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【小説】面影橋(十一)

 そういう変なことは考えるものではありません。私の元に北海道からショッキングな知らせが届いたのは、ちょうどそんな思考の無限ループに陥っていた折でした。例の北海道に帰った子が、自殺未遂を起こしたというのです。何度かメールしても返事がなかったので心配はしていたのですが、帰郷後は北国の初夏の明るい日差しや新緑の香りを楽しむこともなく、ずっと家に引きこもっていたらしくて、それがある日、手首を切って病院に搬送されたという話でした。もともと学生時代から気分の浮き沈みが激しく、よくリスカをしていたそうなんですが、そんなこと私は全く知りませんでした。いえ、そもそも私は他人に関心などないのかもしれません。
 この一件でさらにあることないこと風評を流されました。私は何度かキャラ変をしていて時々どれが本当の自分か分からなくなるのですが、大学時代は孤高の毒舌キャラみたいなポジションで、敬して遠ざけられている感じを楽しんでいました。実際のところはかなり嫌われていたということなのでしょう。そういうの見ないようにしているのですが、SNSの書き込みとかも散々だったようです。冷酷無比な女という評価は確定し、私の立場はますます悪くなりました。もう母校の研究室には戻れないかもと、数少ない友人、ぎりぎりそう言っていいと思うのですが、陰キャで似た者同士の友の身を案じるよりも、自分の打算を第一に考えているおのれのエゴに気づき、嫌な気持ちになりました。

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