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ゼルジーとリシアン

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2021年1月の記事一覧

11.不吉なきざし

 リシアンは、居間で父と母が話をしているのをたまたま聞いてしまった。
「ウィスターさんは、いよいよ土地を手放すようだね、クレイア」
「ええ、そうなのよ。市がこっちのほうまで道路を敷きたいらしいの。以前から、ウィスターさんと交渉をしていたらしいわ」
「あの森も、すっかり無くなってしまうわけだ。この辺りもたくさんの店ができて、賑やかになることだろうな」リシアンの父ダレンスが言う。
「そうなるでしょうね

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12.氷の国

 翌朝、3人はスズメがさえずりだすよりも早く起きた。
「おかあさん達、さすがにまだ寝てるわね」リシアンが小声で言う。「キッチンへ行って、シリアルを食べましょ。それから、お昼に戻らなくて済むよう、サンドイッチを作っていきましょうよ」
 そっと階段を降りて戸棚からシリアルを出し、冷たい牛乳を注いで食べる。食べ終わると食パン入れからパンを取り出し、冷蔵庫にあるハムやチーズ、ジャム、マーガリンをたっぷり塗

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13.太古の森

 翌朝も3人は朝早くに起き、簡単な朝食を済ませると、バスケットにサンドイッチを詰めて出かけた。
「今日行くところは『太古の森』って言ったわよね?」リシアンが確認する。
「そうよ、リシー。石ばっかりのつまらない国。でも、あの魔法使いは、なんだか含みを持たせていたわね」
「まあ、いいさ。『氷の国』みたいな危険はないだろうし、行ってみれば、どんなところかわかるんだからね」パルナンは言った。
 いつものよ

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14.ロファニーとベリオス

 伝説の魔法使いが2人とも見つかって、ゼルジー達は一安心した。あとは魔王ロードンを探し出し、対決するだけである。
「今日は焦って冒険をする必要はないわね」リシアンが言った。
「ええ、こっちは5人揃ったんだし、いくら魔王がすべての元素魔法を使えるっていったって、人数が多いんだから負けるはずないわ」ゼルジーものんびり答える。
「ゆっくり朝ご飯を食べて、お昼には帰ってこられるね」考え深いパルナンでさえ、

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