見出し画像

ひとりデザイナーで事業を支えるための、仕事の進め方や考え方まとめ

こんにちは、クックパッドのデザイナーの上野です。2021年1月でやっと入社して半年になります。

クックパッドでは料理を楽しみにするモノのつくり手と料理のつくり手が集うプラットフォームKomerco(コメルコ)でひとりデザイナーとして、毎日忙しくも楽しみながら時には悩みながら事業をつくっています。

今回は、私の仕事の進め方や考え方を少しだけ書こうかなと思います。 いろいろな失敗をしてきたからこそ気付けたこともたくさんあったので、そのあたりも書いていきます。

💪今後のための「準備をする」

新規事業等の立ち上げメンバー以外は基本的に途中からの参加になります。その場合はまず下記のキャッチアップなど準備をすることから始まります。

■ 事業の理解(ブランド、ユーザー、etc)
■ 業界の理解
■ デザインデータの理解
■ 裏側の仕組み(実装、過去の経緯)
■ メンバーのスキルと人となり

■ 事業の理解(ブランド、ユーザー、etc)と業界の理解

ここに関してはとにかく自分の事業や、他社、業界にからむ事を情報収集も含めてとにかく自分のサービスを使いまくります。競合にあたるサービスも使いまくります。使ってみないとわからないことが多いので、自分をユーザーと同じ環境まで客観的な思考は持ちつつも「ハメにいきます」。投資と言う名の浪費をするので、お金が貯まりません。。。

買ったもの

※もともと作家モノのうつわやガラスは好きでしたが、確実に拍車がかかりました😅

その際に初期ユーザーの感覚と思ったことを忘れないように、キャプチャーとメモを残しておきます。人間は慣れる生き物なので、当初「使いづらい...」と思っていても忘れます。貴重な初期ユーザー感覚はそのときにしか手に入れられない宝物なので大切に取っておきます。

■ デザインデータの理解

いままでの経験上デザインデータが揃っていることは稀です。最新の実装とデザインデータが違うそもそもデザインデータが存在しない事が多いです。なので「デザインデータが正しくない」という意識を持っておきます。

とは言え、私もたまにやるのですが、微妙にデータが先祖返りしていて、そのデザインデータをエンジニアに渡してしまい間違うという事が起こってしまう事があります。(本当にごめんなさい🙇‍♀️)

そのためデザインデータはどこかで必ず整える必要はあります。
ただデザイナーが一人だと手は2本しかないので、「後で直す」という判断も必要です。

改善回数が多かったりやスピードの速い場合のデザインデータの考え方をまとめています。クックパッドのデザイナーが集まる会で発表した資料です。(チラ見せ部分は無いです。すみません)

私がデザインデータを整える時に参考にしている本です。尊敬するデザイナーに頂いた本です。英語ですが私でも読めたので大体の方が大丈夫なはず。

画像1

ちなみにデータを直す際は、エンジニアの実装しやすさを最優先にします。
データを整え直す前には必ずエンジニアとミーティングを設定して、「こうしてみたんですがどうですかね?」「このまま作り出して大丈夫そうでしょうか?」という場を設けます。

■ 裏側の仕組み(実装、過去の経緯)

フロントエンド、バックエンド、実装の経緯を逐一聞いて教えを請います。

そうすることで何が良いかというと、実装の状態とエンジニアの現状把握もできます。「あ、ここは過去の負債があってできないのか。」などなど。つまり将来の改善や実装へのヒントが隠れています。そしてその会話からエンジニアの得意不得意、やりたいetcさまざまな情報のキャッチアップもできます。ZoomでもカメラをONにしてもらい、表情や声のトーンをちゃんと観察しましょう。

■ メンバーのスキルと人となり

事業、チームには歴史があります。そして、事業をつくり支えてきたメンバーにも歴史があります。背景を知っておくことは決してマイナスにはなりません。

入社3ヶ月前後は信頼関係の構築の大切な時期です。ここでコケるとリカバリーが大変なので、入社して3ヶ月は緊張しながら仕事をしています。そのため精神的に少し疲れることが多いです。メンバーはあなたの仕事に対する姿勢や進め方、アウトプットを見ています。

⏱使える時間を「確保する」

事業部でひとりデザイナーだと、デザインと名の付くものには全て関ることになります。そしてクオリティの担保は自分の役目です。

■ リサーチ
■ UIUX(アプリとWeb)
■ LP
■ ADバナー
■ 印刷系のデザイン
■ 営業資料
■ 外部業務委託のディレクション
■ チームビルディングなどのファシリテーター(ここはチームに慣れてから)etc

どれが大事ではなく、どれも大事なので、優先順位づけと工数見積を付けたら、デザインタスクを確実にこなしていきます。とにかくデザイナーがひとりだとやることが多い!

