むちむち

本好きな在日コリアン/ソーシャルワーカー

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最近の記事

大切な本㊿「コロナ禍と出会い直す 不要不急の人類学ノート」

もやもやを言語化する 磯野真穂さんの著書を手に取ったのは摂食障害に関する文献を書かれていたから。それまで読んでいた摂食障害の関連文献とはちょっと違った視点があって、彼女の専門領域だという文化人類学って何だろう??って興味を持つようになった。 別でとりあげた哲学者宮野真生子さんとの共著『急に具合が悪くなる』では、死を目前にする相手へ全力でことばを投げかける彼女の真摯な一文一文に胸打たれたけれど、Podcastでの語り口には硬さもなく気軽に聴けるのが楽しい(❝てきとうイソノ❞

    • 大切な本㊾「やさしい猫」

      追いかけたい女性作家②中島京子さん ご両親ともにフランス文学者で大学教授、お姉さまはフランス在住のエッセイスト。知性にも品性にも恵まれた直木賞作家さんだけれど、その作品はどれもユーモアがあって全くとっつきづらいところがない。そして外れなく、短編も長編も、どの作品も本当に面白い!! 「妻が椎茸だったころ」「ハブテトル ハブテトラン」とか、どんな内容なんだろう??って想像力をかきたてるタイトルづけも楽しい。 特に最近の作品には社会問題を見つめる視点がさりげなく含まれている。ウ

      • 大切な本㊽「フードラッピング +50のおいしいレシピ」

        お菓子作りにハマってました 10代から20代にかけて、狂ったように(笑)お菓子作りにはまっていた時期があった。実家のキッチンには5段のオーブンレンジがあって、料理は苦手だった母親も普段からケーキやマドレーヌ、クッキーなど焼いてくれたのは良い思い出。母が焼いてくれるシナモンたっぷりの素朴なりんごケーキは今でも大好物。 雑誌「non-no」のモデル・はなちゃんのアメリカンスイーツのレシピをひとつひとつ真似たり、図書館のレシピを片っ端から借りて家でも簡単に作れるものをピックアッ

        • 大切な本㊼「さらば、哀しみの性 高校生の性を考える」

          性教育について考えてみた まずタイトルに惹かれる河野さんのロングセラー。10代の頃一度は手に取っているはずなのに内容はすっかり忘れていて、、 最近読み返したらover the sunの心にもずしりと刺さる一冊だった。10代の自分、どう受け止めていたんだろう… 性について思うとき、浮かぶイメージは人それぞれだろうけれど、私自身は常にもの哀しさを想起させる。過去に経験した出来事も大きく影響しているのだろうな。怒りでも忌避でも愛憎でもない、まさに哀しみ。 日々目にする報道や

        大切な本㊿「コロナ禍と出会い直す 不要不急の人類学ノート」

          大切な本㊻「伴走者は落ち着けない―精神科医斎藤学と治っても通いたい患者たち」

          精神科医・斎藤学のめくるめく世界 また面白すぎる本に出会ってしまった!! 斎藤学氏はアダルトチルドレンの概念を日本に広めた方。 私の中で斎藤先生と信田さよ子さんは嗜癖問題の分野における二大巨頭。 20歳で上京して間もないころ、何をきっかけに知り合ったのか忘れてしまったけれど、NABAに通っているという女の子がいた。過食嘔吐を繰り返しているという彼女はいつもスキニージーンズを履いてて表情には生気がなく、家族との折り合いが悪いのだとこぼしてた。精神科の主治医の先生はいつも過

          大切な本㊻「伴走者は落ち着けない―精神科医斎藤学と治っても通いたい患者たち」

          大切な本㊺「ひろしま」

          広島へ思いを馳せる 猛暑厳しい夏だった。8月は長崎・広島に原爆が落とされた日、そして終戦記念日と続く月だ。 通っていた高校は修学旅行もなくて訪れる機会を逃していたけれど、やはりこの目で見ておきたいと昨年やっと広島へ。地元の方が出迎えてくださって、一緒に平和記念公園をまわった。そぼ降る雨の中で仰ぎ見た原爆ドームは静かにひっそり佇んでた。 Social Book Cafeハチドリ舎へも訪れることができて、店主の安彦恵里香さんともたくさんお話でき、様々な思いが去来した広島旅と

          大切な本㊺「ひろしま」

          大切な本㊹「小山さんノート」

          すぐそばに、いつもとなりに 去年仕事の異動に伴い、JRはじめ複数の鉄道路線が乗り入れる総合駅近くに引っ越した。予算はないのに利便性を最優先にしたから築年数は古いし決して広くもない(端的に言って狭い笑)マンションだけど、とにかく便利で大家さんもとても良い方で、心から気に入っている一人の我が家。 仕事や外出のあと電車を降りてそのまま帰るのではなく、駅前のスーパーに寄ると迂回した帰り道になるのだけど、その道すがら通る橋脚付近に一人の女性が生活している。 引っ越すずっと前、困窮者

          大切な本㊹「小山さんノート」

          大切な本㊸「黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い」

          私も政治に・選挙に参加したい! これは言い訳でもあるのだけれど…私の家族は在日永住外国人だから祖父母も両親ももちろん選挙権を持っておらず、政治に参加しているという意識が希薄どころかずっと「無」だった。 本来選挙権を得るはずの(当時)20歳になったからといって何も変わらず。地方参政権もない自治体在住だから「選挙のお知らせ」を受け取ったことも選挙会場に行ったこともない。投票するときの記入の仕方も(実感としては)全く知らない。 この歳(40代)になってやっと、政治と生活が切り離

