私がレコメンドしたい書籍について

【夜想】

 ペヨトル工房(現 ストゥディオパラボリカ刊)が刊行していた幻想文学や美術がテーマの雑誌。写真も豊富に掲載されているが、どちらかというと文章がメインなので読み応えがある。テーマも芸術家個人にスポットを当てたものやヴァンパイアや少女、人形、フリークスなど多岐にわたる。現在ステュディオパラボリカ名義で出版されている『夜想 yaso』は新刊として手に入れることができるが、ペヨトル工房で出版されていた旧夜想は古書店やフリマアプリなどで購入していただきたい。各界の著名人にインタビューしている他、山本タカトや丸尾末広両氏のイラストなども掲載されている。


【TH(トーキングヘッズ)叢書】

 季刊のサブカルチャー雑誌。夜想と同じく毎号テーマを設定してそのテーマに関わる論考や書評などを掲載する。季刊であるため、刊行された時期に行われるイベントの紹介や、公開された、または行われた映画や公演のレビューなども書かれている。夜想よりはサブカルチャー及びアンダーグラウンドカルチャーの最前線を追うことができるので、私は単に面白い読み物としてだけでなく、上記のような文化の現在位置を把握できる情報収集源としても活用している。


【ゴシックハート】

 小説家、文芸評論家として活動している高原英理氏がゴシックカルチャーを様々な視点から批評し、まとめたものがこの本である。色んな出版社から刊行されてきたが最近はちくま文庫から新しく発売されていたように思う。ゴシックな文化とは何かをとりあえず知りたいという方にまず薦めたいのが本書。ゴシックに向かう人々の意識についてや、テーマごとに様々な分野の作家や作品を紹介してくれているので、ゴシック入門書として最適だと私は考えている。


【さかしま】

 フランスの文豪、ジョイス・カルル・ユイスマンスの長編小説。先ほど紹介した『ゴシックハート』でゴシックカルチャーの概略を理解できた方に特に薦めたい書籍である。世紀末芸術を代表する作家や画家、ラテン文学の大家などの個人名が際限なしにバンバン登場するので、象徴派や耽美派の芸術家や作品を詳しく知りたい方にはおすすめである。今現在は澁澤龍彦が翻訳したものが河出文庫で出版されているので大分手に取りやすくなったように思う。「デカダンスの聖書」と称された伝説的書物を是非読んで頂きたい。


【少女椿】

 月刊漫画雑誌として2002年まで発行されていたガロ誌などに作品を発表し、俳優や美術担当として東京グランギニョルという劇団にも所属していた漫画家・丸尾末広氏の代表作。かつて絶大な人気を誇った絵師、高畠華宵に影響を受けたというその画風はレトロでどこか懐かしさが漂いつつも、その芸術性には時代を超越するものがある。
 孤児となってしまった少女が見世物小屋で働かされるという児童労働をテーマにした物語や複数のショッキングなシーンなど読者を選ぶ内容のものであるが、それらのグロテスクな場面を美麗且つ蠱惑的な絵で昇華している様は高畠華宵が活躍していた大正から昭和初期にかけて興ったエログロナンセンスな芸術作品を彷彿とさせる。
 丸尾氏の漫画は一般の新刊書店ではなかなか置いていないのだが、ヴィレッジ・ヴァンガードでは彼の作品を多数取り揃えているので興味のある方は是非そちらの方で手に入れて欲しい。

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