ただ頼られるのは有りがたいといつも思います。

デザイナーのタスクは後ろにエンジニアが控える場合が多いので、デザインの遅れは開発の遅れ=事業成長の遅れに繋がります。そのためスケジュールに関しては遅れないようにします。

とは言え、作業時間以外にもミーティング(定例や突発)が入ったりで、集中して作業できる時間がどんどん減っていきます

一日の勤務時間は9時間。デザイン作業に使えるのは、昼休憩とTeamの定例ミーティング(昼会)で1.5時間を引いた、7.5時間✕5日=37.5時間/週。祝日が入れば7.5時間✕4日=30時間/週この作業時間は減ることはあっても、残業をしない限り増えることはありえません。

「数時間の残業をしてデザインを一つ仕上げてくれるより、その時間で料理をして欲しい。」
「食事や睡眠をしっかり取って、体調や心を健康に保って欲しい。それが良い仕事をするには必要。そうでないとピュアに事業の事を考えにくくなる」

現在の上長との1 on 1でそう言われた時の衝撃はいまでも覚えています。
今以上にいかに時間を効率的に使うかを考えるようになりました。

私の場合、特にタスクが詰まっている時期は自分が集中して使える時間を把握するためにカレンダーに予定と時間を書き込みます。これは自分のためでもありチームメンバーへ「デザインするのに集中した時間が欲しいのです」というすぐにできる自分の状況の可視化です。見える化していきましょう。

画像3

※パープルは自分で使える時間、青は誰かとのミーティング、緑はオフィス出社日(できるだけ予定は開けておく)

🚀プロジェクトの「進め方」

まずミーティングの濃度を濃く、且つ、デザインから実装までのスパンをできるだけ短縮しスピーディーに進めることを目指します。目標とやるべきことが大体決まったらアサインメンバーと共にプロジェクトをスタートさせます。

(1)キックオフ
ステイクホルダーとなりうるメンバーで行います。理由は、この段階で「実は超大変」「実は超重要」が早めにキャッチアップできる場にもなるので関係しそうなメンバーは必ず入ってもらいます。デザイナーはフロントだけの問題ではないバックエンドに紐づいた「裏側の実は超大変」 を早めに知るのは結構大事だったりします。

■ 何が難しそうか?できるのか?
■ それぞれのメンバーで必要そうな工数の認識を合わせる
■ タイムスケジュールの確認(リリース時期の調整)
■ その上でデザインが間に合うか?他のプロジェクトと鑑みてもう一回工数計算と確認をする。

必要なら、さらにヒアリング。自分の中で疑問や質問が全て無くなったな、ぐらいではじめて自分のひとりの作業に入ります。

場合によっては、ワイヤーがあった方が議論が進みそうな場合は、キックオフにワイヤーを準備していくケースもあります。

(2)自分ひとりでの作業
デザイン着手開始のこの時には、なぜ?が出きった状態です。ワイヤーをデザイナーだけで一度考えるターンです。

(3)ワイヤー&本番UIを確認しながら仕様を詰めていく
ワイヤーを書きながら、実装可能性をエンジニアさんへ軽く確認程度のヒアリングをしながらデザインを完成に向かい組み立てて行きます。

 🙆OK
→そのまま進める

 🙅‍♀️NG(実装コストが高そう&影響度が大きい)
 →デザインを調整する。

とにかく、デザインを見ながら議論できるように完成前でもデザインを共有しながら進めていくことが大事です。この時に気にすべきことは、

■それは実装可能か? 
→理想のデザインは実装不可能なことが多い。(システム要件&リソース要件がほとんど) 
 ■ 最適最速で可能か?
■それはKPIを満たすものか? 

このあとで、施策の中には実装前にプロトタイプをユーザーに当てて、ユーザビリティテストなどを軽くやったりもしますが、とにかく早く議論するためにデザインをみんなで見られる状態まで持っていきます。クラウドでデータをメンバーがいつでも確認することのできるツールがおすすめです。

👉デザインの「組み立て方」

とにかくはやくみんなで見られる状態に持っていく理由は、実際にデザインを見ないと気付けない事や見逃す事もあるからです。とにかくステークホルダー全員が同じものを見て、認識を合わせながら議論するというのが重要だと思っています。そのためスピード感をもってデザインを組み立てていきます。

ただし、すぐにつくり出すというわけではなく、準備7割本番3割の割合でデザインを組み立てていきます。

ワイヤーを引くまでに、準備の7割のほとんどが含まれています。

【7割の内訳】
✅ なぜこの画面が必要なのか?デザインするのか?
✅ 環境要因(使用環境要因)
✅ 使用するユーザー層(ユーザー理解)
✅ インターフェイスとして機能を満たしているか?
✅ 矛盾点はないか?自分たち都合の解釈はないか?
✅ 疑問点や不明点がアサインメンバー内に残っていないか?
✅ ユーザーが使いやすい&使いたくなるような仕組みのデザインになっているか?(ペインポイントとゲインポイントをクリアしているか?)
✅ フックモデルは考慮されているか?
✅ 目的を満たしているか? KPIを満たすデザインになっているか?

