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雑談#2 今では違和感のある初代「ガンダム」の世界観

 人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀が過ぎていた。地球の周りの巨大な人工都市は人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった。
 宇宙世紀0079、地球から最も遠い宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。この1ヶ月あまりの戦いでジオン公国と連邦軍は総人口の半分を死に至らしめた。人々はみずからの行為に恐怖した。戦争は膠着状態に入り、8ヶ月あまりが過ぎた。

機動戦士ガンダム 第1話「ガンダム大地に立つ!」ナレーション

 永井一郎の、重々しいナレーションではじまる「機動戦士ガンダム」第1話。

 今回も、このナレーションから、現代だからこそ感じる違和感について、話していこうと思います。放映当時には感じなかったのに、今だと違和感ありまくりの設定が、ここにありますよね。
 そうです。「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって」という一文です。

 国連人口基金駐日事務所のホームページに掲載されている2015年当時の人口推移予想グラフを見てみると、1950年から1987年の間に、急激に全世界の人口が増加していることがわかります。初代「機動戦士ガンダム」が放映された1979年は、人口増加が脅威となっていた時代でした。だからこそ「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させる」という発想は、何の違和感もなく受け止められていたのです。

 ここでは、2050年に人口98億人に達すると予想されていますが、最新のグラフを見てみると、2022年に80億人に達したものの、2050年の予測は97億人と、8年前より1億人減少しています。人口増加ペースが、ほんのわずかに鈍化していることがわかります。

 さらに、日本経済新聞2021年8月23日の記事を見てみると、世界の人口は2064年をピークに減少する、という予測が発表されています。このグラフをみると、2050年前後を境に世界の人口は減少傾向に転じ、100億人を突破することはない、という予測が見て取れます。

 ガンダムの世界観の土台となっているのは「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって」、というスペースコロニーの成立した未来です。そのためには、私は少なくとも総人口が150億に達し、そのうち50億を宇宙に移民させていると考えました。しかし、そうした設定は、現代ではもはや現実的ではなくなってきたのです。

 それに先んじて、日本ではすでに人口減少局面に入り、昨今では産業界での人手不足が問題となっています。私は「日本100名城」「続日本100名城」スタンプラリーに参加し全都道府県を旅した経験がありますが、地方では、耕作放棄されて荒れ果てた農地、廃屋ばかりの集落のある場所を数多く通り過ぎてきました。そうした風景を目の当たりにすると、わざわざスペースコロニーなど造らなくとも、移住する場所はたくさんあるではないか、という思いに駆られます。

 そう考えていくうちに思ったのは、おそらく「増えすぎた人口」というのは、ある意味偏在しているということです。人類はみな、地球ならどこでも住みたいわけではなく、快適な「都市生活」をこそ求めているのです。都市に人口が集中し、地方は荒廃する。富裕な地域に移民が押し寄せ、貧困地域は荒廃する。これが、今後ますます顕著になってくるのではないでしょうか。
 そして、そこにまだスペースコロニーの出る幕はあります。スペースコロニーは「都市生活者」の楽園です。そこには都市しかありません。みんなが地球上で都市生活ができないとすれば、増えすぎた「都市生活希望者」を宇宙に移民させる、というのはアリかもしれません。逆にいうと、都市生活に慣れ親しみ、自然から切り離された人類にとって、地球は広すぎ、大きすぎる、ということなのかもしれません。


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