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スイングバイで失われるもの(1)

 宇宙ロケットを使って飛翔体を飛ばす際に出てくる用語で、「スイングバイ」という言葉があります。惑星探査機に関する、地球の重力を脱出した後の飛翔に関連してニュースなどで出てくる言葉で、概ね飛ばした飛翔体の速度を増す為に使われる技術を指している様です。しかし、ロケットを吹かす等の作用反作用の法則によらず飛翔体を加速させられるというのは、エネルギー保存則といった、よく参照される理屈に反してはいないのでしょうか。本稿は、そういった話題に関するものです。

スイングバイそのものの復習

 「スイングバイ」をインターネット等で調べると、多くの解説を見つけることができます。
 検索して見回してみたのですが、それほどおかしなことが言われているわけでもなく、どれも概ね参考になる情報である様です(すべてを確認したわけではありませんけれど)。
 代表例として、JAXAとスイングバイという2語の検索で出てきたスイングバイの解説のひとつを引用いたしますね。

(JAXA「よくあるご質問」https://humans-in-space.jaxa.jp/faq/detail/000751.html 2023.03.16確認)

この他にも、JAXA(または所属されている方)の文責による、参考となりそうな解説等はいくつか存在する様です。
 概ねのところ、スイングバイに関する優しい説明の総体は、次のようなものの様です。
 例えば、地球から発射された惑星探査機が、一旦地球から離れてもう一度地球に接近してスイングバイで加速して外惑星軌道まで飛んでゆく速度を得る様な場合、地球中心でこの探査機を見ていると、結果としては別に増速しておらず、地球重力に引っ張られて加速しならが地球へと接近し、最接近後には地球重力に後方へ引っ張られて減速しながら離れてゆく、そういうまったく通常の重力に束縛された運動をしているわけです。しかし、これを太陽系中心の視点で見た場合、動いている地球に接近する探査機が最接近後に地球の速度分だけ速度が増加する、地球に対しては何も変わっていないが太陽系中心の視点で見た場合に速度が増えている、そういう理屈なわけです。やや説明として足りておりませんけれども、詳細は、引用等をさらに御参照頂ければと存じます。

スイングバイを必要とする理由

 ちなみに、そもそも何故惑星探査機が加速する必要があるのかについて、当たり前すぎるという認識であるのか、詳細が語られない場合もある様です。
 直感的には「早く目標に到達する為」というのはよくわかる理由ですよね。その他にもう少し必然的な理由があるのですがそれは、探査機等が外惑星等に到達するということは、太陽から見て高い所に登るということだから加速が必須である、ということですかね。
 地球上で、山の上まで荷物を運びあげるのが一苦労であるのとまったく同様に、太陽中心の視点で地球公転軌道付近よりも高い場所に相当する外惑星まで探査機を「持ち上げる」のは、単純に力学的に大変なことであって、その為の加速が必須であるわけです。スイングバイという技術は、ロケットを吹かしたりせずに飛翔体の速度を増やして高い所に持って行く為のうまい方法、という言い方ができる様にも思えます。
 そこで改めて、「人生そんなに上手いことかあるのだろうか」という話題に持ってゆくことを考えたのが、本稿執筆のきっかけです。人生とは無関係かもしれませんが。
 宇宙開発に無くてはならない技術ですし嘘偽り無く存在する現象ですが、何も支払わずに高い場所まで荷物を持ち上げてくれる、本当にそうなのでしょうか。
 次の記事で少し考えてみたいと思います。


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