることで、文学青年感1割り増しです。

②に関しては、芥川賞は純文学、直木賞は大衆文学に贈られる賞です。それ以上は僕もよくわかりません。調べてください。

③に関しては、芥川はその性格上完璧を求めるが故に、短文が多いです。僕個人短くて凝ってる文章が好きなので、まさに芥川の文章は僕の理想です。


○以下会話

■芥川龍之介は物凄くストイックな作家

 「ストイックな人にオススメの小説か。そうだな、そしたら芥川龍之介の『地獄変』かな。芥川龍之介の中期の作品で、一人の絵描きが地獄の絵を描く話なんだ。芥川龍之介の芸術への真剣な姿勢が表れた作品なんだよ。

『地獄変』は、平安時代が舞台で、良秀という絵描きが主人公の話なんだよ。良秀は町で一番の絵描きで、当時の大臣に絵を頼まれるくらいの腕だったんだ。だけどこの良秀には一つ難があって、リアリティを重視するために実際に見た物しか書かないっていう特徴があったんだよ。だから絵を描くために、実際に鳥に弟子を襲わせたり、死体を掘り起こしたり、人を半殺しにしたりしてたんだよね。そのあまりにもストイックな芸術の追求する姿勢に、周りはドン引きで良秀を変人扱いするんだよ。一般常識よりも、芸術を優先するような男だから、普段の性格にも少し難があって、人間味が欠けててたんだよね。でも完成した絵はやっぱり見事だから、絵描きとしてのメンツは保ってたんだ。

■娘を愛する良秀

そんな良秀にも、一つだけ人間らしいところがあって、それは娘をものすごく可愛がってたところなんだ。良秀自身はブサイクで、影で猿って呼ばれてるくらいなんだけど、娘は良秀と正反対で美人で性格が良くて人気者だったんだ。そんな娘は町でも有名な美人だったから、大臣が気に入って、大臣の下で働かせていたんだよ。当時は平安時代だから、大臣に目をつけられて大臣の下で働けることはとても光栄なことだったんだけど、良秀は常識がないから、愛する娘を盗られたことが不満で、「娘を返してくれ」って大臣に直接言っちゃう無礼なところがあったんだよ。

そんなある日、大臣は良秀に地獄の様子を描いた絵を頼んだんだよ。良秀は喜んでこの仕事を引き受けて、実際に見た物しか書かない彼は例のごとく、弟子を鎖で縛ったり、血を出させたり、地獄の絵を描くためにあらゆる残虐なことをしたんだ。そうして絵も順調に描き進んでいって、最後、女性が乗った牛車が燃え上がる様子を描いたら完成する、というところまで来たんだよ。良秀は都合のつく女と牛車が用意できなかったから大臣にお願いするんだよ。「女と牛車を私の前で焼いてください」って。そうしたら、大臣は不気味な笑いを浮かべて了承するんだ。

■用意された牛車と女の正体

それから3日ほど経って、大臣は良秀を呼び、目の前に牛車と女を用意するんだよ。良秀はこれで絵が描けると思うんだけど、よく見ると、牛車に乗っている女は、愛する自分の娘だったんだよ。そんな良秀を尻目に大臣は牛車に火を点けて、娘と共に燃やし始めるんだよ。良秀はパニックになって慌てふためくんだけど、どうしようも出来なくて、焼かれていく娘を見ていると、段々と冷静さを取り戻してきて、魂がとりつかれたように恍惚とじっと火を見つめるんだよね。最初は慌てる良秀を見て大臣とその取り巻き達は喜んでいたんだけど、次第に芸術家の眼差しになる良秀を見て、グッと息を飲んで誰も何も言えなくなっちゃったんだよね。

それから1ヶ月して、大臣のもとに良秀から地獄の絵が届けられたんだ。その絵は恐ろしいほどの出来栄えで、叫び声が聞こえてきそうな本当の地獄の迫力だったんだ。絵を完成させた良秀は、間も無く家で首を吊って死んでしまって、その絵は「地獄変」と名前がつけられた、っていうお話。

どうだった。すごいでしょ。なかなかのストイックぶりでしょ。

■最後に

最初にもいったけど、『地獄変』は芥川龍之介自身の芸術への姿勢が表現されていると思うんだ。芥川は極度の完璧主義者だったらしく、完璧を求めるが故に、文章を何度も何度も削って純度を高めていって究極の文章を作り上げてたから、比較的に短い文章量の少ない作品が多いらしいんだ。確かに、この『地獄変』もそうだけど、『鼻』とか『蜜柑』とかも、全く無駄な言葉が見当たらないよね。僕は個人的に、長いタラタラした文章よりも、短くまとまっている文章の方が好きだから、芥川好きなんだよね。」


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