          大切な本㊸「黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い」

          大切な本㊷「長い道」

          凛々しく生きる 社会福祉士仲間からすすめられた映画「かづゑ的」。 春にポレポレ東中野へ行ったときに予告を観ていて行きたいなとは思っていたものの、日常の中ではなかなか映画館まで足を運ぶまでに至らない。そんな中ちょうど監督が名古屋へも舞台挨拶に来られると知り、この機会逃さじと行ってきた。 国立療養所長島愛生園で暮らすかづゑさん。冒頭いきなり入浴介助を受けるシーン、ご本人が監督へ撮影を提案したのだそう。 赤裸々に生き様をさらけ出すかづゑさんだけど、ハンセン病患者(ご本人のいう「

          大切な本㊷「長い道」

          大切な本㊶「さよなら!ハラスメント」

          モノ言う女性はカッコイイ。でも… 女子アナという経歴などからは手の届かない別世界のひとに感じてしまいがちだけれど、そのご著書を読むと親しみも感じられるひと、小島慶子さん。 母との関係性に悩まれたこと、摂食障害や不安障害の経験、ADHDの診断を受けたことなど…どんなに才能に溢れる人でもすべてが順風満帆なわけではない。そんなことは当然なのだけれど、経験や実感を通して語られる文章はしっかり胸に刻まれる。 対談や共著も多く出されているのだけれど、そのお相手選びも毎回素敵。武田砂

          大切な本㊶「さよなら!ハラスメント」

          大切な本㊵「自転しながら公転する」

          もっともっと読みたかった 3年前急逝の報を知ったときは信じられない気持ちだった。ジュニア小説時代の作品は読んでいないのだけど、高校生の頃に彼女の作品に出会い「パイナップルの彼方」「ブルーもしくはブルー」あたりからの作品はたぶんすべて読んでいる。 純粋に面白いし、非凡でないすぐ隣にいそうな女性像を描く才能が抜群に優れた作家さんだったと思う。もう新作を読めないのが本当に悲しい。 うつ病に苦しんだ時期、離婚や再婚を経ての生活、突然のがん宣告…ご自身のことも赤裸々に綴られていて、

          大切な本㊵「自転しながら公転する」

          大切な本㊴「戦争は女の顔をしていない」

          「小さき人々」の声をすくう 昨年、急遽年度途中で異動があり5か月だけ福祉相談センターでの勤務があった。同庁舎内に国際プラザ(多文化共生センター)があって、国際交流や外国文化に特化した図書コーナーもあり、そこでコミック版「戦争は女の顔をしていない」を手に取ったのがアレクシエーヴィチに出会うきっかけだった。 恥ずかしながらそれまでアレクシエーヴィチという名前も、彼女がノーベル文学賞作家であることも知らなかった。コミック版は正直イラストのテイストがあまり好みではなかったのだけど

          大切な本㊴「戦争は女の顔をしていない」

          大切な本㊳「もうすぐ50歳」

          同じルーツを感じて 自分は親の方針もありずっと日本の公立学校に通っていたけれど、日本学校に通う在日コリアン「日校生(イルゴセン)」としての活動にも参加してた。「スプリングフェスティバル」という日本の私立高校とのイベントがあって、その練習などで指導員(チドウォン)だった一恵オンニにお世話になったのが最初の出会い。そこから長くお付き合いが続いている、大切な同胞のひとり。 日本学校を出て日本社会で暮らしているとなかなか在日のネットワークは広がらないけれど、朝鮮大学を出て朝鮮学校

          大切な本㊳「もうすぐ50歳」

          大切な本㊲「精神病とモザイク タブーの世界にカメラを向ける」

          映画から精神医療を思う 想田和弘監督が岡山県にある「こらーる岡山診療所」の日々を追ったドキュメンタリー映画「精神」。一作目は山本昌知医師を訪ねる患者さん、第二弾は山本医師のお連れ合いにもスポットをあてられている。いずれも音楽も特別な演出もなく淡々と日々を映し出す作品なのだけれど、だからこそか、登場人物のお人柄やあたたかな品性のようなものが静かに強く伝わってくる。そしてカメラのこちら側にいる想田監督の真摯なまなざしも。 精神科病院の廃絶を最初に訴えたイタリアの精神科医・バザ

          大切な本㊲「精神病とモザイク タブーの世界にカメラを向ける」

          大切な本㊱「ナンシー関大全」

          その辛辣さがたまらない 20代はじめ、東京は中野区に住んでいたころ。お金もないから読む本はもっぱら地域の図書館で調達していたけれど、地域柄もあるのかサブカル系の蔵書も充実してて、色んな種類の雑誌をつまみ食いして読めるのは本当にありがたかった。ファッションやコスメのページはすっとばし(笑)コラムや対談記事を読むのが好きだったのだけど、消しゴム版画の添えられたナンシー関さんの批評コラムはいつ読んでも切れ味鋭くまっとうで、すぐに彼女の虜になった。2002年に39歳で亡くなられてい

          大切な本㊱「ナンシー関大全」

          大切な本㉟「STYLE BOOK」

          大好きな表現者、宮沢りえさん 自分が小学生の時に大きな話題になった「Santa Fe」。東京から遊びに来た従姉妹たちと行ったケーキ屋さんに置いてあって、姉たちはキャッキャ言いながらページをめくっていたけれど、自分は気恥ずかしくて一緒に見られなかった記憶がある。 その後どこで手にとる機会があったのかはっきり覚えていないけれど、大人になって見た彼女の肢体は全くいやらしさがなくて神々しく輝いてた。今はぐっとスリムになってしまったけれど、いつもどこか哀し気な雰囲気を纏う彼女の演じ

          大切な本㉟「STYLE BOOK」