見出し画像

ごはんに小石が混じっていたら、


フィリピンは、いろんなものが粗い。
衣食住のサービスも日本と比べると60〜70%程度の完成度だ。(自分調べ)

それは「お米」に対しても同じで、脱穀の精度が低いためか、米粒よりひとまわり小さいサイズの小石を噛み締める時がごくまれにある。柔らかいごはんを噛んでいると思っている中で出くわすと、心理的なダメージが大きい。

何よりストレートに、歯が痛い。


一度経験すると、その後、ごはんを噛むことに慎重になる。

フィリピン人は、毎日、たくさんのお米を食べる。
その分、小石に当たる確率は高いはずなのだが……。


フィリピン人は日本人より米が好き

米は、日本食から外すことのできない重要な要素だ。だが、フィリピン人はおそらく、日本人よりもお米を愛していると思う。彼らの食事を見ていると、一食のバランスがめちゃくちゃ米に偏っているのだ。

画像1

(パブリックマーケットの米専門店)


日本人の食事は「一汁三菜」と言われるように、ごはんと味噌汁、おかずと小鉢が基本になっている。それぞれの家庭や好みによって、三菜が一菜だったり、洋食のときもあったりと変化はあるものの、「ごはん」をイメージする時はだいたい「お茶碗一膳」を頭に浮かべるだろう。

一方、フィリピンではまず、茶碗を使わずにお皿の上にごはんを乗せる。だから、ごはんの量にリミットがない。

お店で注文した際は、器で一人前を計ってから、ひっくり返してチャーハンのように盛って出てくるが、ごはんは大盛り食べるだろうというのは、どの店も想定しているし、グリルチキンのチェーン店『イナサル』では、「ごはん食べ放題」のプランもある。チキンは一個なのに、ごはんが食べ放題。

ごはんとおかずのバランスが逆転している。
大量のごはんに、少量のおかず。これがフィリピンスタイルのようだ。

この状況を見ると、やっぱりごはんが好きなんだろうと思う。

画像2

(ごはんの量に対して、おかずが少ない…)



初めてごはんと小石を一緒に食べた

「小石が入ってるかもしれない」という事前情報はあった。だから数日は警戒していたが、特に問題ない食生活を送れていたので、すっかり忘れていた。

そんなある日、「もぐもぐもぐもぐ…、ガチッ!(いたっ!)」

大当たり。 嬉しくない。

「くそー、コンニャロ…、農家め! 脱穀、頑張れよ、もぅぅぅぅぅぅ!」

当たった直後は、それまでのように無防備に米を食べられない。
いったん、状況を飲み込む必要がある。


農家を思いながら食べることはあるか

平常心を取り戻して、再び食べ始めると、自分に起きたことを客観的に見始める。

最初は、「なんでこんな石が入ったものを販売できるのかなー」と静かなお怒りモード。

「どんなふうにやったら石が混じるのかなー」、「日本と栽培方法違うのかなー」、「そもそも田んぼに石があるのか?」……などと続き、

だんだんと「農家のこと」を考え始めているのだった。

米に混じった小石をきっかけに、サプライチェーンの末端のわたしが、生産原点の農家を想像している。文字通り、一石を投じられたかたちになった。

画像3


生まれてからこれまで何キロの米を食べたかわからないが、石が入っていたことは一度たりともない。
もしも異物が入っていれば、ラベルに書かれている会社にクレームをつける。そうすれば、会社側が100%謝り、弁償するという流れになるだろう。日本は、異物を混入するまいと必死に取り組んでいる。安心して食べられる。いいことだ。


ただメリットがあれば、デメリットもある。
それは、完璧なシステムだからこそ作り手が一切見えない、という側面だ。

野菜も、肉も、魚も、誰かが種を播き、誰かが育て、誰かが採っている。
あまりにも完成度の高い流通システムゆえに、スーパーやコンビニしか知らない子供たちの中には、魚が切り身で泳いでいると思う子もいるらしい(←本当かわからん、直接会ったことはない)。

さすがにそうまで思わなくても、どこにでもスーパーとコンビニと飲食店がある日本では、「食べ物が手に入らないかもしれない」という危機感を覚えるタイミングがない。

画像4

(ロックダウン中のフィリピン。外出制限もあり、食べ物を入手しにくかった)


「いつでも手に入る」という前提からは、「食べ物は有限だ」という発想にはならない。というか、なれない。だから「大事にしよう」とか、「廃棄を減らそう」という行動にも至らない。というか、至れない。

日本の食料廃棄量が世界の中でも多い方なのは、この完璧な流通システムのおかげで、見えないものが増えているからじゃないだろうか。。。



ごはんに小石が混じっていたら、「あー、誰かが取り損ねたんだな、これ」と「誰か」が浮かんできたよ、という小噺(こばなし)でした。

※後日、パン屋でココナツパンを買って食べていた時も、小石が入っていました。ごはんだけじゃ、なかった!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?