※プロブレムインタビューはほどほどに。ソリューションインタビューは施策の性質で判断。

デザイナーがワイヤーを引いている時の頭の中は、図のような事を繰り返しています。この作業をしている時は、カレンダーをブロックして考えることに集中できるようにしています。

思考

🏄‍♀️まとめ

いろいろと偉そうに書いてきましたが、私もはじめはできませんでした。

昔、エンジニアをはじめいろんなメンバーにとても迷惑をかけました。嫌われた事もあったし、まったく信頼をしてもらえなかった事もありました。こうなるともう何を言っても、どんなに良いデザインをつくってもダメになります。事業をつくるデザイナーに限らず、お互いチームメンバーを信頼できなくなったチームは建設的な議論ができなくなります。つまり「なにも言えなくなる」チームになります。

事業の成長に必要な事も「なにも言わなくなる」のです。

ただ誤解して欲しくないのは、それぞれの役職、職能、職歴、プライベートな事情、それぞれみな前提が違うので100%分かり合うことはまず不可能です。分かりあえないという事を前提にお互いの認識の溝や感覚の違いを埋めていく、そのプロセスが大切なのだと思います。あとは尊敬と感謝の気持ちを持つこと。礼儀って大事です。

デザイナーにはデザイナーの、エンジニアにはエンジニアの、BizにはBizの、事業責任者には事業責任者の正しさがあります。お互いの正しさがぶつかり衝突することも良くあることだと思います。

その場合、亀裂が入るか、納得して更に前進させることができるかの大事な分かれ道は、信頼関係が構築することができていて、相手に自分の言った事を信じてもらえる土台が準備できるか?にかかっています。

なのでデザイナーのまず最初の仕事は、
チームメンバーとの関係性の構築で、
それはデザインと同じぐらい大事だということです。

伝え方」「伝える場」「伝える時期
正しい事を言っていても、聞いてもらえない、伝わらない、挙句の果てには拒絶されてしまう。人と人が集まって何かをしようとする以上「この人が言うなら信じてみよう、任せてみよう」と思ってもらえる関係性の構築、相手の納得する方策の提案、それも大事なスキルだと、いつも痛感しています。いまだに失敗するときもあるので自分への戒めのためにも書いておきます。

👉相手の立場に立って考え、相手の仕事がスムーズにできるようにデザイナーとしてできることは全てする。
👉成功は周りのおかげ。失敗は自分のせい。
👉できない時はメンバーの負担にならない範囲で甘えてみる。
👉対策を考え実践し繰り返さない。

以上です。これはきっとどんな業界や職種でも共通なような気がします。

自分以外の誰かと一緒に働くことに課題を感じている方におすすめの本2冊です。私も読んで目からウロコが落ちた本です。

画像2

左の『他者と働く』も私の尊敬するファシリテーターの神だと思っている方に「この本読むと良いよー」と頂いたものです。右の本は『料理の四面体』という料理の本(レシピ本ではありません)なのですが、火・水・油・空気の4つの要素を元に説明してくれるという超論理的思考を学べる本です。どのような事象も分解して考えてみる面白さを教えてもらいました。面白がる強さって、どんな困難にも折れないのでおすすめです。

「Komerco(コメルコ)」でモノをきっかけに料理が楽しくなる体験をしてみてください

画像5

私はちょっといい料理道具、お気に入りのうつわ、おいしい食材があることで「料理しようかなぁ」とモチベーションが上がったりします。

日常の料理を今よりもっとワクワクするものにしてくれるモノが集まっているのが「Komerco(コメルコ)」です。ぜひ自分のお気に入りを見つけて、料理を楽しんでください。
👉iOSアプリ
👉Web版

「Komerco(コメルコ)」はまだまだちいさな事業で、もっともっと成長させていかなくてはなりません。改善したいことが山盛りです。事業をつくるのに大事なのはです(それと同じぐらいお金も大事です)。

私と一緒に働いてやっても良いよと言うエンジニアの方はぜひエントリーをお願いします🙏


デザイナーのエントリーもお待ちしています🙏

また、毎週クックパッドのデザイナーが持ち回りでnoteからの発信をしています。ぜひこちらフォローしていただけますと幸いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?